濹東綺譚で永井荷風が言いたかっこと
濹東綺譚(ぼくとうきたん)は、永井荷風の短編小説です。
作家 (荷風)が一人の娼婦に入れ込み、足しげく通うという内容ですが、完全に割り切った間柄でなく会話が粋です。
商売なんだから、お金を払ってお世話になったら「はい!さようなら!」でいいはずなのに。
遊び慣れた荷風だから、娼婦に対しても愛を持って接していたのかも知れません。
さんざん女遊びをしてきた荷風ですが性欲の衰えを感じる年齢になっていきます。
「花の散るが如く、葉の落(おつ)るが如く、わたくしには親しかった彼(か)の人々は一人一人相ついで逝(い)ってしまった。わたくしもまた彼の人々と同じように、その後を追うべき時の既に甚しくおそくない事を知っている。晴れわたった今日の天気に、わたくしはかの人々の墓を掃(はら)いに行こう。落葉はわたくしの庭と同じように、かの人々の墓をも埋めつくしているのであろう」
(濹東綺譚 永井荷風)
これまで迷惑をかけた人達への謝罪と、時代とともに変わっていく街の様子が寂しいと感じる締めくくりでした。
菊池寛が、いいとこのお坊ちゃんの荷風に、自分より身分が下の世界を書いてみてはどうか?と提案して、これを書いたと、谷崎潤一郎全集かなにかの付録で読んだことがあります。(記憶違いかもしれない)
昔の作家は作家同士で、こういう話を書いたらどうだ?とか、〇〇先生に読んでもらって出来がいいと褒められたから発表した、などといったエピソードがあります。
実は、これに憧れているのですが、なかなか助言をしてくれる人に出会えません。
ところで、「失楽園」は究極の愛?と社会現象にまでなったのに、石田純一の「不倫は文化」発言は批判されました。報じる側に一貫性がないのは一目瞭然です。
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