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発達障害の「障害」ってナンだ (3)
私たちの話を聞いた医者は、自分は専門ではないのだが、と断った上で息子を「発達障害」であると仰いました。
「・・・実は、私も発達障害なんですよ。こうして話をしていても身体の一部が動いているでしょう。子供の頃は、落ち着きがない、と叱られ続けて」
「ご存知ですか、ノーベル賞を受賞している人たちのほとんどは、発達障害なんですよ。つまり、まあ息子さんは、非常にユニークな脳をお持ちだ、ということです」
なるほど・・・
私たち夫婦はその時、様々なことが腑に落ちたような気がしたのです。
私には、思い当たることがいくつもありました。
その1:
息子がまだ私のおっぱいを吸っている頃のこと。普段はテレビなどつけないのですが、おっぱいをやっている間くらい、ニュースでも見ようか、とふと思い、テレビをつけた途端、息子はおっぱいを吸い止めたのです。息子は私を睨んでいるような顔をしています。赤ちゃんが、人を睨むようなことがあるだろうか・・・? 私はテレビを消してみました。するとまた吸い始めます。点けるとまた止まり、消すと吸い始め・・・息子が大きくなってくるとそれはもっと顕著になりました。たまにはニュースくらい見たい・・・とテレビを点けると、息子がすぐさま消してしまう、ニュースを聞き流すくらいはしたいのだ、と息子に言ってみても、点けるとすぐさま息子に消されてしまう、という状態が少なくとも半年は続きました。(私の場合は半年くらいで済んだのですが、夫についてはそれからあと1年くらいはテレビを点けさせてもらっていなかったような記憶)
その2:
入園の前にオムツが取れていること、というのが息子の幼稚園の入園条件だったため、ではいつオムツを取ろうか?と息子と話したところ、「3歳の誕生日になったらオムツを取る」と言うので、ではそうしましょう、と待っていたら、3歳の誕生日当日から彼は自分でトイレトレーニングを始め、翌日にはオムツが取れてしまった(自分で決めたことはやり遂げる。逆に、自分が納得しないと梃子でも動かない)。
その3:
幼稚園に上がる前、専業主婦の私と息子は、基本的にずっと一緒にいることになるのですが、一緒に居ると「××駅の発車メロディーを歌って?」というリクエストや「××の替え歌を歌って?」「こういう訳で、こういうシチュエーションになりました。で、今、くまモンは何て言ってる?(息子はくまモンが大好き)」ということを答えさせるリクエストがあって、ひとつ答えると次のリクエスト、次を答えるとまた次のリクエスト・・・というように、息子の「歌え」「答えろ」「考えろ」リクエストが休むことなく一日中続く、ということが、夫の居ない平日は毎日、それが1年以上続いた。
幼い頃の息子は、そういうエピソードのオンパレードでした。多動でもなく、暴力的になるでもなく、他人とコミュニケーションが取れない訳でもなく、だったのですが、あまりのこだわりの強さに
「普通」に出来てはいるけれど、ひょっとしてこれは、自閉症のケがあるということなのでは・・・?
と疑ったことが何度かありました。けれど、保健婦さんに相談をしてみると、これは個性のレベルで何の「問題」もないと言われるのです。
ここで思うのは、
では「普通」ってナニ?
「問題」ってナニ?
ひいては「発達障害」ってナニ?
ということなのですが、ここで思い出したことがまたひとつ。
以前通っていた小学校でのこと。息子の同級生のお母さまが、突然、意外なことを言い出しました。
ウチの子は、グレーだと思うんだよね。それも限りなく黒に近いグレー。
???
小学校受験の塾から一緒でしたので、そのお子さんのことを、私は本当に良く知っています。彼は、非常に利発で、活発で、とてもおもしろい。確かに「空気が読めない」こともありましたが、そんなことは男子にはありがちなことなので、お母さんの発言に
どうしてそんな風に思うのだろう・・・
と思ったものでしたが、発達障害ということが当てはまると思ったこともなかった自分の子供が「発達障害」と言われた今になってみれば、彼女の言い分にも納得がゆきます。
要するに
発達障害=ユニークな脳を持っている証拠
ということなのか・・・
ただ、そのことが分かったからといって、声チックや身体が動いてしまうことが治まる訳ではありません。前述のお医者さんに、
「こういう症状に良く効くサプリメントがあって、私はそのサンプルを持っているのでお渡しします。試してみたら如何でしょう」
と、或る錠剤を渡されました。
サプリと言っても、制度上食品であることになっているだけ。薬であることには変わりがないので、息子に飲ませるのは不安でしたが、あまりにダイナミックな身体の動きと、大音声の声チックを何とかするのが先決でしょう、と割り切って飲ませてみたのですが・・・
(つづく)