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太宰治について

 芥川龍之介「鼻」

この話、好きです。

長い鼻のお坊さんは、色んな方法で鼻を小さくすることに成功する。

これでみんなに笑われない。

そう確信していたのに、前より笑われるているような気がする。

悩んでいるうちに、ある日、元の鼻に戻ってしまう。

これで、もう誰にも笑われない。

 

 世間は、長い鼻を気にしているお坊さんのことを笑っていたということ。

コンプレックスを悟られまいとするお坊さんに人間らしさを感じます。

短編なのに深い内容で、さすが!芥川龍之介です。

 太宰治は芥川龍之介に憧れていて、どうしても芥川賞が欲しかった。

選考委員の川端康成に「才能はあるが私生活の悪さが作品にあらわれている」と酷評され、それに激怒した太宰は川端康成へ文章で反撃します。

『小鳥を飼い、舞踏をみるのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った』

『刺す』と書いているのですが、全文を読むと乱暴な言葉ばかり並べているわけではありません。

『私はいま、あなたと智慧くらべをしようとしているのではありません。私は、あなたのあの文章の中に「世間」を感じ、「金銭関係」のせつなさを嗅いだ。私はそれを二三のひたむきな読者に知らせたいだけなのです。中略 ただ私は残念なのだ。川端康成の、さりげなさそうに装って、装い切れなかった嘘が、残念でならないのだ。こんな筈ではなかった。たしかに、こんな筈ではなかったのだ。あなたは、作家というものは「間抜け」の中で生きているものだということを、もっとはっきり意識してかからなければいけない』(太宰治『川端康成へ』)

 病気で入院、その後、文藝春秋を本屋でみて川端康成の文章を読んで腹を立て、眠れない夜を過ごす。辛かったことはよくわかった。 

太宰治は芥川龍之介を尊敬していたから、私生活を理由に落選したことが許せなかった。

 許せないこと。誰にも一つ、二つある。むかついた相手に対して感情的にならず、冷静にチクリチクリと文章で書く。真似したい。

 十代の頃に「人間失格」を読んでから太宰治が苦手です。
薬物依存、自殺未遂、心中。
絶望的。本の中の文字から負のエネルギーが出ているように感じました。
何度も閉じ、怖い物見たさでまた読む。その繰り返し。

子供の頃、走れメロスを読んで感動したのに。同じ人が書いたとは思えずショックでした。
もし同じ時代を生きていたら、男女の関係にはなりたくない。


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