07.なぜレコードなのか
〜はじめに〜
1月29日に公開されましたMayprill Recordsによるクラウドファンディング企画についての僕の思いを書き綴っています。
企画始動前より書いていたものなので、やや頭でっかちな印象なのと、文章が少し尖っているかもしれません。もし気になる方は読んでみてください。
「なんでレコードなのか」を書いてみました。
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【なぜレコードなのか】
音楽の複製ビジネスが全盛を極め、音楽が拡散していく過程で僕達は、レコードからカセットテープ、CDからMD、ダウンロードからストリーミング。その全てを見てきました。しかし、disc union(レコードショップ)に行けば、壁一面にプリントされたレコードジャケットが並びます。
それは誰もが知っている名盤中の名盤です。それはその音楽の存在の証、活動の証、物としての強い価値として強烈に僕達の心を揺さぶります。その名盤の中には、世間には全く知られることのなかった名盤も存在し、レアグルーヴとして、ファンの間では未だに高額で取引される作品も存在します。
そうした嗜好品としての音楽は今も存在し、その時代そのアーティストを愛した記憶、記念が、レコードを手にした人の心に永遠に残ります。例えば日本に渡ってきた海外のサウンドの場合は、そのバンドを日本に紹介したレーベルのレビューやライナーノーツが記されます。時代性を大いに繁栄したその文体に、歌謡曲全盛の日本に海外のグルーヴを紹介し続けた熱い熱意を感じ取ることができます。アーティスト自身のライナーノーツが載っていたり、CDにはないギミックが施されているものもあります。
僕は自分たちの作ってきた楽曲は日本においても、世界においても、まだまだ知られる機会を待っている貴重なレアグルーヴだと思っています。世の中に伝えるべき大事なグルーヴを持つバンドだと心から思っています。そうしたものをガツっと残したい、もし思わぬ事故で明日死んでしまっても誰かがその音源を大事に保管してくれていたら、それで最高だと、心から思います。
それは「わかる人がわかってくれればいい」ではなくて、僕らがマスを味方につけたり、カルチャーの一端を担うための努力をできなかった代わりに(厳密にはやり方がわからなかった)、馬鹿みたいに純化した天然のこのグルーヴを、しっかり理解して、愛でてくれる人がいて欲しいという気持ちです。
レコードの価値を語る上で、僕が最も合点がいった話として、僕の幼馴染の話をあげます。
・レコードを売って会社を作った男
彼は1996年頃から、高円寺、西荻窪、下北沢のライブハウスに入り浸り、パンクミュージックを聴きあさり、レコードを買いまくっていました。彼はずっと音楽をしていました。若くて勢いのある仲間とバンドを組んで活動していました。ゴーイングステディの峯田くんなどと仲良しで、UKプロジェクトからのリリースが決まりかけてる時に、大げんかでバンドが解散します。その後HIPHOPに目覚め、HIPHOPのレコードも買いあさりました。ラップやラップトップDJにも挑戦し、結構カッコ良かったです。その過程で、日本のフォークミュージックを研究するようになり、URCレーベルのフォークレコードを買い集めます。
(wikipediaより引用)アングラ・レコード・クラブ (通称: URC) は、1969年2月に設立された会員制レコードクラブ。 現在は会員制クラブとしての活動は行っておらず、販売権を持つポニーキャニオンが過去のレコードをCDとして復刻、販売している。 「日本で最初のインディーズレーベル」と言われる事もある。
彼は愛する伴侶に「サザンオールスターズになれないなら、音楽で生きていくことはできないよ」と言われて、かつ自分自身の本質と向き合った結果、音楽を捨てました。そして、「建築家になる」という答えを導き出し、独立を目指してひたすら修行しました。
先日友人が言いました。独立して会社にする時、貯めに貯めたレコードを全て売ったと。
その総額は当初の金額の4倍を超え、会社の資本金にするには十分だったと。そして彼は今、たった一人の会社で立派に稼ぎ続け、年間2000万の売り上げを叩き出しています。
かたやCDは、、、大量のCDは全然値がつかず、彼は自身の禊のために全て捨てたといっていました(勿体無い、、)。
そのレコードの中にはカクバリズムの前身であるスティフィンレコーズの音源も大量にあったと思います。
僕は今だに「キウイロール」というバンドのレコードを探し求めています。最近でいうと、曽我部恵一さん主催のRose recordのランタンパレード「夏の一部始終」のレコードも、、、。
小ロットで生産されるそれらは、リリース時に手に取らなくては、もう手に入らないのです。
僕はそんな幼馴染の音楽のない彼の部屋に、大きくて邪魔になる、Emeraldのレコードを送りつけたいという夢があります笑
大量に流通し「いつでも買える」CDは、文化的な資産および社会的通貨としての価値をなくしてしまったように思います。「刷りすぎたお金」と同じです。完全にインフレを起こしています。僕たちはCDにもその思いをしっかり込めてきました。それが届いて欲しい人に本当に届いているのだろうかと、考えてしまうのです。
ストリーミングで音楽が聴ける今、「モノ」の価値はアーティストの思いやそれを取り巻く周りの人間の「編集」によって生み出された結晶である必要があり、かつそれをいち早く求める人の手に渡るべき嗜好品である必要があると感じたんです。小ロット初回盤のCDがそれに当たります。
- レコードからカセットテープ、CDからMD、ダウンロードからストリーミング、Youtube -
未だに部屋にあって、もう聞かない、聞けないにも関わらず、捨てられないもの、売りはらえないものナンバーワンは「レコード」ではないでしょうか?本でいうところの「単行本」や「美術書」のようなものです。僕の中で七尾旅人さんのCD(レコードではないんですが)は全てそれに当たります。装丁も中身も、他の商品との差別化があり、思い入れも相まって、ストリーミングがあっても、捨てることができないんです。
若い人たちの中にも、レコードブームは起こっていて、若いバンドもレコードを作ります。どれだけストリーミングが盛り上がり主流になっても、アーティストの生み出す希少価値の高いアイテムの価値は、永遠に手に取った人の心に残るものです。
Emeraldの音楽をレコードとして保存しようという思いが、僕のような非力なレーベルマンの熱意だけでどこまで問えるのかはわかりませんが、今それができるのは世界に僕一人だけです。
メンバーは、幸いにも心身ともに健康で、これからも音楽を作ることができます。バンドキャリア7年目にして今が一番の充実期でもあります。僕自身はレーベルマンとしても、アーティストとしても、これからもっと外に出て、同時にどんどん内にもこもって、最高の楽曲を作り続けたいと思っています。それを踏まえた上で、今一度、Emeraldのこれまでの音楽を、レコードに残し、大事に保管して欲しいという気持ちを持っています。
それを実現させるためのこのプロジェクトです。
「08.なぜ自費で行わないのか」へ(リンク)
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