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時空を超える「カボチャ?ズッキーニ?」問題。

以前、ズッキーニが好きだというお話をさせていただきました。

見た目はどこかきゅうりに似ているけれど、いろいろな使い方ができるべんりな野菜、ズッキーニ。

そんなズッキーニは、じつはカボチャの仲間です。言われてみれば、黄色い花はもちろん、ヘタやおしりのあたりの感じ、そしてなにより切ったときの断面や質感は、どこかカボチャを思わせますね。

以前、『おいしく世界史』という本を書いていて、ハロウィーンのカボチャについて調べていた時に、どうにも気になって仕方がなかったのがこのズッキーニという野菜の位置付けでした。

なぜって、いわゆる「Curcurbita(カボチャ属)」って、とにかくいろいろな種類があるのですよ。ズッキーニもそのお仲間なのです。

■ 山ほど種類がある「カボチャ」属

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こういう、ハロウィーンでよく見かけるようなオレンジ色のカボチャはパンプキン(pumpkin)。

そしてズッキーニも、やはり同じカボチャ一族の仲間です。でも考えてみると、ひと口に「カボチャ」といっても、日本の(深緑色をした)カボチャなどもあります。また、近頃はもっと薄い皮の色をした、外側だけ見ればまるでメロンみたいな雪化粧カボチャのようなものまで店頭で見かけるではないですか。

しかもヨーロッパに住んでいると、「これは、なに…?ズッキーニ?カボチャ?どちらですか??」と思うような野菜の多いこと多いこと。

(これはたとえるならば、ハロウィーンの時期になると近ごろ花屋さんの片隅などで見かけるようになった、色とりどり、形さまざまのミニカボチャを思い出していただければいいかと思います。)

たとえばこれが近頃人気のバターナッツカボチャなどですと、見た目や味、使われ方からして「ああ、これはカボチャね」とわかるわけなのですが、これが次のような見た目でしたら、どうでしょうか?

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まんまる。まるでカボチャのような形状。でも質感はズッキーニ。

たぶんカボチャやズッキーニの仲間のどれかではあるんだろうな、とは思いつつも、「味はどうだろう?本当にズッキーニ的…?」と思わず迷ってしまいそうです。


■ あなたも私もみんな「ウリ(瓜)」

というか、そもそもこの「カボチャなのか?ズッキーニなのか?」問題以前に、ヨーロッパの昔の文書などを見ると、「ウリ(瓜)」などの表記が多すぎるのです。

「ウリ」。あまりにも漠然としすぎています。

この「ウリ」にあたることばというのが、たとえばラテン語の「Curcurbita」。

じつはカボチャ属って、「ウリ科」なのです。ですから昔のヨーロッパの人たちは、こういう野菜や果物の仲間はみんなとりあえず「ウリ」と呼んでいたらしい。

「ウリ」というと、なんだか私たち日本人は、浅漬けなどにする白ウリくらいしかパッと思いつかないんですけれど、じつは以外と顔ぶれが豊か。

おそらくは、私たちがいま見たときに「カボチャっぽい」と感じるもの、「ズッキーニっぽい」と感じるもの。そしてなんなら「きゅうりっぽい」と感じるもの、「メロンっぽい」と感じるものさえ、とりあえずみんな「ウリ」。

そう、ズッキーニがきゅうりに似ているというのは、あながち気のせいではなかったのです。

しかしそうなってくると、悩ましいのが、やはり先の「カボチャ?ズッキーニ?」問題。

たとえば昔の人の文章に「ウリ」と出てきた時に、それがいまで言うところの「カボチャ」っぽい野菜なのか、「ズッキーニ」っぽい野菜なのかって、よくわからないではないですか。

それどころか、もしかしたらそれは、「きゅうり」っぽいものなのかも、「メロン」ぽいものなのかもしれないのです。

当時の人たちは、いったいどんな風に思っていたのだろう・・・?
そこで毎回、なんとなく悩んでしまうわけ。


■「小さいカボチャ」と呼ばれた新顔野菜

そもそも「ズッキーニ(zucchini)」という名前自体、語源は「小さいカボチャ」という意味からきています。イタリア語で、カボチャは「zucca」と言いますから。

これまた、漠然としたネーミングです。

とはいえ一般には、ズッキーニのような植物がヨーロッパに入ってきたのは、いわゆるかのクリストファー・コロンブスによる「新大陸の発見」以降のことと言われています。

そう、意外にも、ズッキーニ自体はアメリカ大陸のご出身なのですよね。

でもたぶん、それ以前のヨーロッパにも似たような(ウリだか、カボチャだか、きゅうりだか、ズッキーニだか、はたまたヒョウタンとかユウガオの実とかに似ている)野菜というのはあって、栽培されたり、食べられたりはしていたのだと思います。

ただ、カボチャもそうですが、それまでヨーロッパにあったものとは、微妙に色や模様、形、そしてなにより味わいが少しずつ違っていたのかと。

そして、たとえばトマトなどがそうなのですが、ヨーロッパの人たちは往々にして、こうした見慣れない新しい植物が入ってくると、それをすでに知っている野菜なり、果物なりになぞらえて呼び始めることが多いのです。

イタリアでは、今でもトマトがそのままの名前で呼ばれていますね。そう、トマトやナスは、昔は「ポモドーロ(黄金のりんご)」と呼ばれていました。

ですからズッキーニの場合もきっと、いちばん似ていそうな身近な野菜・カボチャを引き合いに出して名前をつけたのでしょう。


最後に、畑でいまちょうど花盛り、ズッキーニ、カボチャ、きゅうりの写真を。

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ズッキーニ

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カボチャ

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きゅうり

こうして並べて見ると、やはり雰囲気がよく似ています・・・!


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