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服を捨てられないわたしと、過去とのお別れ

寮を出る1日前。

わたしは、悩んでいた。

◇◇◇

悩みの種は、服。

来る前は、気候がどんな感じなのかわからないのもあって、温かい服から春っぽい服まで、あれもこれも、一応持っていこうと詰め込んだ。

どれも何年も着ているからくたびれているし、いらなかったら捨ててこよう、荷物も減ってお土産用のスペースも空くし、いいことずくめだね!と思っていた。

いざ来てみると、そんなにたくさんの服は必要なかった。
街中にもH&MやZARAなんかの安いブランドがいっぱいあって、こちらで買うつもりで来ればよかったと思ったくらいだ。

予定通りいけば、いらなくなった服は捨てればいいはずだった。

◇◇◇

いざパッキングをしていると、「捨てたくないなぁ…」と思ってしまった。

ここ数年の濃密な日々を一緒に過ごした服には、思い出が詰まりすぎている。
これ、修論書いてた時期にずっと着てたんだよなーと思ったら、どうしても連れていきたくなる。

どの服も、まる1日大学にこもっていても平気なようにと着心地を重視して選んだだけあって、くたびれていても使いやすいものばかりだ。

なんとか捨てずに済ませられないかと、服以外の荷物を限界まで整理したけれど、やっぱり少しかさばる。
捨てた方がいいのは明らかだった。

◇◇◇

そんな話を友人にしていたら、「その服ってこれからも着るの?」と聞かれた。

そう聞かれると困ってしまう。
4月からはスーツを着て出勤するし、土日くらいしか私服を着る機会がない。
そんな生活の中でちゃんと着るのかというと、多分着ないだろう。

そして更に、ちょっとした事情から、日本に帰ったあと、春までの引っ越しのために整理した荷物をもっと減らさないといけなくなった。

ますます、連れていったところできちんと着る自信がない。

◇◇◇

悩みに悩んだ末、必要最低限の着替えだけ残して、あとは捨てることにした。

寮の小さなベッドに服を並べて写真を撮り、いきおいそのままゴミ袋につっこみ、ゴミ捨て場に置いてきた。

◇◇◇

たかが服、されど服、まだちょっと胸がひりひりする。

捨てなきゃよかったとは思わないけど、捨ててすっきりともしていない。

でも、捨てたことで、自分を縛るものというか、過去にしがみつくような気持ちが減った感じがする。

たかが服、されど服、あのなつかしい服たちを捨てたことは、新しい自分になるための一歩だったのかもしれない。

最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。