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白物の黒物化。バルミューダ以前、以降の家電デザインから見る「企業の決定プロセス」(推測)

タイトル画像:バルミューダ社のお洒落な真っ黒な電気ポット


東芝、日立、ナショナル(今はパナソニック)、シャープ、などなど。

日本は大きい「総合家電メーカー」がたくさんありました。世界だとフィリップスやゼネラル・エレクトロニクス。

そこでは、生活家電、AV機器、など、まさに生活の必需品から趣味性の高いものまで、何品目あるんだ!?という具合に展開。

白物家電・黒物家電

かつて、戦後日本の復興のイメージだった三種の神器。

洗濯機
冷蔵庫
白黒テレビ

これで生活が変わる!豊かになる!というイメージを引っ張ってくれたレジェンド家電たち。

そんな歴史も学べるパナソニックさんの「ものづくりイズム館」から写真を引用させていただきます(問題あったら下げますのでご連絡ください。)。


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画像:3つ連続で上から、古いブラウン管のテレビ、真っ白な1ドアの冷蔵庫、真っ白な洗濯機

今は当たり前ですが、これが全部そろってなかった家がたくさんあったわけです。

前の東京オリンピックまでは、本当にそんな世の中。

この中で、洗濯機、冷蔵庫。皆さんの色のイメージはなんでしょう?

かつては、電気釜なども含めて、いわゆる生活家電の色は白が主流。

それで白物家電、という名前が使われ始めました。

対して黒物とは。

豊かな生活の象徴として、いわゆるステレオプレーヤー。

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画像:家具のような巨大なオーディオ機器

流石にここまで古いとまだ高級家具の香りですね。もう少し時代を新しくすると、あった、こんなの。

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画像:世界のテレビ方式に対応した黒いデザインのビデオデッキ

ビデオやオーディオプレーヤー(ステレオコンポ、などと呼ばれてました)などが、黒いデザイン。

家事で使うもの→白
趣味で使うもの→黒

って感じでしょうか。

昔の事じゃない・・・結構続いていた

昔はそうだったんですよ!というまでもなく、最近までもこの白系・黒系の使い分けは結構されていました。

いまだに、わが家はオーブントースターと電子レンジと電気釜と洗濯機は白。

ビデオ系は黒、アンプとスピーカーは真っ黒、テレビも黒。

そこにバルミューダ

GetNaviさんの記事がいい具合に最初から説明してくれてます。

2003年スタート、最初はノートPC冷却台、その後、まさにカテゴリとしてなかった「高級扇風機」。これがヒット。

そして、世間を席捲した、例の「黒物オーブントースター」。

性能のとんがった部分はありますが、世間的にはそれプラスデザイン、というところも大きかったと思います。

なぜバルミューダが黒物生活家電を出せたのか?

それは、この会社のモノづくりの一つの特性。

マーケティングをしない。

社長自ら、使いたいもの、欲しいものを作る。

なぜそれが許されるかと言えば、社長が決めるから。

世間的には、商売にマーケティングは必須、と考えられています。

これは、なんでも当てはまるか、と言えば実はそうではない。「これまでにない画期的なものはマーケティングで見えない場合がある」のです。

マーケティングでしばしば使われる考え方は、世間での期待度。色々な調査や指標はあります。でも、これまで世の中に無かったサービスや製品について、世間に尋ねても誰も確固たる尺度を持ってません。なんせ、「見たことない」のです。

もちろん、何かの効果、というのは持ってますので、そういう一つ外側の尺度が使われますが、既にパラメータがはっきりしているものと異なり、精度は落ちます。

言い方を変えれば、信念・勘・思い込み・予測、といった定量的に測りにくい要素が重視されなければ、画期的新製品は出しにくいのです。

「高級な扇風機」が、それを出した時、世間で必要とされているかどうか、を高精度で自信を持って判断できる人はいないでしょう。

社長なら、それができるのです。

大企業でも社長はいるけど

本田宗一郎氏、松下幸之助氏、などカリスマ的な経営者はこれまでの日本でもたくさんいます。でも、今のホンダの社長、パナソニックの社長と全く違う点があります。

創始者かどうか。

ある意味、日本の大企業で長年経営を継続している会社は、もはや株主のもの。ある種の多数決的な考え方で動かざるを得ないところも。

また、出世という過酷なプロセスを経て社長になった人は、失敗が許されません。つまり、失敗しないこと、を選択してしまう場合もあります。

(ちなみに、ホンダもパナソニックも、そういう構造でありながらも、なかなか攻めた商品をしっかり出していて、すごいな、と)

つまり、「俺が欲しいからこれを作る」がなかなか通りにくいのです。

でも、なんで黒物生活家電が売れたの?

普通に考えれば、生活家電は割と普通の生活空間で「出しっぱなし商品」です。いつも目につくところ。

昨今の生活の中で、キッチンの位置づけも割とオシャレ方面の波が来ています。

いかに生活感を無くすか。

それには出しっぱなしにしておきたい商品を、統一感を持ってカッコよくすること。

それに便利なのは黒。

メーカー違いでも、黒という色は黒。

青、だと濃い青、薄い青、緑がかった青、など様々な色が考えられますが、真っ黒。RGBの指定なら、00、00、00にすれば、みんな同じ。

一個を黒にしたら、次に買うもので黒が選べたら黒にしよう、という考えは分かります。

さらに可処分時間とスタイルの変化

今は、専業主婦が3食を完璧に作ることが期待される時代ではありません。

ダブルワーク、子育てしながら、リモートワーク、フレキシブルな勤務時間。さらに、外食、配達、通販など、調達方法も多様に。

などなどもあり、キッキンもある意味一つの居場所に変化。

食を司る絶対的な場所じゃありません。

そうなれば、自分たちの生活を飾るための場所になる。

デザインはこうなると重要です。

でもそれは結果

それまで白いデザインで販売し続けていた会社が、いきなりこの事態に対して、一番手で黒を出すことは出来ないでしょう。

大手企業は多くの従業員を守る責任が半端なく大きく、失敗ができない。さらに、多数決型で選ばれたトップは、失敗で退場。

つまり、「継承」しか許されてないのです。そこに変化を入れるチャンスは「マーケティング」のみ。

すると、「誰かが出した黒い家電がバカ売れ」ということがなければいけなかったわけです。

必然的に二番手以降になりますが、それでも時流に乗ることはできます。

つまり、オーナー社長頑張れ

大手は、安くて性能の良いものを安定的に大量に作るのは上手。

逆に変化は苦手。

変化を起こせるのはベンチャーだけ、という構図です。本当は体力のある大手が、さまざまなチャレンジをすれば、ベンチャーよりもすごいことができる場合もあるのに、失敗を許さない風土が邪魔をしてます。

極めて日本的な構造。

と言いたいのですが、アップルもジョブス後、がどうなるか、は気になります。

いつの夜も世界中、やっぱり現状打破できるのは個人の思いになるのかなー。



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