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あさましきもの

 私はただのおばさんじゃない。あなた達とは違うのよ。
まわりから見れば同じなのだが、本人はそう思っている。それは、彼女のご主人の職業にあった。田舎の小学校の校長先生だ。
なにかと言えば、主人の話題となる。とても立派で、この職場の部長や次長なんて主人からすれば下だと言う。
毎日、家族の自慢話ばかり。仕事ではミスばかりで常に誰かがカバーしなければいけない。彼女の振る舞いは、まわりから完全に浮いてしまう。本人は、みんなから妬まれていると思っているようだが違う。
 頼まれてもいない仕事をして上司に残業代をよこせと言う。ごねられるのを嫌がる上司はそれを認める。
校長先生の奥さまが、なぜそんなにもお金を稼がないといけないのか。
自分をよく見せるため、ご主人の肩書きを利用しているだけ。人は行動では嘘はつけない。

 
 高校生の時、柔道で県大会で優勝したと豪語する男。メダルをぶら下げた幼な顔の写真をスマホに保存して飲み会でみんなに見せる。
「すごいですね!」
みんなそう言う。確かにすごいことである。
でも、それは三十年前のこと。過去の自慢は、そこから成長せず止まっていることを意味する。
 彼は飲み会が好きだ。コミュニケーションさえ上手くいけば、仕事も上手くいくと思っている。
 仕事は、優先順位を決め、丁寧かつ正確、早く仕上げること、時に臨機応変さが必要である。
例えば、料理人はいくつもの食材をどう調理するか、頭の中で組み立て優先順位をつけながら調理していく。
ビルに組まれる足場もそうだ。あれは安全を確保し計算しながら組んでいく。
 世の中の職人と呼ばれる人達は、みんな地頭がよく、想像力が豊かでないとできない。
学歴やコミュ力だけで乗り切れるものではない。
「すごいですね!」
彼は、その言葉が聞きたくて今日も飲み会に若手を誘う。
令和では飲み会の誘いが強要になることもあるので気をつけたほうがいい。

 

 何十年、音信不通だった男が元嫁の実家に訪ねてきた。元嫁は、玄関先に立っている男に見覚えないといった様子でしばらく不思議そうな顔をしていた。

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