西野灯(浅見絵梨子)

好きな言葉は十万億土。 座右の銘は花紅柳緑。

西野灯(浅見絵梨子)

好きな言葉は十万億土。 座右の銘は花紅柳緑。

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薄闇の約束

 長野県伊那市現高遠町、旧長谷村をモデルにした小説を構想しています。  そのあたりの土地にご縁のある方にお話をお聞かせいただけることができましたら、大変幸いです。  連絡先:e.asami0523★gmail.com(★を@に変えてご送信ください)**  **  鬼さんこちら、手のなるほうへ。  姉妹のようによく遊び、可愛がってくれた母方の従姉は、やはりこれも血。ことに少女時代は、まあ気の強いこと強いこと。  雨戸の閉てられた子供部屋、明かりはついていない。くらがりの奥

    • 観劇記録『オノマリコフェス』(23.06.25)

      神奈川県立青少年センター、スタジオHIKARI。 耳慣れない名前に、はじめての場所と気をひきしめる。 ふたおやゆずりの方向音痴、劇団にいた頃は名物みたいに言われていた。●●●はぜったい逆の方向にいくよね、ここ前にも来たことあるでしょ。 制作さんは頼もしいスタッフのはずなのに、こと道案内においてはいちばん頼れないと、皆知っていた。ずいぶん甘えさせていただいていたと、思い返せばなにより申し訳なさが先に立つ。皆さん、お元気でおられるだろうか。 蒸し暑い空気につつまれた桜木町駅に降

      • 『Killer Queens!』観劇レビュー(22.10.16)

        稀に、物語を書く。 書くことは、勇気がいる。 読書家でも、文章の勉強をしたわけでもない。ずぶの素人、下手の横好き。書けば書くほどイメージから遠ざかるのがわかっているから、できるなら書かずに済ませたい。 それでも、何年も頭のすみに居座るひとがいる。書けませんよと何度言っても、頑固に押し黙ってそこにいる。 それで気の毒になって、書く。 だいたい十年にいっぺんくらい。 そんなありさまなので、作家と名乗るひとを尊敬する。 年に、月に、時には週に日に、言葉をもって世界を紡ぎ、あまつさ

        • 今年の春にエドヒガン種をはじめて現地で見て、全然、ぜんぜん違うなと思ったのと、いま咲かせるだけでその後につづかない桜の話を書こうとしているので、奥深いなと思います

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          【230/252】ふわり、ふうわり

          日は落ちていた。 真っ暗な外の様子を気にかけながら、こうこうと光る駅舎の中を歩く。 待つ。会う。顔を、かがやかせる。 スターバックスに入ったことは、今も昔もそんなにない。お洒落な場所に慣れてる彼女に、促されたのだったと思う。 季節柄、桜の味という商品がたくさんあった。もりもりとクリームが載ったそれをオーダーした。 うすらぼんやりした春のイメージが、舌の上で踊る。桜、さくら、サクラ。 なぜだろう、このことを考えるたび、その景色が目の裏に翻る。 もう十年以上前に見た景色。 どう

          【230/252】ふわり、ふうわり

          そんな男子は

          捨て置いてしまえ!!! と、思います。 それはそれで可愛くなくはないですが がんばって全部受け止めようとしてくださる方をもう知ってしまったので 捨て置いてしまえ、と、思ってしまいます。

          間の季節

          ブリキの馬が逃げてゆく おまつりの終わる夜が来た 火の輪くぐりのライオンが たてがみ燃やし街を焼く 重たい夜気が肌をふさぐ。まとわりつく熱を不快と感じない。 7月の夜は液体に似ている。闇がかたちをとり、視界の端でひそやかに蠢く。 なつかしい、と思う。 ヒトでもヒト以外でもない、架空の生きものをずっと慕わしく思っている。彼らに混じることができそうな気がするのが、おおよそ小暑から立秋までのみじかい期間。 混じって、戻って来られなくなればいいのに。若い頃はしばしばそう思った。ささ

          【240/252】あおむしくん

          仕事場に若者が合流した。 どうやらひと回り以上年下らしく、おののく。子どもの頃のビッグニュースといえば、地下鉄サリン事件と阪神淡路大震災だけれど、なんとその頃、生まれていない。つい、まじまじと見てしまう。 世代が違えば、常識はきっとぜんぜん違う。けれど、何でも素直に聞き入れ、気持ちの良い返事をしてくれる。けっして愛想がいいわけではないので、ますますその良さがきわだつ。おばちゃんは、いい子だいい子だと目尻を下げるばかり。 ちなみに絵描きの友だちに、少しだけ彼にまつわるエピソード

          【240/252】あおむしくん

          【243/252】便利屋稼業

          わけあって、知人友人のおうちをそうじさせていただく日々。修行なので、無料です。 今まで3件のご依頼に応えた。ふたりからは、次は絶対お金払うから知らせてねと言っていただいた。残るひとりのオーダーは、そうじではなく片付けで、一度で済まなかったから、月一回でしばらく通うこととなった。 反省は、山ほどある。けれど反応は、上々と思う。 いきなり主語の大きな話になってしまうけれど、結局のところ世界をどう捉えているか、の問題なのだと思う。 ひとはそれだけで、完璧と思う。どんなひとであって

          【243/252】便利屋稼業

          【244/252】新世界へ

          こんな夢を見た。 はやりの異世界転生もの、ではなくひと昔前のタイムスリップものだったのは、昭和生まれのゆえか。 詰襟すがたで、茫然とたたずむ。目の前は、焼け野原。ずっと信じていたひとは、神様でなく人間だった。ぼくは、これから一体どうすれば。言葉になった懊悩が脳裏をよぎるかよぎらないかで、時間を飛び越える。 着いたのはまさに今ここ、2021年。世の中は、何もかも失った昭和二十年の夏に負けず劣らず荒れていた。なにより、上に立つ人間の心が。 これはきっとぼくたちにも、責任がある。あ

          【244/252】新世界へ

          そらごらん レモンピールの やうな月だよ (21.07.15 唐梅)

          そらごらん レモンピールの やうな月だよ (21.07.15 唐梅)

          【247/252】いやしんぼうの時間

          その5分を、惜しむ。 家を出る時間から逆算する。ひとり暮らしも17年め。支度に、家事に、かかる時間は身体が知っている。それでそのとおり、ぎりぎりのぎりまで粘って、がばり。起きあがりざま、太ももを掴まれる。 毛むくじゃらの細い前脚、食い込む鋭い爪。げんなりとほっこり、複雑な感情に苦しむ。 おそらくこの夏で7歳くらい。飼い猫は深刻な甘ったれで、起きぬけと帰りざま、あとは気まぐれに飼い主にそばにいてほしがる。いないと深刻な剣幕で怒りをあらわすので、飼い主は負けず劣らずののしりなが

          【247/252】いやしんぼうの時間

          【248/252】桜のしらせ

          昨晩は、乱心。まったく、お恥ずかしい。 それでも穴があったら入りたいとか、穴を掘ってでも入りたいとか、思わなくなった不惑前。歳を重ねる効用に、思いを馳せる。 そうしてきっと、それだけでない。 noteの記事のタイトルは、だいたいいつも似たり寄ったり。なんとかのかんとか、がきっといちばん多い。京極夏彦氏の百鬼夜行シリーズを愛しているからだなと、ここにきて気づく。そのきまりからかけ離れたあれは、あたまより先に指先からこぼれた。 懐かしい。なのに、思い出せない。 涙でふやけた脳み

          【248/252】桜のしらせ

          【249/252】こまった、こまった

          どうやら、死んでしまいたい。 それは困る。 書き言葉に置きかえるのが、むつかしい。ひとつ正しておきたいのは、今すぐ刃を首すじに当てたいのでも、そう言って耳目をあつめたいのでもないということ。言って、ではないか。書いて、が正確。それはともかく。 変わりたい。変わった先も、見えている。なのに、ここから動きたくない。 自分を外から見たときに、これは駄目だと思うような人間でいたい。ぬるま湯につかったままでいたいという甘えも、無論ある。けれどそれ以上に、これ以上長居したくない足元を

          【249/252】こまった、こまった

          【250/252】紡ぐ体力のないまま

          置き換える気力のないまま、食らいつく。 今日このひと日だけで、とりどりのことを思った。 変化をおそれる気持ちについてだとか、変わろうと志したときに襲いくる業のことだとか。 書こうとすると、先に立つ。 生きるより表すが、優先。 そういうさだめだと諦めるのも、それが使命だと奮起するのも、どちらもゆるされている。 この世というところのふところは、あくまでも深い。

          【250/252】紡ぐ体力のないまま

          思い出すことなど

          「たぶん、由男に必要なのは、力と愛。」  母は言った。 「愛?」  たしかこの間、純子さんもそのようなことを言った。 「あんたは理屈っぽすぎるのよ。考えすぎなの。右往左往してタイミングをのがしてはすり減るだけ。どーん、とそこにいて、美しく圧倒的にぴかーっと光ってればいいの。愛っていうのは、甘い言葉でもなくって、理想でもなくて、そういう野生のありかたを言うの。」 ー吉本ばなな『アムリタ 上』

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