![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58068052/rectangle_large_type_2_81bbd629b9d2f305ec6a92104b02b5bf.png?width=1200)
業務の切り出しができないって?
障害者雇用・ダイバーシティ、在宅勤務のコンサルティングや人材紹介をしております、にわと申します。
今回は、人材採用、特に障害者雇用の領域で言われる「業務の切り出し」についてお話ししたいと思います。どちらかといえば、お仕事探し中の方というよりも人事・採用ご担当者様向けの話になります。
業務の切り出しとは
業務の切り出しとは、新たに雇い入れる人、ポジションを変更する人などにアサイン(割り当てる)する業務を取り出す、というようなニュアンスの言葉です。
そもそも、私は業務の切り出しという言葉が好きではないので、本稿では以後「業務の組み立て」と表現します。
社内の既存業務を分担して、「あなたは〇〇担当ね」と割り当てて業務を回している組織は非常に多いのですが、まさにそのイメージで、担当を決めることを言います。
既にある業務をさらに細かく切り刻み、任せられるものを渡すという場合が多い(気がする)ことから、「切り出し」という表現を用いられてきたのかもしれません。
アサインする業務は明確であるべきか
「アサインする業務が何か」なんて、決めてから採用するものなのではないのか―
そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。はい、それ、もちろん正解です。
たとえば、こんな場合があるでしょう。話を進めやすくするために、カテゴリーに任意の名称を付します。
「経理を担当する人が定年退職するから、代わりに経理を担う人が必要だ」
・・・欠員補充型
「新しい店舗をつくるから、オープニングスタッフが必要だ」
・・・事業拡大型
どちらとも、「明らかな仕事・担当」が存在し、それにマッチする人を呼んで来ようという発想です。
なすべき仕事があり、それに足りる人材・マンパワーを確保しようとするのは、企業であれば当然の考えです。
業務を決めずにする採用
しかし、アサインする業務が明確でない採用も世の中には存在します。
「業務はその人にあわせてつくればいい。同志を見つけるんだ」
・・・ネットワーキング型
「とにかく、雇わなくちゃ、法律を守れないんだ」
・・・コンプライアンス型
なんだか、ネットワーキング型と聞くと、志高く、「意識高い系の企業なんだな」と思われるかもしれません。あるいは、コンプライアンス型の企業は、「障害者雇用率を達成できないのかな」とお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。
半分正解で、半分不正解です。
ネットワーキング型の企業に意気揚々と入社しても、することやヴィジョンが不明確で、雇われた後苦労するかもしれません。コンプライアンス型の企業に御縁があって、なんだか不安で入社してみると、実は従業員満足度の向上に積極的で、障害者雇用だけでなくあらゆる法令遵守を徹底し、お互いに配慮しあいながらお仕事できるのかもしれません。
余談ですが、私はネットワーキング型の企業も、コンプライアンス型の企業も、どちらにも長所短所があると思っています。どのような採用スタイルをとっても最終的には相性・マッチの問題だと感じていますが、その話題は別の機会に。
いずれにしても、これらの企業の場合、アサインする業務が明確ではないので、雇ってくる人にあわせて業務を組み立てる必要が出てきます。
業務組み立てのメリット/デメリット
それでは、欠員補充型や事業拡大型など、明確な業務にアサインすることと、ネットワーキング型やコンプライアンス型のように、業務を組み立てて求める人材の採用を行うこと、双方のメリットとデメリットを考えてみましょう。
<明確な業務にアサインする場合のメリット>
・業務の内容や手順が決まっているので、新たに設計する手間がない
・採用する人材像(スキル、キャラクター)が明確になりやすい
・採用する人材のキャリアパスを描きやすい
<明確な業務にアサインする場合のデメリット>
・キャリア採用に傾きがちになる
・スキル次第では人件費が膨らみやすい
・既存の人員との相性は二の次になりやすい
一言でまとめると「何をすればよいか双方にわかりやすい採用形態」というところでしょうか。
一方、ネットワーキング型やコンプライアンス型のように新たに業務を組み立てる採用ではどうでしょう。さきほどの逆ともいえますね。
<業務を組み立てる場合のメリット>
・新卒・未経験者でも採用できる(その場合人件費も下がる可能性あり)
・既存従業員との相性を十分に見極めることができる
・既存業務や就労形態に縛られないため、社内のダイバーシティが加速する
<業務を組み立てる場合のデメリット>
・業務を組み立て、マニュアルを作り、教育する手間がある
・採用する人材像、キャリアパス、求人内容を考えなければならない
・既存の人材・環境との調整が必要である
人材像に幅がある分、会社の求めるもの、理念、アイデンティティとのマッチなど、根本的な部分を見直すことになるので、ガシッとはまれば最高の仲間を得ることができる採用パターンともいえます。
大きな落とし穴!「急ぐときは?」
ここで、採用実務にありがちな「急ぐ場合」はどちらが有利なのかという疑問が聞こえてきそうなので、簡単に言及しましょう。
結論からいえば、急ぐ場合は「どちらも考えてください」。
業務ありきで進めてしまうと、必要な人員がいつまでたってもでてこないということもありますし、逆に、業務の組み立てで躍起になって疲弊することもあり得ます。
ただし、これからお伝えするように「一部組み立てる覚悟」はあったほうが、これからの時代、どのような採用パターンであってもスムーズに進むことは間違いないのではないかと考えています。
「いい人が出てきたら、考えるわ」というのも、個人的には夢追いかもと思います。貴社にとって「いい人」をあちこちに発信しないと、いい人、逃げちゃいますよ
業務の組み立てを行うかどうか
ここまでの話でご想像がついていらっしゃるかもしれませんが、障害者雇用や人事異動、産休育休、介護休暇、病気からの復職などの場合に、業務の組み立てをどうするのか、というよりも、
どのくらい組み立てられる幅があり(会社の譲歩)
どのくらい既存の業務のフォーマットが崩せず(法令や社会の要請)
どのくらい労働者が譲歩できるのか(労働者の譲歩)
これに尽きるのではないでしょうか。
たとえば、どうしても高いところにのぼらなければできない電気工事のお仕事がメインの会社だとしたら、障害の特性や家庭の事情、医師の指示次第では、工事のお仕事には入れないかもしれません。法律の定めもあり、どうしても工事業務に就けない方もいらっしゃいます。
会社には、オフィスワークの部門もあるので、もしも障害者雇用をしたいとか、療養後の方を復帰させたいということになれば、工事以外ので業務を組み立てられないか考えていきます。もちろんここで、会社が多大な損失を出してまで雇うということは必要ありませんが、現実には様々な理由でダイバーシティ雇用を進めていくニーズが存在します。ですから、法令に触れない範囲で、会社もある程度歩み寄っていくことになります。
一方、どうしても法律や体調のために困難である業務をしたいとか、会社の中に存在しない業務を誂えてくれというのは難しいかもしれません。ダイバーシティを推進していくうえでは、労働者側の譲歩も不可欠です。
ここで、業務の組み立てを行うのか、それとも既存の業務にアサインしていくのか、人事採用計画を立てるにおいては、戦略的に選択していくことになります。
ここでお伝えした「譲歩」というのが、「業務を一部組み立てる」という発想にほかなりません。
たとえば、これまで在宅勤務は感染対策以外の理由で認めてこなかったし、顔を突き合わせて働くものだとお考えの場合、在宅勤務OKという方針に切り替えるだけで、「通勤可能範囲」という枠から外れることになり、地方在住者、さらに言えば海外在住者も採用できるチャンスが手に入ります。
あるいは、「笑顔で、いつでも電話を取れる人」を採用条件にしている場合、電話対応が苦手でも非常に優秀で、他従業員平均の3倍速く作業をこなすマーケターがいたら、電話対応を免除してその人を採用するメリットもあるかもしれません。
業務を組み立てるのは、特別なことではありません。どうしても欲しい人、どうしても欲しいとき、どうしても来てほしい場所があったら、そのために調整をして器を整えていく。入ってくる側もどこを求め、条件をのむのか、手持ちのカードや思いを極力出し合って調整すること。それが業務の組み立てです。
組み立ても、採用も、歩み寄り
精神論で終わるつもりはないのですが、背に腹は代えられない事情が企業と労働者お互いにあるとしたら、そこはやはりマッチングの言葉どおり、お互い納得して結ばれる過程をたどることになります。
障害者雇用だけでなく、産休育休明けの方がポジション変更で苦しんでいるというお話もよく耳にしますし、逆に会社側が配慮しようとしすぎて、人事の方が押しつぶされそうになっているというのも目にします。
誰かが一方的に損得をする採用は、長続きしません。
一部であっても業務の組み立てを行う場合、業務やスキル以外で会社が譲れないこと、大事にしていることを掴んで伝えることができることが重要です。価値観、ヴィジョンなどを共有でき、「あなたの〇〇というところが好きだ」と伝えるのは、まさしく口説き文句ですが、アサイン業務というある意味ビジネスライクな利益のやりとりだけでなく、内面的な部分の相互理解・マッチをしたいというのも、企業の本質的な欲求ではないでしょうか。
誰でもいいけれど、なんかいい人いたら来てねというのでは、その「いい人」は逃げてしまうでしょう。あなたの、貴社のいい人ってなによ、と、そこを伝えなければマッチングは難しいのです。譲れるところと譲れないところを明確にする作業は、ぜひしていただきたいものです。
そこで折れると、双方ともに苦しみます。
私が採用したから責任をもたなければ・・・
私がきめて入った会社だから我慢しなくては・・・
どこまで折れて、どこを譲らないのかきめておけば、無尽蔵に耐え忍ぶこともありませんよね。
企業も、働く側も、それぞれに事情があり、安易にレベルが低いとか、ブラックだとか、断じるのをちょっと置いてみて、まずは話をしてみませんか。
レジュメや会社HP、求人票に載りきらないところの対話を、エージェントをうまく利用して行ってくださいね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?