2019年夏、浜通り取材 緑の放射線管理区域を歩く
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「熱中症になる」といろんな人から言われつつも強行した真夏の浜通り取材。うだるような暑さの中、最初の目的地にしていた諏訪神社は思ったより近く、あっさりたどり着いた。
(「文化財愛護シンボルマーク」か…)
由緒ある諏訪神社。
避難指示が解除され、放置されていた神社仏閣が建て替えられ、再生する。震災前に行われていた祭り等が再開する。復興の象徴のようにそういった様子がニュースなどで伝えられるが、その祭りに参加している人たちは帰還したわけではなく、実は避難先から駆けつけてきていたりする。少しでも前に進みたい、そんな想いの一心で参加しているが、そんな内面まで捉えてくれるのはNHKのドキュメンタリーくらいだ。大抵は、未だ帰還困難区域が存在することも忘れて「復興しました!」というアピールのためだけに消費されていく。
工事は平成31年8月31日までだそうだ。つまりレイク(令◯とは書きたくない)元年8月31日まで。今頃、工事も終了し、避難指示解除後最初のイベントをいつにするか、関係者は考えているだろう。
鬱蒼とした境内にあるトラックでは、昼休み中の作業員がトラックの中で休んでいた。いきなり歩いて現れた僕に驚いたかもしれない。
普段は週末に取材をするが、この日は平日だ。平日の取材は好きではない。浜通りには全国から様々な人たちが仕事を求めてやってきており、中には素性不明の人物もいる。ガラの悪い人物と遭遇したことも何度かある。
見辛いけど0.49μSv/h。境内の空間線量は比較的低めだ(と言っても首都圏の10倍以上だが)。これが除染効果か。
諏訪神社は建て替えられたかもしれないが、同じ富岡町の王塚神社は取り壊されて跡形もない。神主の考えひとつで対応が違うのだろうか。何にせよ、これも原発事故が生み出した分断のひとつ。
考え事をしながら歩き出す。写真は曇りだが、とにかく暑かった。
道の脇には猪が掘り返した跡。富岡では昼の2時から猪と遭遇したことがあり、一瞬身構える。
(新しい家だが廃墟)
森林浴といきたいところだが、森の中は線量が高い。
よくSNSでは「1とか2μSv/hで健康被害が出るのかよ?」なんて煽ったりする輩がいるが、まず自分で現場を歩いて体感してから言って欲しい。年に数回訪れる程度の僕なら大して影響はないだろうが、ここは避難指示が解除され、赤ん坊も暮らせる場所なのだ。放射線管理区域レベル(約0.6μSv/h以上)の場所で赤子を育てることができる異常さを感じてから言って欲しい。
案の定空間線量が上がってきた。
僕はいつもガイガーカウンターを、放射線を感知したら音がなる設定にしている。0.3以上とかではなく、感知すれば常に鳴るようにしている。自分が住む地域ではこれを持って歩いてもそんなに音は鳴らない。しかし双葉郡に来ると、その音は明らかに違う。鳴りっぱなしだ。線源があちこちにあることを示している。
紫陽花は綺麗だけど、汚染されている。
この「汚染」という言葉の扱いは、僕は避難者の前では注意するようにしている。
1を超えた。
僕は基本的に1を超えたらマスクをするようにしているが、この日は違った。とにかく暑くて、マスクなんか絶対したくなかった。
ところどころ旧道と見られる道があり、興味をそそられた。暑くないときに行ってみたい(笑
ここもかつては家があっただろうに。一部の人々は、これさえも「風評」と呼ぶのだろう。
震災前は田んぼか畑か。今は荒れ果てている。グーグルマップを見る限り、フレコン置き場だった可能性もある。
(1.14μSv/h。この日はこの数値が最高だった)
(「なれた道気持ちゆるめばこわい道」今は違う意味で怖い道)
館山天満宮。
小さい社だが由緒ある場所。しかしここも汚染された。
今はここを訪れる人は年にどれくらいいるのだろう。貴重な文化財もことごとく汚染され、寂しく佇む。
ここはかつて田んぼだっただろうか。
富岡では海寄りの場所で稲作が始まっていた。試験栽培はもう終わったと聞いているので、おそらくあれは市場に出荷されるだろう。農家の人たちの努力により、基準値を超えるようなセシウムは検出されていない。しかしゼロではない。食べるか食べないかはそれぞれの個人の選択だ。誰からも押し付けられる謂れはない。
個人で消費する量ではない。市場に流通する野菜だろうか。
国や県、自治体は風評を強調し消費者と生産者の対立を煽る。しかしこれはあくまでも東京電力福島第一原発事故によって放出された放射性物質による実害で、賠償はきちんと為されなければならない。
さて、澄んだ富岡川を横目に見ながら、次の目的地を目指そう。なかなか渋い橋だ…
そういえば、ある御用芸人が「福島の子供達は外でも元気に遊んでます」と発言して話題になっているが、少なくとも僕は、富岡や浪江で子供たちだけで遊んでいるのを見たことはない。「福島のことなんて何も知らねえじゃねえかよ!」と言い返してやろうか(聞く耳もたないだろうけど)。
<続く>
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