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書評「バスケットボールの教科書4 指導者の哲学と美学」(鈴木 良和)

本書「バスケットボールの教科書」は、バスケットボールというスポーツを、「技術」「戦術と戦略」「チームマネジメント」「指導者の美学と哲学」という4冊に分けて、バスケットボールというスポーツを改めて定義し直した書籍シリーズで、本書は「指導者の美学と哲学」について定義した書籍です。

指導者の美学と哲学が現れる「どう勝つか」

2012年シーズン途中から2016年シーズンまで川崎フロンターレの監督を務め、2017年から名古屋グランパスの監督を務める風間八宏さんは、常々「どう勝つか」「どう勝つことを目指すチームなのか」を繰り返し語っていました。

ただ相手に勝つのではなく、どう相手に勝つのか。風間さんは「どう」のところがチーム作りで大切で、この「どう」のところを疎かにすると、チームは簡単に崩壊してしまう事を、繰り返し語っていました。

本書で定義している「指導者の美学と哲学」とは、まさに「どう勝つか」の「どう」の部分の話です。

指導者に与えられている「聖なる任務」

「バスケットボールの教科書」シリーズには、60年代から70年代にかけてUCLAを10回にわたり全米チャンピオンに導くという大記録を打ち立てた名コーチ、ジョン・ウッデンの言葉が度々登場します。

ジョン・ウッデンの言葉はアメリカでは、バスケットボールだけでなく、広く多くの人に親しまれているのですが、ジョン・ウッデンの言葉を借りると、指導者は「聖なる任務」が与えられているそうです。

指導者に与えられている「聖なる任務」として、ジョン・ウッデンは以下の3点を挙げています。

1.人格を磨くこと
2.建設的なものの考え方と価値観を教えること
3.模範を示すこと

この「聖なる任務」を踏まえ、著者は「指導者は、技術や戦術の指導だけでは、役割を果たしたとはいえない。」「指導者は選手の人生に触れている」と、本書の中で記しています。

指導者は聖なる任務を遂行する立場にあるというだけの人間であり、聖なる任務を遂行するためには、まず自身が模範を示すことが大切であるということは、「バスケットボールの教科書」シリーズを通じて発信されているメッセージです。

スポーツの本質的な意義が問われている今だからこそ読んで欲しい書籍

先日、アメリカンフットボールの関西学院大と日本大の定期戦で、関学大の選手が日大の選手に反則タックルをされて負傷するという出来事が起こりました。

タックルが明らかに相手選手を傷つける目的で行われたように見えたという映像のインパクトだけでなく、選手に対して実行を指示したとされる、監督とコーチの発言や姿勢も問題視されました。さらに、日頃から「潰せ」「殺せ」といった言葉で試合前にモチベーションを高める、スポーツの現場の取り組みに対しても問題視する声を目にしました。

本書の「おわりに」にて、著者はスポーツの本質的な意義について、「なりうる最高の自分を目指すことこそがスポーツの本質的な意義」と記しています。

スポーツの本質的な意義が問われるようなニュースが世間を賑わしていますが、そんな時だからこそ、スポーツの本質的な意義について考える良い機会だと思いますし、「バスケットボールの教科書」シリーズは、バスケットボールだけでなく、スポーツの本質的な意義について、分かりやすく教えてくれる書籍です。4巻すべて学び多き書籍です。ぜひ手にとってみてください。

成功の定義とは

書評の終わりとして、ジョン・ウッデンが語る「成功の定義」について、書いておきます。

「成功とは、なりうる最高の自分になるためにベストを尽くしたと自覚し満足することによって得られる心の平和なのである」

Success is peace of mind which is a direct result of self-satisfaction in knowing you did your best to become the best you are capable of becoming.

バスケットボールの教科書4 指導者の哲学と美学

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