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「光の残像」現象を再現する(前編)

1985年4月17日、甲子園球場。
この日、野球中継は興奮していた。

「センターへ!!
 こーれもいくのか!こーれもいくのか!
 …こーれもいった!!」


バース、掛布、岡田が、続けざまにホームランを放ったのだ。

85年の阪神フィーバーを語るうえで欠かせない伝説の事件…いわゆる〝バックスクリーン3連発〟だ。

当時の映像を見て、私は衝撃を受けた。


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※筆者によるイラスト再現


この「光の残像」はなんだ?


勢いよく飛んでいくボールをカメラが追うと、スタジアムの照明が映りこむ。カメラはそのままボールを追い続ける。照明は一瞬で画面から外れてしまう。

ところが、その照明が放った光の残像が、画面にくっきりと残っているのだ。

同じ頃に放送された毎日放送の「夜はクネクネ」。角淳一さんと原田伸郎さんが関西各地を訪れ、そこで出会った〝一般人〟と雑談をしながら街を歩くという紀行バラエティ番組だ。

夜のシーン。出演者の2人を照らす明かりに、これまた光の残像がついて回る。

この現象が見られるのは、日本だけではない。アメリカで制作された「WE ARE THE WORLD」の舞台裏を取材したドキュメンタリーなどにも、同じような「光の残像」が見られる。

どうやら、この時代のカメラ特有の現象らしい。

◆◆◆

なぜ「光の残像」現象は起きるのか?

そんな発見から11年…
〝当時感〟を出すためには、この「光の残像」現象の再現は必要不可欠!この機会に、なぜこんな現象が起きていたのかを調べてみることにしました。

すると、YouTubeにこんな動画が。

そうそうそう!この現象です!!
どうしてこんなふうになるのか知りたいんです!

 この動画の説明欄を読むと、こんな文章が…

昔の撮像管式ビデオカメラにて撮影しました。

サツゾウカン…これが「光の残像」を生み出しているのでしょうか。

ところで撮像管ってナニ?

二次元の光学像を一次元(時系列)の電気信号に変換する電子管。二次元の被写体像を画素に分解して時系列に並べ換え、各画素の明暗を電気信号の大小に変換する。(『日本大百科全書』より)

つまり、カメラに入ってきた「光の信号」を「電気信号」に変える特殊な真空管のことのようです。

この撮像管が「光の残像」を発生させるのか? さらに調べを進めると、NHK放送技術研究所の刊行物に、こんな記述が…

ハイライトが入射すると、その部分に多量の電荷(正孔)が生成、増倍、蓄積され、膜の電子ビーム走査側の電位が著しく上昇する。1回の電子ビーム走査ではハイライト入射部に蓄積された多量の電荷を読み出すことができず、残像の一種であるコメットテール(移動する高輝度な被写体がすい星のように尾を引く現象)と呼ばれる偽信号が発生し、画質を著しく損なう。(NHK放送技術研究所『研究史'00~'09』より)

ふむ、、撮像管が「光の残像」を発生させる原因はこれ……っぽい。

そして「光の残像」現象は、「コメットテール」っていうんですね………勉強になりました。

しかし、わかったような、わからんような。。(8:2で分からない)

つまりはこういうこと?

他にもいろいろな資料を読んでみました。文系人間である私なりの解釈ですが、嚙み砕くとこういうことでしょうか?

●撮像管の中には光の信号を電気信号に変えるために、入ってきた光を受け止める部分がある。


●光を受け止める部分が、強い光を受け止めると過剰に反応してしまい、必要以上の電気信号を発してしまう。


●必要以上に発された電気信号を1度に読み取ることができず、光源が動いても1度で読み取れなかった〝余った電気信号〟を誤って読み取ってしまう。


「光の残像」が現れる


しかし、なんか違う気もする…専門家に聞いて正しく理解する必要が……

いや待てよ……

あの「光の残像」を、現代のソフトを使って再現するために、ここまでして原因を追究する必要はあるのか……


………。



努力の方向が間違っているのでは。。。



◆◆◆


ちなみに現在のカメラには、撮像管に取って代わる形で高性能のセンサーなどが搭載されています。技術の進歩によって現在では「光の残像」現象は見られなくなったそうです。

つまり、技術者のたゆまぬ研究努力の末、無くなった現象だったというわけです。その現象を再び再現させるというのですから、なんとも罰当たりな気もします。笑

◆◆◆

さて、「光の残像」現象のメカニズムがはっきりしたところで

早速再現してみましょう!


後編につづく)

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