見出し画像

【表現評論】メモリーズオフ6 T-wave  コアレビューその31 まとめ(完結)【全作再プレイシリーズ】

●メモオフシリーズ、その他作品、様々なネタバレが含まれます。

⚫︎前回の記事

⚫︎タイトル画面が変化

恒例のやつ。全員クリアで画面がサムネの画像に変化。伝統芸能です。今回はりりすをクリアした時点でも画面が変化したので、もしかすると智紗を先にクリアすると別の画面になったのかもしれない。

一番最初の真っ白画面
りりすルートクリア後
全員クリア後

⚫︎その31で完結

こんなに長くなるとは思いませんでした。文字数を結構短く刻んだのはありますが、それにしても長かった。文字数はここまで62000文字程度、この記事含めて82000字程度なので、それからよりは短いですが、プレイ時間はこれまでの作品の中で最長です。智紗ルートはもっと書けそうな気はした。というか書き直したい。長すぎてちょっと息切れしてしまった。智紗ルートだけ再コアレビューがあるかもしれない。

⚫︎2024年から見たT-waveの感想

やっぱりガジェットが出てくると古く感じますね。HPで募金を募るとか、やたらとでかいノートパソコンとか、CDプレイヤーとか、この手のものが出てくると、古さは否めません。別に未来のことを考えているわけではないので、これでいいんですけども。

肝心の内容ですが、これが2024年に発売されていたとすれば、どうでしょうね。かなり微妙な評価になりそう。シナリオのボリュームは十分だし、音楽はシリーズでも上位のクオリティでしたが、パッケージ上の看板ヒロインである暴力系ヒロインのりりすさんが現代感覚で見ると変だし、何気にCGの質もバラバラでした。特に複数人登場するCGはかなーり怪しい。ただ色使いが鮮やかになってるので、見栄えが非常に良くなっていますね。それから→#5→T-waveと、どんどん鮮やかになっていく。色使いのおかげでライトな雰囲気が出ているので、とっつきやすくなっている感じはあります。ただ感じが出てるだけで、物語はまあまあいつも通りにヘビーです。

ということで欠点も少なからず見えてくるので、それからのように掛け値なしに褒められるような作品ではないです。ダメなところは多いよ。正直。ただ、個人的にはメモリーズオフの歴史に乗っかってきた人にとっては評価が高くなる(高くなり得る)作品じゃないかなとは思います。

攻略キャラはいつも通り5キャラです。今回は鈴以外は全員ボリュームがすごかったですね。特にりりす。ただりりすに関しては、ボリュームはすごいんだけど、必要な長さだとは思われませんでした。同じこと繰り返してない? これいるぅ? と感じるシーンも多かった。電波会話がないだけマシなのか。T-waveにもリバースカットはあったんですが、これも単に視点の変えただけで、#5のような新事実の開示や内面のギャップが浅かったので、あまり意味をなさないものになっています。でもとにかくボリュームは満点。薄めたカルピスだとしても。

シナリオの評価をルート別に見ていくと、下記の通りです。

A+ 智紗
A   クロエ
B   結乃
D   鈴
E   りりす

評価基準
S メモリーズオフの魂
A 全体的に素晴らしい&特別に光る部分がある
B 全体的に素晴らしいor特別に光る部分がある
C よくまとまっているor光る部分がある
D C評価と比べると見逃せない欠点がある
E 見どころが少ない&見逃せない欠点が多い

今までのルート別評価は次の記事に載せてます。

T-waveは最高のシナリオが智紗、素晴らしいシナリオがクロエ結乃、普通なのが鈴、全然あかんのがりりすでした。特に智紗はきちんと読むと1stの構造を踏襲している物語で、非常に評価が高くなったルートです。昔はりりすよりはマシかぁ? くらいでしたけどね。やっぱり再プレイすると評価は変わるよ。変わる。でもこう見るとな、りりすルートの出来が良かったら、シリーズでもトップレベルに入る作品だったかもしれないです。それはないか。いやあるか。クロエ、結乃というサブヒロインの出来はシリーズでも上位ですからね。でもないな。鈴がちょっと微妙というか、パワー不足だったし。それからが凄いのは例外なく全員4番バッターであることなので。智紗ルートもツッコミどころはあったし。

BGMは本当に良かったです。1stの曲もあったし、タイトルBGM、智紗のテーマ、志雄のテーマ、結乃のテーマ、Trembleなど名曲揃いでした。#5と違って従来の曲調に戻っていましたね。秋の雰囲気を感じさせる原点回帰のBGMが多くて満足でした。

主人公は珍しく毒にも薬にもならないタイプの人です。志雄君は特徴がないのが特徴。すぐに切れたりもしないし。謎の行動も少ないし。面白要素はない。マンション持ちの上級国民ということだけがオンリーワン要素か。ただメモリーズオフらしく、母親の死と父親の行動に対してトラウマを抱えた主人公です。父親との関係を描いた作品はこれだけじゃないかな。そこまで深く描いているわけじゃないですが、父親が出てくるってだけで珍しいからね。他に出てくるの星天くらいじゃないの。智紗がほとんど一目惚れで告白するくらいなので(厳密に考えるとそうも言えなさそうだけど)、顔がいい主人公だと思います。比較的真人間になったショーゴ君と思っておけばいいのではないか。そもそも顔が良くない主人公いるんですかね。相手が顔で惚れたケースがなさそうなのは一蹴君だけじゃないの。智也はどうだろう。ちょっと怪しい。ショーゴ君は全員顔で落としているとして、伊波師匠は3回会っただけで相手が惚れる男だし。春人も美海ルートで一目惚れみたいな感じだったし。

あと今回はシステムとしてメモリーズオフの用語集が導入されていました。これは評価点ですね。全てのノベルゲーに導入してもらいたい。

そしてメモオフのコアレビューの肝心な点は、昔と比べて作品の評価がどう変わったのか、ということです。再プレイシリーズですからね。で、T-waveの評価は評価不能からBまで上がりました。めっちゃ変わったよ。これだけ上がったのは2ndとT-waveだけ。昔はほんまこの作品、と思ってたけど、それはりりすルートに引っ張られすぎているだけだった。2ndでほたるルートしか見ていなかったのと全く同じ構図。2ndの真ヒロインはつばめだし、T-waveの真ヒロイン(というか主人公)は智紗だと考えると、評価は全く変わる。

#5終了時点での番付がこちら。

殿堂入り 1st
S それから
A ゆびきり 星天
B 2nd
C #5
D 想君
理解不能 T-wave 
メモオフではない傑作 IF

T-wave終了時点での番付がこちら。

殿堂入り 1st
S それから
A ゆびきり 
B 2nd T-wave 星天
C #5
D 想君
メモオフではない傑作 IF

イノサンフィーユの評価は自分の中では不動です。あと変動するとしたらゆびきりだけかな。星天は他の作品を再プレイした今となっては高すぎる気がしてきたので、ひとつ下げました。2nd、T-waveと並べた方が違和感はない。

T-waveの評価が上がったのは、上にも書いた通り、ひとえに智紗ルートの存在ですね。いつも語っているように作品の評価は主にメインルートの出来で決まるわけですが、りりすルートは記憶通りにヤバかったものの、智紗ルートは記憶とは違い、1stのリスペクトが感じられて、非常に良かったです。おまけにサブのクロエと結乃もかなり上位の出来だったため、評価が急上昇しました。T-waveは舞台が澄空学園ということで、原点回帰を意識した作品だと思います。世の中原点回帰を謳う作品は星の数ほどあるものの、大体がほんまにわかっとんか? みたいなクオリティなわけですが、T-waveは真の意味で原点回帰でした。智也と智紗が被って見えたよ。俺には。

全体の感想はこのくらいにして、個別の感想に移ります。

●りりす&トライアングルルート 自己矛盾の塊

某キャラクターにそっくりな見た目で、志雄君の幼馴染(暴力系)という時流に則った人。時流に則りすぎて、今見ると化石のような懐かしさがあります。令和では通用しないよ。これは。令和はもっと甘やかしてくれる全肯定botじゃないと。メモリーズオフにそんなキャラは少ないわけですが。静流とかいのりとか。いのりと付き合ったら間違いなくダメ男になりそう。一蹴君も最初に付き合ってた時はダメ男だったんじゃないか。そのフシはある。

メモリーズオフでは珍しく飯ウマヒロインで、料亭の娘です。料理上手な描写がある人少ないからね。性格以外は問題ない系の人。亨に言い寄られているので、多分客観的にも可愛いはず。性格以外。性格も昔はおとなしかったらしい。

志雄の母親が水難事故(元々体が弱く、溺れた子どもを助けたことが原因で亡くなった)の原因がりりすである噂が広まり、一旦母親と一緒に(母子家庭)他の町に引っ越したという悲しき過去の持ち主です。実際に溺れた子どもはりりすじゃなかったわけですが、適当な噂はいつでも広まり得る。志雄君の方も、序盤は昔のことはあまり覚えておらず、溺れていたのはりりすではなかったと思うけど、100%の確信はないみたいな状態でした。

で、そこから数年経過し、りりすの母親が志雄君の父親とくっつこうとしたことをきっかけに、家を飛び出て祖母の家(元々住んでいた場所)に駆け込み、志雄君と再会した経緯があります。再会した時にはすでに暴力系になってました。なぜあのおとなしかったりりすがこうなってしまったのか。それは誰にもわからない。作中では素が出てきただけと言明されていますが、それだけで人格が変わりますかね。

再婚の話もよくわからないんですよね。遠峯家と塚本家はどういう関係だったんだろうか。志雄君の母親が亡くなってから数年で再婚レベルまで話が進むってどゆこと? まあ数年って結構長いんで、不自然とまでは言えませんが、志雄の父親もりりすの母親も、なんか勝手な奴らだなぁ、という印象は拭えませんでした。実際自分たちの我儘を貫いた結果、子どもたちは傷ついてたわけですからね。親の事情はなんにも描写されてないので、これ以上深く掘ることもできません。高校卒業するくらいまで隠しとけよ。こんなスピードでくっつくと、ワンチャンこいつら昔(事故以前)から関係があったんじゃないのか、と邪推されてもおかしくない。那由多もそんなパターンだったし。志雄君はともかくりりすはそのくらい考えてそう。いずれにせよ何も描写がないので推測の域を出ません。あとグッドエンドしかやってないので、バットエンドで何かしら描写があっても把握できていない。ファンディスクだとその辺拾われてるんだろうか。仮にそうだとしてもコアレビューは本編のみ縛りがあるので考慮できない。暴力系になったのは親に原因があるんじゃないのか。多分そう。

りりすは久しぶりに幼馴染のメインキャラですね。実は幼馴染がメインヒロインなのはここまで1stとT-waveだけ。あすかとかカナタとかいのりとか、昔から知ってるだけの変則的な人は除外するとして、お互いの全てを知っているような間柄のヒロインは久しぶりです。あすかはメインヒロインじゃないけど。で、ここから先の作品はメインヒロインはほぼ全部幼馴染です。ちなつ霞でしょ、瑞羽でしょ、ちはやでしょ。急に思い出したかのように幼馴染擦ってくる。ノエル以外は全員幼馴染。瑞羽と霞はちょっと毛色が違いますが、まあ幼馴染という言葉を当てはめても違和感はない。

物語はりりすが親友の智紗を志雄君とくっつけようとするところから始まります。智紗が告白して、文化祭の後夜祭で返事してもらうまでは、仮の恋人期間みたいな流れに。掴みは割と良さそうなんだけどね。この掴みからなぜあんな微妙なシナリオになってしまったのか。

くっつけようとした理由は主に三つ。

①智紗が親友だから真剣に応援したい
②志雄のことが好きだけど、母親が亡くなった原因である自分には志雄と付き合う資格がない
③大切な母親を奪ってしまった償いとして、大切な存在を志雄に与えたい

②に関してはりりすは海に行きたいと我儘言っただけで、事故と直接の関係はないわけですが、行った先の海で志雄の母親が亡くなっているので、りりす自体は責任は自分にあると考えています。まあ我儘言ったのも、志雄と母親が仲良さそうだったのがちょっと気に入らなかったとか、そういう理由もあったようです。このレベルの因果関係で責任を追及していると世の中恐ろしいことになりそうですが、りりすがそう考えているのでどうしようもない。こういう場合、客観的に責任のなさを説いても無意味です。本人が思うならそれが真実ですよ。那由多さんも言ってたし。しかし我儘言ったことが原因だったという自責があるのに、なぜ歳を取るにつれて我儘さが増大しているのか。これもわからない。謎。

とにかく志雄君には幸せになってほしいということで、なんとか智紗とくっつけようとするりりすですが、不器用なのかアホなのか、どうもやり方がおかしいんですよね。そもそも幸せになってほしいと言いつつなぜ暴力を振るうのか。志雄君の意思を全無視してまでなぜ智紗とくっつけようとするのか。いくら可愛くていい子だと言っても、気にいるかどうかは全く別問題なんだが。志雄君にもくっつけようとあからさますぎるだろ、などと注意されています。これな〜。結局は、さっさとくっつけて罪悪感から解放されたい&志雄君を諦めたいようにしか読めませんでしたね。邪推ではなく、最善の配慮をもってしても、そうとしか思えない。人間としては非常に自然な感情ですが、メモリーズオフの真ヒロインに相応しい態度なのかと言えば、とてもそうは思えませんでした。

智紗と交流していくうちにりりすが好きだと気づく志雄君ですが、りりすの方もそれを察したのか、これまた不自然なほど志雄君と智紗から離れていこうとします。亨とバンドやるとか言い出したり、亨と付き合いますとか言い出したり。

このルートは志雄君の智紗に対する態度も酷くて、告白をいつまでも断らないのに避け続けるという意味不明な態度に終始しています。デートに誘われても、あ! そう言えば用事があったんだ! などとあからさまな嘘で避けたりと、やりたい放題。箱崎さんのライフはもうゼロよ! って感じでした。可哀想すぎるだろ。このルートの志雄君は完全におかしい。

ということでなんやかんやで後夜祭ではりりすに告白することに。逃亡しようとするりりすを智紗が捕まえて、助け舟を出してくれます。志雄君はここでついでに智紗に断りを入れる。まず智紗に断りを入れてりりすに告白するのが正しいと思いますけども、志雄君はアホになってるのでもはや突っ込まない。

散々な仕打ちをされても許してくれた箱崎さんのおかげで話が成り立ってますが、俺は納得しねえぞ。こんなもん。あんだけ酷いことしといて、最終的に相手が許したから終わりでは、物語として許されないでしょ。デウスエクスマキナに近い。#5も何気にそんな構成だったんですよね。女に目が眩んだ春人君を、最終的にCUM研のメンバーがなぜか許してくれたので万事解決みたいな。一応麻尋がフォロー入れたけど、あんなもんで全部解決するはずがなかろうて。

俺が納得するかは置いといて、志雄君の告白に対し、あんたの相手をしてやれるのは私くらいしかいない(はいとは言ってない)ということで、後夜祭はりりすと踊りました。終わり、ではない。ここでリバースカット改めトライアングルルートに入ります。

トライアングルルートは物語開始時点くらいまで戻ってダイジェスト的にヒロイン視点の物語が挟まるルートですが、リバースカットと違って特に見るべきところはありません。ヒロインの心情描写が入っても、外から見える部分とほぼギャップがないので、あんまり意味がないんですよね。リバースカットが意味をなしていたのは、外から見える麻尋と中から見える麻尋に著しくギャップがあったからであって、それが一致してるならわざわざヒロイン視点を入れるほどのことでもない。裏で信と結託していたみたいな驚きの新情報もないですしね。残念ながらT-waveのトライアングルルートを評価できる点は少ないです。

むしろトライアングルルートでは評価を大幅に下げるところが出てきています。それは亨と付き合う詐欺。これは絶対許されないよなぁ? 表でも付き合う詐欺をやっていたことはわかるんですが、裏事情を知るとより酷い。何を考えたらこんな発想が出てくるのか。これだけでもこのルートが最低評価に値するほどの悪行。前提として亨はりりすに好意があるわけですが、それを踏まえてか踏まえてないのか、微妙にりりすの方によってくる志雄を振り払うため&智紗に遠慮させないために亨と付き合う詐欺を決行しようとします。人をなんだと思ってるんだ。一体。それを受けての享のセリフ。マジ泣けるんすよ。

「……ちょっとそれは残酷すぎやしねえか?」

「俺がキミのこと好きだって知ってるよな? なのに志雄たちを騙すために『恋人のふり』をしろ、と」
「そこで俺の気持ちは考えられてないよな」
「それとも俺のこと、りりすちゃんの頼みだったらなんでも二つ返事でOKする便利屋、だとでも思ってる?」

「冗談だよ、りりすちゃん。怖い言い方してごめん」
「もちろんOKだよ。俺なんかで良ければ」

メモリーズオフ6 T-wave

何にも言えねえ。T-waveの良心。まあ亨はすぐに志雄にバラすんだけど。それもりりすと志雄にくっついて欲しいからだからね。どんだけ聖人。メモリーズオフの一番の男は翔太か亨かってレベルだよ。

そんな感じで後夜祭の時点までヒロイン視点が続き、志雄君に視点が戻ります。後夜祭で一緒にりりすと踊ってから、時間が1ヶ月くらいジャンプ。付き合ってるのか付き合ってないのかよくわからない状態が続いていますよと。暴力は減ったらしいけど、結局なぜ暴力を振るっていたのか。理由などないのか。情緒が不安定だったからなのか。暴力を振るわなくなったのはなぜか。

伝統と実績のマリンランドに誘って再び明示的に告白しますが、今度はなぜか拒否されます。お前ここまで雰囲気作っといて、断るは流石に? いつか離すつもりなら手なんか握らないでよって偉い人も言ってたでしょうが。あげて落とすのやめろ。縁は偉い人なのか。

単に断るだけならまだしも、断った後の扱いもなかなか酷い。

「もしかして、まだ諦めてない?」

「後夜祭で一緒に踊ったくらいだから、きっと何か事情があって付き合いないだけ」
「本当はりりすも俺のことが好きなんだーーとでも思ってる?」

「勘違いしないで」

「あの時後夜祭で一緒に踊ったのは、周りが盛り上がって、そうしないといけないような雰囲気だったからよ。特別な意味なんてないんだから」
「変な期待、持たないで」

メモリーズオフ6 T-wave

これマジで許せねえよ。変な期待持たないではまだいいよ。あの時後夜祭〜のくだりだけは言ってはならないだろ。それ言ったら志雄君ピエロじゃん。可哀想すぎる。嘘つくにしても、もうちょっとマシな嘘ついてください。人を傷つけまくる嘘が多いんだよ。りりすちゃん。亨の気持ちを考えたことあるか? と私は言いたい。

再婚話が再浮上してさらに情緒不安定になったりりすは、何を思ったら記憶喪失詐欺という奇行に走ります。高熱を出した翌日に記憶喪失詐欺を働くという。私はあんたのこと忘れたから、智紗を大事にしなさいという流れ。もはや謎すぎて触れる気にもならない。記憶喪失詐欺は大幅に評価を落とした原因その2です。志雄君は記憶喪失詐欺が判明してから最初から嘘だと思ってたんだよなぁ、と言い出しますが、結果がわかってから言い出すので、結果論の解説者みたいになっています。全員謎。

記憶喪失詐欺の後は、りりすが過去の自分の罪(と呼べるレベルなのかはりりすだけが知る)を告白し、それを知った志雄君が全てを許して無事二人は結ばれましたというオチになります。最後は謎結婚式(結婚したわけではない)を挙げて終わり。全てが謎のルートでした。個人的に大好きな自己犠牲系のヒロインの特徴を持ってるんですけどね。唯笑とかいのりとは全く違った。もうちょっと性格がまともで、丁寧に智紗と志雄君をくっつけるようなキャラだったら、全然評価変わったんじゃないかな。やり方があまりにもおかしかったし、自己犠牲というよりは自分が罪の意識から逃れたいために行動しているように見えて、微妙な印象を受けました。こんな感じで、評価できるところはほとんどなかったですが、謎にシナリオが長すぎるので、謎の愛着が湧くという点はあります。

あともう一個評価点を挙げると、人間の罪とはなんなのか少し考えさせられるシナリオでした。この罪について深掘りするために、自分の記事から文章を引用します。

いやいや、そこまで言い出したら世の中どこまで責任を負えばいいのよ。と言いたいんだけど、実は結構考えさせられる場面です。これも初代リスペクトですかね。彩花の死と母親の死が重なっている。迎えに来てくれと頼んだから亡くなった、海に行きたいとわがまま言ったから亡くなった。近いものがあります。ただね、個人的には、彩花が亡くなったのは智也の影響が大きいと感じますが、りりすのケースはりりすの影響があるとはあまり感じません。この違いはどこにあるのか。因果関係とは一体なんなのか。

違いはおそらく亡くなった事実との深さです。海にいったこと自体は亡くなる要因とはほぼ無関係で、溺れていた子どもの方が亡くなる要因として大きいわけですよ。りりすが関係している事実は海に行ったことだけなので、亡くなった事実とは関係がだいぶ遠いと言えます。

で、智也の方が呼び出した事実と亡くなった事実がかなり近いところにあります。呼び出さなければ亡くならなかったは直で繋がっていますからね。だから影響は大きいわけです。りりすの場合は海に行かなければの間に、溺れている子どもがいなければ、という事実が挟まっているので、関係が遠くなっています。因果関係と罪の大きさと言うのは、その関係の近さで決まるんじゃないでしょうか。

でもなぁ。彩花の場合も信号無視の車がいたことが原因なのではと言われればそうなんですよね。だから直の原因は溺れた子どもと同様に、そこにあるわけですが、それでも智也の方が影響が大きいように感じるのはなぜか。やっぱりどっちも変わらないのかもしれない。う〜ん。仮に自分が彩花の父親だったら少しは智也を恨む(一番恨むべきは運転手)かもしれないけど、志雄の父親だったらりりすを恨むってことはない気がしますね。年齢の問題かな。当時の智也は中三だけど、りりすはキッズだし。キッズのちょっとしたわがままでこうなるとは誰も思いませんよ。因果関係には判断能力も含まれているのかもしれない。

まあとにかくそういう罪があるから志雄君とは一緒になれませんよと。一緒にはなれないけど、大切な人を奪ってしまったから、大切な人を与えたかったと。オチとしては贖罪の物語だったようです。じゃあなんで普段から蹴ってたんですかね。おかしない?

メモリーズオフ6 T-wave コアレビューその26 りりす&トライアングルルート10(終)

罪の深さと因果関係の強さは比例関係にある概念です。りりすは流石に因果関係が薄すぎるので、それを罪と言われても、本人以外は納得できないところがありました。

自己矛盾No. 1ヒロインです。

●智紗&トライイアングルルート 赦しと再生

りりすの親友で、その昔志雄君と出会っていた(志雄君は覚えてない)という人。と言っても、小さい頃にコスモス畑の前で一回出会ってるだけだからね。普通覚えてませんよ。正直智紗ルートは残っている謎が多い。ただT-waveは智紗の物語だったと言ってもいいシナリオです。正当な1stリスペクトの物語で、ザ・メモリーズオフと呼べる出来。実は志雄の母親が海で助けた、溺れていた女の子が智紗だったことが、物語の後半にわかります。りりすとは反対に、事故との因果関係が強力に結びついているのが智紗でした。

T-waveは智紗から告白されるところから物語が始まります。2ndは彼女がいる状態から開始、それからは振られるところから開始、T-waveは告白されてからが始まり、ということで、偶数作品らしい? オープニングになっています。別に偶数を狙ってるわけじゃないだろうけど。後夜祭までのお試しカップルとなって、後夜祭で返事をもらう約束で、二人の付き合いが始まりました。

実は告白する前に自分を変えようとイメチェンを図ってくるのですが、これがまさかの失敗。フォームを改造して球速もコントロールも下がったような状態になっています。

100%の全盛期の姿
30%の力しか出せなくなった姿

どう考えても上の方が可愛いでしょうが(100回目)。イメチェンするのはいいけど、ほんまに顧客の好みを調べんたんか〜? 志雄君はおとなしかったりりすの方に好感を持ってたから、このイメチェンは逆効果なのでは。実際メガネの方が良かったみたいな選択肢があるので、作ってる側もイメチェンが必ずしもポジティブなものではないことを把握してたっぽい。大体華やかなキャラは他にいっぱいいるんだから、そいつらに合わせてどうするんだよ。その土俵にはクロエ先輩がいるんだから、同じ土俵で戦っても難しいんだよ。自分の武器を生かさないでどうするんだよ。云々。この件に関しては話せば100時間でも話せそうなのでカットします。ただでさえ文章がシリーズを追うごとに長くなってるんだから。

智紗ルートは文化祭の準備を一緒に進めていく中で仲良くなっていく構成になっています。智紗は自信がないだけで基本才女なので、有能っぷりを発揮して周りにも認められていくと。そんな感じで前半はハッピーモードで進んでいく。智紗のまっすぐな愛がひたすら眩しいルートです。BGMもChisa-Straight loveだし。このBGMも素晴らしいんですわ。1stっぽい秋の朝の雰囲気が出ている。Each and every heartに続く曲だよ。これは。

ハッピーモードの中でも、水族館で倒れるなど、メモリーズオフらしい不穏な要素も匂わせています。事故のトラウマで水が苦手なわけですが、志雄君はそんなことはつゆ知らず。さすがに知りようもないから仕方ないね。

後夜祭までの日数が迫ってくると、志雄君は僕は本当に彼女が好きなんだろうか、などとたわけた供述を始めます。そんなもん好き以外あるわけねえだろ。どんだけラブラブカップルなんだよ。

で、持ち上げて持ち上げてから、智紗が過去の事故のことに気づくターンがやってきます。志雄君の母親のことですね。りりすと異なり、こちらの方はガチで亡くなった原因に直結しているので、感情の変遷がヤバい。サバイバーズギルドを抱えるようになり、志雄君に優しくされることすら苦痛で、有頂天モードからいきなり志雄君を徹底的に避けるようになります。この辺麻尋に近いものがあります。ただ、さすがに私が犯人でしたとは言えなかったらしい。そらそうでしょ。好きな男の母親を殺しました(殺したわけではないけど)とはとても言えない。麻尋の好きな男の親友を殺しました(殺したわけではない)よりもかなり重たい。

急に志雄君を避けるようになったので、当然りりすに激詰めされます。その時の返答がこれ。

「……私ね……もう、志雄君と一緒にいる資格、ないの」

「好きになる資格も、ううん、友達でいることも、最初からそんなこと、考えちゃいけなかったの!!」

「志雄君を好きになるなんて、なっちゃいけなかったんだよ!!」

メモリーズオフ6 T-wave

この作品でトップを争うくらい悲しいセリフ。別に資格なんていらないんですけどね。人が人を好きになるには人であれば十分。なんなら人でなくてもいい。無機物でもいい。問題は相手がどう思うかだけ。ただこの場合、相手がどう思うかなんて、聞けないですよね。資格がないというよりも、勇気がない。そしてどんな人間にはそんな勇気はない。

志雄君はそんな状態になってから、ようやく智紗が好きだったと気づきます。大事なものは失ってから気づく。健康のありがたさは病気にならないとわからない。ということで、徹底的に避け続ける智紗を家まで押しかけて後夜祭に誘います。そこで男気告白。

「私、ひとつ大事なことを、志雄君に話さなくちゃいけないの」
智紗の顔が、泣き笑いの表情に崩れていく。
「ーーあのね」

メモリーズオフ6 T-wave

というところで、真相を話す前に智紗のトライアングルートに入ります。まあ智紗のトライアングルルートはハッピーモードで幸せ絶頂なことがよく伝わってくる内容です。ほー、こんなこと考えてたんだな、となるのでりりすよりは良かった。罪の意識に苛まれる様子もよくわかる。全てを投げて徹底的に逃げなければならない感情の動きもわかります。真相なんて言えねえよ。そんなこと。本当のことなんて言えねえよレベルで言うと、カオチャの乃々くらいはある。

で、志雄君の視点に戻ると、ついに真相が告げられます。罪を告白した後のセリフがマジ泣けるんすよ。マジで。

「そして私は、あなたのことが好きです。あなたのこと、好きだけど」

「だけど……だけど、だから……ごめんなさい」
「私、あなたの気持ちには応えられません」

メモリーズオフ6 T-wave

こんなに悲しいセリフがかつてあっただろうか。罪の意識で一緒になれない、大切な人の大切な人を奪ってしまったと言う点で、僕には智紗と智也が被って見えました。そう。実は智紗は智也のリスペクトキャラで、T-waveは智紗が主人公の物語だったんだよ。漢字も一緒だし。そう考えるとT-waveの全てが理解できた気がしたので、一気にこの作品の評価が上がりました。

振られた後も徹底的に避けられ、会おうとすると振られた女をつけ回してる男などとあらぬ(ある?)噂を立てられる志雄君です。さすがに可哀想。これは無理に避け続ける智紗にも責任がある。クロエ先輩と結乃の計らいでなんとか会うことができた時に、志雄君はこんなことを伝えます。

「でも、私がいたら逆に、ふたりを不幸にしちゃう。私、いない方がいいのーー!!」
「違うっ!!」
砂浜を力強く踏みつける。
「智紗は悪くない! 誰も欠けちゃいけない! 今になって誰かがいなくなっても、誰も幸せになんかなれない!」
確かに少し前までの俺たちの関係は、作り損ねた二等辺三角形だった。
俺とりりす、りりすと智紗ーーそれぞれに接点はあっても、俺と智紗を結ぶ線がない。
ただの記号ーー「>」に近いものだったろう。
それが、俺と智紗の間に消しようのない線が生まれたことで……。
どこか一辺でも欠けたら崩れてしまう、正三角形になっているーーそんな気がしていた。

メモリーズオフ6 T-wave

トライアングルウェーブの伏線回収来たな、というセリフです。やっぱり智紗が真ヒロイン(主人公)なんだって。タイトル回収するくらいだし。でもこれでまだ話は終わらない。どう足掻いても、このままくっ付いたら、リリスは離れていくし、罪悪感は残ると。

志雄君はそこから過去に解決の手かがりを求めて、昔のことを調べ上げました。そこで過去に智紗と出会っていたことに気づき、智紗をその場所に呼び出して過去のことを伝えます。久しぶり、8年ぶりだねと。

「ーーもう、いいんだよ」
「……え」
「もうそんな、自分を責めなくて良いんだ。智紗は充分、苦しんできたんだから」
「でもっ」

「俺の母さん、後悔してるかもしれないよ? 智紗を泣かせるために、助けたわけじゃないだろうから」

「それにさ、母さんが助けなかったら、俺たちこうしてもう1度会うこともできなかっただろうし」
「……好きになることも、なかった」

「こんな私が……好きでいていいの?」
「うん」
「私、志雄君を好きで……いいかな?」
「うん」
「……」
「……ありがとう」

メモリーズオフ6 T-wave

ということで無事くっつきました。いやぁ。これは絶対納得できない人はいるでしょうね。意味不だし。実際意味が伝わる描写とは思えない。昔を思い出しましたと言われても、昔3人出会ってました、ってだけだし、そこからどうやって罪に対する赦しに繋がるのか見えません。

でも僕は、過去がどうのこうのというよりは、志雄君の想いの強さが伝わったと考えます。智紗の方は途中から過去に気づいてたけど、志雄君は思い出していなかったと。過去を思い出したことで、志雄君の想いの強さが伝わったと。それで良いよ。過去の記憶を取り戻した相思相愛の志雄君が許すと言ってるんだから許されるんだよ。智也も唯笑が許してくれたから許されたんだよ。それで本人が納得できれば終わりです。原罪から解放されて再生されるためにには、真に愛する人の赦しが必要なんだよ。それは1stもT-waveも同じでしたと。記憶を取り戻す前の志雄君には真の愛が足りなかったんだな。最後は愛だよ。愛。

あとはおまけ程度にみんな楽しく騒いで物語は終わり。メモリーズオフとしては珍しく大団円エンドでした。親の再婚でりりすとは兄妹になるわけだし、こっちの方が真ヒロインでいいんじゃないかな。まあ正史はクロエ先輩なんだけど。いや、あんなもん公式(イノサンフィーユ)が勝手に言ってるだけだから。俺の中で正史は智紗だから。

あと平野綾さんの力量が大きく影響しているルートですね。やっぱりこれだけ熱演されると、色んな意味で盛り上がるよ。評価が上がってる原因はそこにもあるかもしれない。BGM最高だし。歌も最高だし。蒼い星は名曲。メモリーズオフでベスト3には入る。

1stリスペクトNo. 1ヒロインです。

●クロエルート 正史となった伝説

生徒会長でカガミ食品のお嬢様でフランス人と日本人のハーフ。全てをそのルックスで薙ぎ倒す嘉神川”ザ・モンスター”クロエ。男のKO率100%です。声もいい。サブヒロインでこんな経歴も見た目も華やかなヒロイン持ってきたことあるぅ? むしろメインでもいないわ。ちはやくらいかな。サブヒロインの例は雅師匠とりかりんくらいか。意外といるわ。ただりかりんよりも癖がある。イジられたらちょいギレするところを見ると、どっちかといえば雅師匠に近い。ソフトな師匠。

クロエとは文化祭の準備を通して仲が深まっていきます。後夜祭の予算が不足してるから一緒にかき集めましょうという流れ。文化祭を通して仲良くなるのは、みんな同じパターンですね。これが当てはまらないのはりりすと鈴だけか。メモリーズオフって高校が舞台なことが多いんですが、高校は空気なことが大半です。2ndは夏休みだし、それからは卒業間際だし、ゆびきりも割と空気だし、IFは完全に空気だし。学校をきちんと舞台として活用しているのは、実質1stとT-waveだけではないだろうか。1stは学校のイベントなんて定期テストしかなかったので、この手の作品はT-waveだけと言ってもいいかもしれない。

クロエルートでは、智紗をクラスメイトの前で振るというアホみたいなイベントの後に、クロエ先輩が家に泊めてくれとやってきます。いきなり来るくらいだから、もう初手の時点で惚れてますよね。これ。来た理由は父親が倒れて、文化祭の準備も忙しくて、予算の問題も出てきて、メンタルが限界に来ていたからです。父が入院するし、母はいないし、会社の経営も怪しいし経営厳しいから細々と暮らしてるし、みんな私ばっかり頼りやがってマジでもう限界なんだよふざけんなよ(言ってない)、等々。めっちゃ語ります。こんな美味しいイベント貰ったらそりゃ人気になりますよ。約束された勝利のヒロインですやん。

一個気になるのは、志雄君だけずっと塚本と名字呼び捨てだったことですね。他は名字だろうが呼び捨てしている人は一人たりともいなかったけど、なぜ志雄君だけ呼び捨て。志雄君には割と有無を言わせない命令を下してきたりもするし、好きな人に対してはSっ気があるのかもしれない。呼び捨てなのは親愛の証か。途中で名前呼び捨てに変わりますが、それも結構後の方だよ。おい塚本! あんぱんと牛乳買ってこい! みたいな感じで呼び捨て期間が長かった。いや、そんな感じはないけど。塚本、お前後夜祭の担当な、放課後までに資料まとめとけよ、みたい命令はあった。

まあクロエのルートはらぶらぶちゅっちゅ状態? で、ハッピーに過ごしてるだけなので、メモリーズオフとして見どころがあるかといえば、そんなにありません。からかってきたり、弄ってきたり、弄られてちょいギレしたり、意地はったりするクロエ先輩が可愛いだけ。可愛いだけ? 結構じゃないか。伏線を張って脚本を練り上げることはできる。ただお前を可愛くすることはできない。たとえおれがどんな名コーチでもな。立派な才能だ。

近寄りがたい存在がどんどん可愛くなっていくって、結構王道な感じですが、何回やってもいいもんですね。詩音とか鷹乃とか雅師匠とか。若干カテゴリーが違う気もするけど。

少しはメモリーズオフっぽいビター要素、悲しき過去もあります。クロエの悲しき過去といえば、父親の忙しさゆえに母親が家を出て行ったことと、その時に残されていたピーマンの肉詰めが大嫌いになったことですね。その成果、父親とも微妙な不仲が続いている。クロエはなかなか偏食で、嫌いなものが山ほどあるんですが、ピーマンはもともと好きだったけど、トラウマで食えなくなったという。はぁおいしいこのピーマン、と早口で言うところは名シーンです。迷シーン?

過程を踏んで仲を深めていくところは描かれているし、美味しいシチュエーションに詰め合わせになってるし、志雄君も男気あふれる男になっているので、不快感も破綻もないという意味では、きちんとしたシナリオになっています。優等生って感じですね。後々正史となった伝説のキャラですが、さもありなんというか、まありりすが酷かったからね。多分智紗も客観的には酷い(個人的には最高のシナリオだけど)という評価だろうから、相対的にクロエが上がっていったのは理解できる。見た目もメインヒロインだし。

最終的には後夜祭で一緒に踊って愛を確かめ合って終わりです。ついでに父親が意識不明の状態から目を覚まして、家族とも和解しましたよと。家族関係は割とあっさりでしたね。母親も本編には出てこないし。

「……なんて、冗談。……本当は私、志雄の家に行ったあの日から、私の中には志雄しかいなかった」
「だから、これからもよろしくね」

メモリーズオフ6 T-wave

やっぱり最初から惚れてたようです。どうやって惚れたかは謎。一応、ファンディスクでは一目惚れだったという話ですが、コアレビューは本編だけを参照にするので、本編だけでは謎ということにしておきます。志雄君は顔面で落とすタイプっぽい。

クロエルートはシンプルにいい話でしたね。ただいい話ゆえに、それほど語ることもない。やばいキャラの方が語ること多いんですよ。この記事もりりすが一番長いし。

偏食度No. 1ヒロインです。

●結乃ルート 光の戦士

気は優しくて力持ち。スポーツ万能。転校してきたにもかかわらずクラスの中心人物となっている。そんな後輩キャラです。シリーズ1の陽キャじゃないだろうか。メモリーズオフなんて何かしら問題を抱えた、鬱屈としたキャラクターばっかりですからね(偏見)。いや、偏見ではない。だってここまで問題らしき問題を抱えてないキャラ、他にいなかったし。さよりんですらちょっと重めの悲しい過去を抱えているし。かおるもちょっとヘビーな要素があったし。ほたるは特に問題らしき問題はなかったか。ほたるは全てを手に入れた女だからね。あれは健ちゃんの方に問題がある。

結乃は同じ生徒会の所属で、これまた文化祭を通して仲が深まっていく物語です。なんというか、全てが可愛いんですよね。結乃ちゃん。声も可愛いし表情も可愛いし性格も可愛いし屈託がないし明るいし。こういうキャラでいいよって感じのキャラです。もうトラウマとか三角関係とか悲しき過去とか疲れたよ。可愛い後輩ときゃっきゃうふふできればええねん。そう思わせてくれるストーリー。ギャルゲーとしては100点です。メモリーズオフとしていいのかは別問題。

志雄君はカナタのラジオを聞くのが趣味で、結乃もラジオが趣味なので、その共通部分でさらに仲良くなっていきます。文化祭の台本を書いていたのも結乃で、ラジオのネタからそれを見抜きます。

T-wave さいかわCG

智紗をめちゃくちゃな形で振った後も変わらず仲良くしてくれるということで、陽キャの陽キャたる所以を知ることができます。結乃ちゃんマジ天使。可愛くて優しくて力持ちで陽キャでクラスの中心人物で裏表のなさそうな素敵な人。こんなにいい子がメモリーズオフにいていいのかよ!(暴論) こう見せかけといて裏ではやばい事件の切り抜き集めたり、妹の悪口を掲示板に書き込んだり、病院の前で他界した父親を待ち続けたり、実は不治の病を抱えてたりするのがメモリーズオフでしょうが。でも結乃はそんなことはない。なぜないのか。それは陽キャだから。那由多も陽キャだけど、あれは偽りの陽キャだから。真の陽キャは早口になったりしない。結乃はメモリーズオフで一番モテるはず。西住認定キャラ。

このルートで面白いのは、智紗がちょっと毒舌キャラになっているところですね。関係が修復した後は、結乃と仲良さそうなところをちょっと弄ってきます。ほー、別れた直後なのに他の女と仲良さそうですな、みたいな。

内容はほとんどクロエルートと似たようなものですね。ひたすらいちゃついて、デートして、きゃっきゃうふふしてるだけです。だけというか、ギャルゲーなんだからそれが当たり前なんですが。メモリーズオフはギャルゲーなのか。まあサブヒロインだからいいってのはあるよね。エースピッチャーの重責がないからなんでも出来る。次男みたいなもん。エースピッチャーの重圧に負けてしまったのがりりすとも言える。このくらいのもう付き合っちゃえよの距離感が一番楽しい。付き合ったら終わりだし。

結乃は自信満々にグイグイと志雄君を攻めてきます。これが陽キャたる所以だよ。まさか私が嫌われるわけない、みたいな発想が根幹にある。陰の者には理解できない感覚です。デートしましょうとか、腕くらい組まないとデートじゃないですよとか。完全に強者の態度。これが持つ者の力ですわ。

一応結乃の悲しき過去に触れておくと、喧嘩別れした友達と仲直りできないまま友達の方が遠くに転校してしまったという過去があります。それをラジオを通して仲直りさせようと志雄君が頑張るお話。

最後は文化祭で全校生徒の前で男気告白すると同時に、友達と仲直りさせて終わりです。浜咲の伝説を超える澄空の伝説。いやぁ。すごい爽やかな青春物語でしたね。特に裏もなく、明るく爽快に大団円エンドです。志雄君も男らしかったし。本当にこれがメモリーズオフなのか。こんなに綺麗に終わっていいのか。もうちょっと何かないのか。ないんだなこれが。もう眩しすぎて何も見えない。結乃という光に世界が包まれていく。

爽やかさNo. 1ヒロインです。

●鈴ルート 信の姉

10代向けの恋愛小説作家で信の姉。バイク好きで赤いバイクに乗っています。姉がいることは1stで言及されていましたね。智也曰く、信にそっくりだとか。言うほど似てなくない? 似てなくてもいいんだけど。

鈴はいつもの甘えさせてくれる年上枠です。行き倒れているところを志雄君をアパート(志雄の部屋の真上)に入居させてから、実質同棲生活のような状態に。その甘えさせっぷりたるや、過去一と言っても過言ではない。静流よりも上なんじゃないの。役割を全うしているキャラです。年齢が#5時点での瑞穂と同じっぽいけど、マ? 瑞穂の年齢設定バグってるだろ。絶対。

このルートの見どころは年齢差を気にしているところと、智紗の扱いですね。年齢差って言っても、つばめ健ちゃんと大して変わらんのだが。つばめ健ちゃんは5歳差で志雄鈴は7歳差? つばめルートで年齢差を気にする描写はなかったですけどね。姫ちゃん先生とかもっと年上じゃなかったっけ。年齢差に関しては田中一太郎とカナタよりマシで全てが解決される。

元々鈴が学生自体に年上の教師を好きになったことがうまくいかなかった過去があり、そこから過剰に年齢を気にするようになった経緯があります。恋愛小説ではそれを昇華するようなストーリーが多いらしい。ある意味トラウマを抱えたキャラか。正直年上だったからダメだったんじゃなくて、教師だったからダメだったのではないかと思わなくもない。

智紗に関しては、告白の断りを入れる時に揉めました。揉めるルートはこれだけ。

「だって、あの人……この前会ったばっかりなんだよね?」

「それに、うんと年上だし」

「だとしても、うまくいくはずないよ! 塚本君のほうが、ずっと年下なんだから!」

メモリーズオフ6 T-wave

正論パンチで攻撃してくる。うんと年上かは知らんけど、本当に会ったばっかりだからね。智紗も文句の一つも言いたくなるて。

「鈴さんは、いい人だよ。箱崎さんのことだって、思い遣ってくれてたんだから!」
「私のこと……?」
「好きな人がいないなら、OKしてあげたらって俺に言ったんだよ!」

「そんなの……そんなの、私をダシにして、理解のある大人を演じただけじゃない!」

「だって……だって私の方がずっと先だったのに! ずっとずっと塚本君のこと、好きなのに!」
「なんであの人なの!? 納得いかない! あんまりだよ!」

メモリーズオフ6 T-wave

私の方がずっと先だったのに、ってのがちょっと気になる。これはプリントを拾ってもらったあたりを指しているのか。それとも薄々過去に出会ったことを覚えていて、その頃を指しているのか。判断する材料がありませんが、過去のことを覚えてる方がエモい感じはある。ずっと先、ずっとって言うくらいですからね。ずっとだったら結構前だろ。1年2年レベルではなくないか。いのりも同じようなセリフあったけど、あれは10年レベルだし。用法としてはずっと前が1年前より8年前を指してる方が違和感はない。

志雄君が自分の方に寄ってきていることに気づいて、鈴は実家に帰ります。で、あれこれあって文化祭に呼び出して話をすることに。ここで年齢差を気にする理由が開示されます。結局その場では別れて、鈴を待っていることだけ伝える。エンディングでは私が来たと言わんばかりに、再びアパートに入居してきました。まあハッピーエンドですかね。

信の姉という設定、必要あった? 一応信とのやりとりはあったけど、美味しいポジションを用意しておきながら、シナリオは結構短いしぶつ切りエンドという、微妙な感じを醸し出していました。智紗がちょっとダークサイドに落ちかけていたのは面白かった。年上らしい態度も悪くなかった、というかよかったです。トータルでは悪くなかったですが、信の姉というポジションに相応しいキャラだったのかは疑問が残ります。

甘やかし度No. 1ヒロインです。

⚫︎まとめのまとめ

この作品は智紗ルートに価値を見出すかどうかで全てが決まりますね。サブヒロインの充実度はトップレベルなので、メインヒロインが素晴らしければ上位に来る作品でしょう。りりすルートも素晴らしければ間違いなく上位だったんですが、素晴らしいのが智紗ルートだけだったので、やはり上位作品には一歩劣るかな、という印象でした。智紗ルートも流石にいのりルートに匹敵するとは言い難いので、それからには並ばないですね。

智紗ルートは間違いなく1stの息吹を感じさせる物語で、原罪と赦しと再生というメモリーズオフのテーマに則った正当なシナリオでした。シリーズものの作品ではよく〇〇リスペクトとか原点回帰とかよく言われますが、これはまさに原点回帰と言っていい作品。それからもそうですね。いのりは唯笑のリスペクトキャラ。智紗は智也のリスペクトキャラ。

あとT-waveはBGMがよかったです。キャラBGMも日常曲も切ない曲も耳に残る曲ばっかり。キャラソンも良かった。キャラソンは歴代で一番良かったんじゃないかな。全曲素晴らしいってなかなかないですよ。りりすも智紗もクロエも結乃も鈴も全員よかった。ED曲もよかった。プリミディアね。メロディがいいし、サビの歌詞もいい。OPはコンプリート版の方は好みではある。智紗の歌っぽいし。あらゆる意味で楽曲に恵まれた作品でした。

最後はシリーズ恒例のベスト○○を挙げて終わりにしたいと思います。

ベストシナリオ 智紗&トライアングルルート
ベストキャラ 智紗
ベストBGM Chisa Ⅰ -Straight love

全部智紗。まあこれは智紗が主人公で智紗の物語ですよ。智紗に始まり智紗に終わる。智也枠だしね。あと最後にもう一回言っておきますが、智紗は黒髪三つ編み黒縁メガネの方が可愛いです。コアレビュー終わるまでに、あと100回は伝えたい。ちなみにメガネは黒縁じゃないとダメです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?