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#オリジナル
【400字小説】性癖不足
足の甲を踏んでほしいという性癖。
行為の最中は、そういう気持ちにならないけれど、
終わった途端、無性に踏んでほしいと思っちゃうんだよね。
歴代の彼氏はベッドから出て、
立ったわたしの足の甲を裸足のそれで
踏んでくれる人たちばかりだった、やさしみ。
でも、オーノくんはしてくれない。
彼の性癖は終わった後、そのまま寝落ちすることで、
果てるとスイッチが入ったかのようにカチッと眠り出す。
寝顔を見て
【400字小説】ビリが一番bang
小学校の時にさ、リレーの選手に
なれなかったんだよね、6年生の時。
その上、運動会当日のかけっこでは
死のグループに入っちゃって、予定調和のようにビリ。
悔しくて泣いたのは、あれからないな。
高校野球部、最後の夏に負けた時も泣いたけれど、
あれは悔しかったのではなく、演出でした。
泣くのが美しかった。
あの時はね、そう思ってたんだよね。
ほかの野球部のメンバーは何で泣いたんだろうか。
めっちゃ
【400字小説】マッチョなムード
精神障がい者に理解があると思ってた。
でも、面接でのやわらかい態度から、
入社して一転、初日から手のひら返しで、厳しく。
わたしは笑うほど驚いちゃって、混乱。
「いいからやれ!」と怒鳴られて、
同僚たちも「ブラック企業だって、
黙っててごめんね」みたいな顔をしていて、
わたしは恨む寸前で、
なぜか同情してしまった、彼らを。
それで正気に戻って「大きな声、
出さないでください!」と強気になれた。
【400字小説】左右
横断禁止の四車線の車道を渡ろうとカズマは。
車が来ないから渡ろうとした、その時、
スマートフォンが鳴って確認するとナナからの着信だった。
出るなりナナは「今、大丈夫?」と訊いた。
その直後、中央分離帯の低い段差に
足を引っかけてしまい、見事に転倒。
そこへさっきいなかったはずの
白い軽トラックが向かってくる。
腕に鈍痛が走って、起き上がれない、
轢かれることを覚悟。
軽トラックも危険を察知、
【400字小説】水平
天秤座のタカヒロは青葉市子に夢中で
B’zが好きなマユを愛してはくれない。
マユはバカにされてるのも知ってる。
ただ、愛することだけに徹する。
昨夜、マユはバンドの練習中に豚汁を差し入れて、
からかわれていたタカヒロが、
とりあえず「ありがとう」と言ってくれたことに昇天。
「メンバーもおいしかったって言ってた」という
LINEが来ないか期待、
でもいつまで待っても来ない。
豚汁の入っていた鍋