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「地域×スポーツクラブ産業研究会の第1次提言について」経産省2021.9.17より

昨今、話題となっているスポーツの価値や意味、スポーツそのものを再定義していく(こちらもいかがですか?前編後編)流れと並行して教員の働き方改革の観点から文科省より部活の地域移行の話題が出ていました。下記のnoteを以前に上げましたし、前回の講演会・相談会でお話ししましたし、今回の講演会・相談会でも話題に扱う予定です。

他にもクラブチームなどのあり方、未来へのイメージとして経産省より情報があったのですが、新たに今回の提言が出ましたので見ていきたいと思います。

先ずは概要を見ても31ページと相当な量があるのでさらっと見てみましょう!

2つの問題意識

1.「サービス業としての地域スポーツクラブ」を
核とした産業クラスターの可能性
2.ジュニア世代のスポーツ基盤である「学校部
活動」の、持続可能性問題

4つの関連論点

1.資金循環ートップスポーツの成長産業化による、スポーツ
資金循環の創出
2.活動場所ー自治体とスポーツ産業それぞれの、施設運営・
改修負担の緩和
3.指導者ープロフェッショナルとしての(専業・兼業)スポー
ツ指導者の確保
4.派生需要ーリアルとデジタルが融合した「総合放課後サー
ビス業」への発展ー


提言1:「学校部活動の地域移行」についての大方針の明確化

文科省は昨年「休日部活動の段階的地域移行」「長期的には地域に移行すべき」との見通しを出したが、そもそも、①学校部活動は「社会教育」である旨を明確にし、②学習指導要領からは部活動の位置づけを外し(曖昧さを解消)、③平日も含めて地域移行する具体的方針も明確にすることが必要ではないだろうか

現在の報道等では教員の働き方改革が中心の話題、子供たちがどのように活動しているか、どう指導やサポートをしているかなど人にスポットが当たった話題が多いですが、最終的に大きくスポーツを取り巻く環境を変えていくなら大本の部分を明確にし、どんな環境を作り上げていくのか、目指すのかを考える必要がありますよね。

また、今の流れだと都市部はともかく、厳しい状況になっている地域においてはどうしていくかなど課題は山積みですね。他にも大会運営等にも関わってくる。一方でこの下にも出てくる施設利用を考えた時に込み合った地域の人が空いている施設を求めて移動することを前提に、活動領域を広域化していくことも考えられますね。


提言2:全ての競技で、「学校部活動単位」に限らない「世代別(U15/U18等)」の大会参加資格に転換を

学校部活動の地域移行に伴い、全ての中央競技団体(NF)や中体連・高体連の連携により、①既存の学校部活動単位縛りの大会の「世代別大会への変更」や、②「新しい世代別大会の設立」が進められるべ
きではないか。

ここも2つの道筋があって、たとえば現在の高校駅伝のような枠組みを完全に解体してクラブ対抗駅伝のような形を考えるか、私立等の「部活」は残しつつ、クラブとの混成にするかでも違ってきますよね。

もちろん、私立も一般社団法人などでクラブ化し、名前を売る方式を残すか、地域クラブなどへのスポンサーになって名を売るかなどを考えていく手が選択肢として有力になっていくと思いますが。その辺りも同ページに記載されています。

中体連、高体連と各競技団体は接続はしているけど、全くの別組織なのでこの辺の改革、変革はすごいパワーで一気に動かさないと想像できないレベルに近いですね・・・


提言3:「スポーツは、有資格者が有償で指導する」という常識の確立

既存の日本スポーツ協会(JSPO)の公認指導者資格の活用拡大は勿論、進化する民間のライセンス制度や育成メソッドとの連携や、EdTechツールとしての成長も

民間のライセンスもクラブ単位でのライセンスを認めていくのか、広域でやっていくのか、業界団体が複数立って進むのかいろんなイメージが湧きますね。有償指導が当たり前になる為にも稼ぎ、資金調達できる仕組みや環境づくりは急務だと思います。

そして教員の副業・兼業の話も出ていますが、現在の部活の時間は勤務時間に加わっているとして、部活が地域移行した場合、今までの部活時間は学校勤務して17時以降に指導にあたることになるのでしょうか?勤務時間がどうなるか、クラブチームの活動の開催時間によっては教員が参画するのも難しいスポーツが出てくるかもしれません。



提言4:学校の「複合施設」への転換と開放、「総合型放課後サービス」の提供

学校体育施設は、自治体毎の条例や規則等により『営利目的』の団体の使用を禁止している例も多く

公共施設も少しずつ変わってきていますが、それでも営利団体だと倍額など、いろんな制約や条件があったり、暗黙のルールがあったりしますよね。難しいと思うのは今までは学校内で行われている部活だから調整可能だった場所の使用も、主体が入り組むと調整が難しくなる可能性もありますよね。

同時に、利便性の高いオンライン化や、各クラブ間での交流、交渉がしやすい場づくり、システム作りも必要だと思います。


提言5:「スポーツ機会保障」を支える、資金循環の創出

スポーツ環境のクオリティが向上する場合、受益者負担の増加は不可避。これが「世帯収入格差による子どものスポーツ機会格差」につながらないようにすることが必要

ここをどうするか。今の多くのスポーツ団体の仕組み、スポーツ活動の仕組みは安価に設定されているので大幅に変えると負担感はとても大きいですよね。かといっていきなり事業として収益を大幅に上げ、受益者負担はそのままにするには原資や力がないと難しい。

公園や施設などの指定管理も同じで、力がなければチャンスも与えられないわけで、力を付けていく為にチャンスをもらえるようになれば可能性は高まるかもしれません。


ここからは本文(55ページ分)を見ていきます

第1次提言でお示ししたいのは、こうした「サービス業としての地域スポーツクラブ」が各地でいかに生まれ、成長しうるか、についてのラフなイメージづくり
この第1次提言での内容は、2020 年 10 月から 2021 年3月にかけて 10 回にわたって議論を重ねた内容をまとめた、中間的な論点整理です。今後進められる経済産業省「未来の教室」実証事業の新しいカテゴリーとしてフィージビリティ・スタディ(FS)の土台となる、またスポーツ庁のスポーツ審議会においても第3期スポーツ基本計画の策定論議に反映をいただきたい、「未来に向けたラフ・スケッチ」をお示しします。


指導者についてp11

スポーツ指導の基本をきちんと学んだ人が教えるのであれば、指導者に相応の自己投資を求めることになり、相応の対価が発生して当然である。しかし保護者の側に「スポーツで身に付くのは体力と根性くらい」といった誤解や偏見があり、質の高いスポーツ環境に相応の対価を払う価値を見いだせないのだとすると、その認識を転換させる必要もあろう
本来、人の健康・安全・成長機会を預かるスポーツ指導者には、プロフェッショナルとしてのスキルが求められる。たとえば人体の仕組み・動かし方・鍛え方の理解、心身のコンディションの整え方の理解、数学的な思考も伴う戦略の構築、チーム内での有効なコミュニケーションなど様々なスキルが必要だが、こうした常識が日本のスポーツ指導現場に定着するには課題が多い

p26

本来は「社会教育(学校教育課程外の教育活動)」であるはずの学校部活動が、同時に学校教育法に基づき教育課程の編成基準を告示する文書である学習指導要領に位置づけられ、その意義が特に強調され、教育課程との関連性を担保することまで要請されている。このことと、「学校部活動の地域移行」を進めようとするメッセージは、整合性がとれているだろうか。学校現場や、地域移行の受け皿をつくろうとするスポーツクラブ産業の双方にとって混乱を生じさせるものではないだろうか


部活動、クラブ、大会

p28

現在の学校部活動が学校の教育課程からは距離を置いた「社会教育」だとして、あらためて明確に整理がされるなら、上述の整理のように「一般法人クラブ」であろうが「学校関連法人クラブ」であろうが、「社会教育」を担う同列の主体として整理される。そうであれば、現行の中体連・高体連・NF 主催の大会のような、「運営主体の違い」に着目し、「参加は学校部活動チームに限る」と、様々な地域スポーツクラブの大会参加に制限をかけることの合理的理由はないのではないだろうか

p29

大会の見直しに当たっては、「控え選手は公式戦に出られない」といった競技環境についても、合わせて検討すると良いのではないだろうか。1つのクラブから A チームも B チームも C チームも、その競技レベルに応じて公式戦に出場し、同じクラブのチーム同士の対戦もありうる環境づくりも検討に値するだろう


教員

p37

地域スポーツクラブにおける指揮命令系統や実施場所、指導体制、活動形態、活動内容等が、「外形的にも」「実質的にも」学校業務と切り離されていなければ、兼職・兼業を認めることは難しいということである
学校部活動は社会教育か学校教育か、学習指導要領上の位置づけは外すべきではないかという点の整理とも合わせ、実効性のある兼職・兼業体制の構築が必要ではないだろうか


p42

生徒のセキュリティ確保の観点からの動線・設計を工夫すれば、学校体育施設はフィットネス産業の施設と融合する形で建設・運営されるほか、学校施設は保育所や老人福祉施設、近隣の人が集うカフェ・レストランや日常の買い物をする小売店等も入る地域の複合施設として生まれ変わる可能性も追求できよう

こういった言及を考えるにあたり、部活→地域クラブの論点よりもっと大きくというか視座を高く、社会の在り方、地域や学校などのあり方にも波及してくる話題だというのが見えますよね。

最後に「本文」からこちらを抜粋します。

p55

地域や事業者の側も「ニワトリ(政策)が先か、タマゴ(事業)が先か」と立ち止まるのではなく、各地域において(経済産業省の「未来の教室」実証事業等の機会を活用し)「部活の地域移行のカタチ」についてフィージビリティ・スタディを始めるべきではないでしょうか
この「地域スポーツ」の成長というテーマは、「トップスポーツの成長」という話題と「車の両輪」のように、資金循環・人材循環を伴いながら進むことを構想する必要があります。トップスポーツが DX によって大きく変化するグローバルなスポーツ消費市場の中での稼ぎをあげるためのビジネス基盤整備など、一見「遠い」話題について、同時に詰めていく必要があります


ここからは参考資料(44ページ分)を見ていきます

現行の大会制度が部活動地域移行を妨げると指摘する声
も、、、
”部活動を地域移行した場合に、学校単位でしか
出場できない大会をどうするかの解が無いことが足踏みする要
因になる”
”子どもたちが目標とする大会の未来像が見えない”

p9に上記で書いた大会に関する部分、目標や進み方がイメージしにくいことも記載されています。

p10では保険について、p11-14ではライセンス等に触れています。公的なものと民間資格の位置づけや、専門的なものと広範なものの位置づけ、カテゴリー別など課題は大きいと思います。

p17ではマネジメントのことが書いてありますが、現場ではむしろ実際に稼ぐ力、売り上げていく力の方が必要な気がします。大枠のマネジメントをイメージできても、泥臭い部分が動いていかないと成立しないかなと感じています。

p18では上記で指摘したような施設面での課題も記されていますね。

既存の学校体育施設の開放は進んでいるとされているが、その利用枠は固定されているとの指摘や、開放の手法がアナログで効率的では内などの指摘も

p31ではアリーナなどの施設の話がでていますが、たとえば陸上競技場を中心に昔のような市場やフリマのような、日常にフェスティバルが常時開催されているような状態を創っていけるようになると面白いかなと思います。もちろん、それは河川敷や公園でも良いのですが、利活用のアイディアは幾らでもあるとして、それを実現できる許認可や活用への柔軟性と実行できる組織力のようなものが必要になりますよね。

p33の廃校施設の有効活用もそうですよね。どんどん気軽に借りられる状態になれば可能性は広がっていくと思うのですが、管理責任などの所在などを巡って簡単にはいかないのが現状ですよね。それらを乗り越えて簡単に利活用できれば・・・

p34では具体的な金銭の数字が出てきました。

部活動地域移行後の月謝を7,000円1)とした場合、1校あたり約364,000円/月の支援が必要になる見込み

1生徒につき1)の補助などが出るならそれなりに運営できるクラブも出てきそうですが、施設や設備、道具にコストが大きくかかるスポーツや文化活動はどうでしょうか?


まとめ

最終的にはこの国のあり方、文化や意識に大きく関わっていくことだと思います。ときおり、ベーシックインカムや全体的な働き方改革(たとえば週3休など)が議論されたりしますが、スポーツや文化を社会の中心に据える、とまでは行かなくても、今まであったPTAや町内会、少年団なども今の時代にはいろいろと齟齬が出てきているような感じがします。

だからといって解体するか、不要か必要かを論じる前に、今回のスポーツや教員の働き方改革と同じようにどうすれば活動しやすいか、持続していけるか、発展できるかを考えると、そもそも余裕がないからこそ持続していくのも難しくなっているような感じがします。

スポーツに関する話題もNPOや一般社団法人を含めた法人化の話題は出ていますが、社会のあらゆるコミュニティも同じような議論、考え方も検討するのも良いかもしれません。

スポーツは社会の一部であり、人生や生活の一部です。だからこそ端的に、割と目立ちやすいものである特性を活かしてあらゆる課題の中核に、ハブにしていくのも手だと思います。


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