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発達障害の「障害」ってナンだ (4)

自分の意図とは全く別に、身体が動いてしまったり、声が出てしまったりするいわゆる「チック」に効果があることが多い、というよりは「非常に効果がある」というサプリを医師から貰って、(息子はそれに大いなる期待を持って。私は、ほんのちょっぴりの期待にすがる気持ちと「サプリとはいえ薬には変わりがないからなあ」と思いながら)飲ませてみたところ・・・

1日2回の錠剤を2度目に飲んでからしばらく後のこと。息子が突然、立ち上がり、ふらふらと夢遊病のようにどこかへ行ってしまう、ということを繰り返すようになったのです。

壁に激突しそうになったり、突然玄関の方へ行ってしまったり・・・しかも、見ている限り、本人は意識朦朧。何をしているのかも分からない様子で、こちらが大きな声で名前を呼ぶと、ハッと目を覚ますような状態です。

これを書いている今はもう、「過ぎてしまったこと」なので、冷静に考えることが出来ます。が、実際初めてそんな状態を目の前にして、しかもそれが延々と繰り返されていたので、それはもう慌てました。

新たに、せん妄状態にはなりました。でも、声チック(大声版)も、身体の動きにも、全く改善の兆しはありません。すぐさまそのサプリの摂取を止めましたが、一旦体内に入ってしまったものですから抜けるまでには時間がかかります。その「意識朦朧」の状態は、丸一日以上続き、ふらふらと歩き始めてしまう息子を引き戻しに行くために(壁や扉に激突してしまうので)、気の抜けない時間を過ごしました。

サプリを下さった医師に相談すると、メーカーによればそういった症状を呈した人は今までいない、とりあえず飲むのは止めてみたらどうですか、と仰るだけでした。私は、その医師に丁重にお礼申し上げ、途方に暮れました。

一体、誰に相談したら良いのだろう・・・

その一方で、チックの症状が出てからの息子をつぶさに見てきて、母親として気が付いたことがありました。

それはこんなことでした。

息子は、幼い頃からネガティブな感情を一切(本当に一切)表現しない子供でした。というより、表現「出来ない」子供でした。何かおかしいな、と思って水を向けてみても、そんなことでは絶対に何も言わない。手を変え品を変え聞き出そうとしてみても、頑として口を割らない。ところが、最近の彼を見ていると、「嫌だなあ」「疲れたなあ」という時は、必ずと言って良いほど、何らかのチック症状が出ているのです。

つまり、彼は、ネガティブな感情をこういった形で身体表現しているのでは・・・?

そう考えると、色々と辻褄が合います。

ただ、そのことが正しいのか、それとも全く見当違いなことなのか、誰かに相談したくても誰に相談したら良いのか、どこへ行ったら良いのかも分かりません。

思いあぐねた私は、自分が病を得た時に助けて下さった、知り合いの方に相談をしました。そして、彼女が紹介して下さった医師から、こんなことを言われたのです。

これは、本人の何かバランスを取り戻そうとしているプロセスです。
治ろうとするプロセスとでもいいましょうか。
お母さまが洞察されているように、
今まで抑えていたものが溢れてきています。
それは、まさに「言葉にならない叫び」のようなものとして出てきています。
こういうお子さんは、まだ表現手段を持たないので困っています。
ですので、何かの形で自分の抑えた感情を形にできる手段を探す必要があります。
絵や音楽というわかりやすいものだけではなく、
文章でもスポーツでも伝統芸能でも・・・・
何か彼にフィットする表現手段を探していくことが、
彼の生きやすさにつながります。
とにかく、今は生きづらい、という訴えです。
彼が少しでも「生きやすくなる」ことを中心にしながら、
適切な表現が自己治療として機能できるものをお探しになるといいかと思います。
どういう経緯を辿るものなのか?
という点に関しては、適切に内的な衝動をうまく表現に変えていければ、いづれ消えます。
特に対策をとらなくても、思春期の終わりと共に自然に消えていきますが、
適切な自己治療の方法を、彼はすこしずつ作っていく必要があると思います。
そうでないと、いづれ成人のときに、今度は別の症状や病気のような形で
顕在化することで、生命はバランスを取ろうとします。

なるほど・・・という思いと、やっぱり!!という思いでした。

突然、チックの症状が出てからちょうど、1ヶ月経った頃のことでした。

(つづく)