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性欲を分解する。(「さよなら、俺たち」読書感想)

例の森発言を機に、2月は複数のフェミニズム、ジェンダー関連本に向き合った。

本を読み進める中で、色々思うところがあって、女性に対する言動を変えてみたり、男性としての意識行動変容を出来る限りやってみている。
しかし、しみついたジェンダー規範や行動を変えることはなかなか難しく、出来てない事もとても多く、反省の日々だったりする。

そんな中で、
清田隆之著「さよなら、俺たち」
(男性視点フェミニズムエッセイ集。)
を読んだ。

性欲について書かれた箇所で「性欲という便利な言葉に様々な欲求が含まれている」とあった。
これが、僕にとっては結構な衝撃というか、目から鱗だった!

思えば僕は30何年生きてるけれども、その半分以上の時期を、己の性欲と格闘していたように思う。止めどない欲望に支配され、いかに振り回されてきたことか。

以下、清田さんによる性欲分析を引用しつつ、自分なりの解釈を加えて、分析をより深めてみたいと思う。

——-

性欲には、セックスに対する欲求(仮にセックス欲とする)以外の欲求が、実は含まれている。
それは、性には関係がないが、性行為によって満たされる欲求。
接触欲”と“承認欲”だ。(名前は適当につけた)

接触欲は「他者に触れたい、触れられたいという欲求」である。人は他者と接触したいという欲を根本的に持っている。
これはまた別のエッセイからの引用だが、「高齢者が病気でもないのに病院に行く理由の一つは、お医者さんに体を触ってもらえるから」らしい。それだけ人は他者との接触を求めていると言える。

承認欲は「他者に認められたり、褒められたりしたい欲求」だ。友人との会話とか、仕事での成功とか、日々生きる中で様々な形で満たすことができる欲求であり、その最たる行為が、パートナーとの性行為だろうと思う。性行為によって自分という存在が全肯定される。

子どもが生まれるとセックスレスになるというのも、もしかしたら上記二つの欲求が“子育て”によって満たされることの裏返しなのではないかと思う。
(そして子育てに参加しない父親は解消されぬ性欲を満たすためセックスを求め、結果、夫婦不和となってしまったりする…。)

著者によれば、その他にも他者を思い通りにしたいとか様々な欲求が含まれているということなのだけど、僕としては、「性欲にはセックス欲以外に接触欲と承認欲が含まれている」とするのがシンプルでわかりやすくていいのではないかと思った。

——-


さて、男性の過剰な性欲によって、レイプ、セクハラ、買春、女性の性的搾取など様々な害がある世の中に僕たちは生きている。その解消のため、過剰な性欲を僕たち男性が抑えることが必要なのだとすれば、その方法のヒントがここにはあるのではないかと思った。

つまり、接触欲と承認欲を、何らかの方法で満たすことができれば、性欲と言われるものが“性的搾取構造なしに”抑制されるのではないか、ということだ。

事実、自分の生活を考えてみると、今恋人はいず、当然そういった行為はないのだけれど、接触欲と承認欲は十分満たされているなぁと感じている。

平日は保育士として働いているので、子どもたちを保育する中での身体的接触は必然的だ。
また、承認欲に関してもシェアハウスに住んでいるので、家に帰れば誰かがいて話をしたり、週末には何らかの会合があって、他者に褒められたりする機会も多い。

さらに、週末にはそのシェアハウスで子ども食堂を開いている。これは単に自分が楽しみたくてやっている活動だ。けれど、そのことで周りから「素晴らしいね」と褒められたり、寄付をいただいたり、利用者の喜びの声を聞いたりすると、具体的な他者の役に立っていると感じる。満たされている。おおげさに言えば自分が存在することを肯定してもらっている気がする。

極論、この「満たされている感じ」さえあれば、生きていける。他のこと(例えばお金とか)は必要最低限でよいな、とも思う。

逆に言うとこの「満たされている感じ」は生きるのに必須とも言える。誰かに必要とされ、存在を肯定される事は、人が生きる上で欠かせない、最も重要なことだ。

ちなみに性欲は「三大欲求」だけど、食欲と睡眠欲は生命を維持するために必要な欲なのに対して、性欲はそうではなく違和感があると、清田さん。
これも、上記のように性欲には承認欲が含まれていて「存在肯定」という背景があると考えると、三大欲求に含まれているのも、自然というか、納得できる感じがする。

そんな承認欲と、接触欲を満たす方法で、性的でなく最もシンプルな方法は、すでに書いたけれど、やっぱり「男性も育児に参加する」ということかなと思う。
それによるメリットはもちろん他にもあるけれど、赤ちゃんの育児をすることで、接触したり承認されたりして、広い意味で性欲が満たされ、過剰なセックス欲が抑えられる、ということは結構重要なのではないかと思ったりする。

これが、一旦の僕の結論。
男性の育児参加で、過剰な性欲はきっと抑えられる。そこに希望がある。

…でもちょっと待って。
じゃあいったい、育児環境にない男性は、どうすればいいの?となる。

正直言って、この問いには僕の中でまだ答えが出ていない。

存在が肯定されるようなグループに参加するとか、身体的接触を伴う活動(ダンスとか?)に参加するとか。
生活の中で、という視点で考えると、犬や猫などのペットがとてもよい役割を果たしてくれそうだ。
あるいは清田さんのアイディアを借りれば友人と「お茶をする」ことで、満たされる部分もありそう、とは思う。

うーん、しかし、どれもばっちりのアイディアとは言えない。

ここで、アンサーが浮かばないまま、ぼんやりと投稿を締め括るけれども、このことは今後も引き続き考えていきたいなと思う。

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