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ヲススメラヂオの小説 part8 『空色勾玉』

 どうも、こぞるです。ヲススメラヂオ第8冊目で白鳥みちるさんに紹介していただいた、荻原規子先生の「空色勾玉」シリーズ第1冊目にあたる『空色勾玉』について書いていきたいなと思います。
 ラジオは以下のリンクから別ページに行くとありますので、先に聞くと、よりこれを書いている奴が何を言いたいのかがわかりやすくなるかと思います。30分ほどですので、家事や課題、作業のおともにいかがでしょうか。

ー作品内容ー
 輝の大御神の双子の御子と闇の氏族とが烈しく争う戦乱の世に、闇の巫女姫と生まれながら、光を愛する少女狭也。輝の宮の神殿に縛められ、地底の女神の夢を見ていた、“大蛇の剣”の主、稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導く…

 何度読んで、頭で理解していても、狭也をパッと見「きょうや」と読んでしまう・・・。小学生の時にフラれた初恋相手がサヤちゃんだから、無意識のトラウマだろうか・・・。

日本生まれ日本育ち

 今作はそのモチーフを日本神話に由来しています。名前をそのまま使われているわけではない・・・はず(神話は別名が多すぎる!)ですが、ほぼイザナギとイザナミっぽい神と、またその子供である天照大神(アマテラス)と月読命(月詠)っぽい神が出ています。有名な黄泉の国にイザナミを迎えに行くイザナギのストーリーなんかもモチーフに使われています。
 ただ、イザナギとイザナミによる日本神話は日本書紀と古事記のそれぞれに登場するも、それぞれに違いが多くあるため、あくまでモチーフであって、全てを取り込んではいません。
 何かをもとに作る際に、それをどこまで取捨選択するかというのは、非常に難しく、下手をすると、事前知識が必要になってしまったり、その情報だけで内容がいっぱいになって、ストーリーがおざなりになってしまいそうですが、本作は多くの日本人が何となく持っている知識や神話の体系をうまく流用し、あくまでの物語の主軸は別のところ、愛と死において描かれています。

神仏習合

 今作ではどうしても切り離せないものですので、もう少し、このテーマである神話で続けていきますが、作品内容にあるとおり、この作品世界には大御神の双子の御子(アマテラスとツクヨミっぽいやつ)がいる輝という氏族と主人公の生まれである闇の氏族があります。彼らの大きな違いとしてはその死生感が挙げられます。輝の人々は、不死であり汚れなき美しさを持つ神の子供たちを崇め奉り、不老不死への憧れをもちます。
 一方、闇の人々は、生まれたものは死に、また生まれ変わりつながっていくという考えを根底に持つのですが、これっていわゆる輪廻や転生にあたるものでしょうかね。ということは、日本神話というよりかは、仏教などのインド系の宗教思想に近いのかなと思います。
 調べたところ、日本への仏教伝来が6世紀半ばで、日本書紀や古事記の編纂が8世紀前半、神仏習合が8世紀に起こり10世紀に完成ということなので、この物語の時代背景も、奈良時代辺りを想像すると、近いのかもしれない。
 

世界一迷惑な夫婦喧嘩

 輝のトップにいるのがイザナギっぽい神様、闇のトップにいるのがイザナミっぽい神様。その二つの争いなのですから、もはや夫婦喧嘩に巻き込まれたと言っても過言ではないでしょう。なんて迷惑な。
 紀要論文ではあるが、川島亜紀子(2013)「『Yahoo!知恵袋』に見る夫婦間葛藤解決方略」によると、集めたデータの中で夫婦間葛藤が、「子どもに影響を及ぼすので はないかと心配する記載」は1%にも満たなかったそうである。
 この神様たちにこの論文をみせてあげれば、少しは悲劇が抑えられたのではないだろうか・・・。

信じるということ

個人的には信じるということは悪いことではないと思っています。星の数ほどある怪しい新興宗教もありますが、その中にもまともな教えってのはやっぱりあったり、あとは日本人は無宗教とよく言われますが、各々に信じている「信念」のようなものはしっかりとあります。ただ、問題なのは、それで目を閉じてしまうことです。
 盲信という言葉があります。盲というのは、ようは何も見えていない状態な訳で、辞書などには「わけもわからず、ただひたすらに信じること。」とあります。何も見ずに信じているのです。個人的にはそれに加えて、「信じ過ぎて他のものが見えていない」といった状態も含まれるのではないかなと思います。恋は盲目ならぬ、神は盲目?
 この物語でも争いの発端は、いろいろな人や神が目を閉じていたり、一点しか見えなくなっていることにあると考えます。なので、この乱世を治められる人というのは、最初に目が覚めた人になるのではないかと思ったりしました。そして、目が覚めるためには闇を認識しなければならないんだろうなあとも。

 っていうと、まるで、仏教ですね。ブッダは目覚めた者ですから笑。
 輪廻転生思想もあるし、やっぱり闇の氏族って・・・!なんて、あくまで物語なので、そんな何でもかんでもこじつけるのはよくないですね。
 でも、これだけ考察したり考えて楽しめるっていうのは、やはりこのお話がそれだけの広い懐を持ち合わせているということでしょう。

さいごに

 もともと読みたいリストにありつつ、ハマったら離れられなくなるのが怖くて、手を出していなかった本作。これだけ考察書いている時点でわかるでしょうが、好きです。
 物語にあまり触れないように書いているため、神話の話に偏ってしまいましたが、それぞれの氏族にいる魅力的なキャラクターたちの存在や、怒涛の展開は1つの物語としても非常に高いクオリティを持ち合わせています。

 以前から気になっていた方や、ファンタジーは英米文学でしか触れてこなかったなんて方も、ぜひ手にとって読んでみてください。そして、一緒にハマりましょう。

 それから、この作品をご紹介してくださった白鳥みちる様、あらためてありがとうございます。



それでは


偶然kindleセール中で、355円で買えました。(2020年8月時点)




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