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2020年3月福島取材⑳/放置されたフレコンバッグ

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スクリーンショット 2020-06-16 15.19.00

かつては田んぼだった場所は水浸しだった。前日雨は降ったが、そんなにたくさん降ってはいないはずだ。にも関わらずこの状態とは…フレコンバッグの数もほとんど減ってない。

この田んぼの持ち主だったおじさんとここで出会ったのはおととし12月。100mほどに渡って続く高線量地帯である雑木林の前を歩きながら、あのおじさんは今どうしてるのかと考えた。あの時はここで毎時3.93μSvまで上がった。今回も、手元の線量計は広範囲に渡って毎時2〜3μSvの数字を表示していた。しかし、前日大野駅周辺で毎時6.41μSvを経験してしまったので、どうにも感覚が麻痺している。この程度ではなんとも思わなくなっている自分がいる。

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もしかするとここは、昨年10月の台風で水浸しになってそのままなのかもしれない。

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生い茂る雑草が放置っぷりを物語る。向こうに見える重機も、放棄されたかのようだ。

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帰還困難区域の奥深くに移動し隠すと聞いていたが、隠すことさえ出来なかったか。

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ろくに管理もされていないかのようだ。環境省が無能ということなのか。

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昨年4月に移動すると聞いていたフレコンバッグの山は、ほとんどが残されたまま。あの話は何だったのか。フレコン置き場は水浸しで、雑草が生い茂り、長期にわたって放置されていたことが見て取れる。どういうことだ。シートを被ったままのフレコンバッグはともかく、むき出しになったものもそのまま。なんていい加減な管理状態なのか。昨年10月の台風で水浸しになり中断したのかと思ったが、その半年前の4月にはもう移動が始まっていたはずだ。にも関わらず、あの時とフレコンバッグの数はほとんど変わっていなかった。

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ここにあった美容室も解体されてしまった。

福島に限らず、東北一帯で、東京五輪に人手が取られ復興が遅れていると聞く。もし僕がここを見た昨年4月からほとんどフレコンバッグの移動が進んでないのだとすれば、これも五輪の影響を受けた“復興”の遅れかもしれない。聖火リレーで一時的に人が集まるため、見えないところへ隠そうとしていたはずだが、そんな“復興演出作業”でさえも追いつかなくなっているのか。常磐線ではあんなに急いだくせに。

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フレコン置き場の脇の帰還困難区域ゲートには、8時を過ぎても警備員は来なかった。9時から勤務なのか日曜だからいないのか知らないが、話を聞きたかった。一体、移動の話はどうなってしまったのだろう?

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耐用年数3年のフレコンバッグを突き破り、雑草がはみ出ている。ダダ漏れじゃないのか。

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向こうに見える家は帰還困難区域だ。かつて住んでた人たちは、どんな思いで見つめるのだろう。

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空は青く、山も綺麗だが…

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釈然としない気持ちのまま何枚も撮影を繰り返した。

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10:14夜ノ森駅発の下り電車に乗るべく、夜ノ森へ向かうことにする。この時間を逃すと、次の下り普通列車は13時まで来ない。

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本当に水浸しだ。

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ここにも警備員はまだ来ない。9時以降にならないと来ないのだろうか。考えてみたら、過去2回この場所に来た時は、どちらも午後だった。こんな早い時間にここに来たのは初めてだ。

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この斎場もおととし目にしてから、今になっても解体されることはない。再利用するのだろうか。

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夜ノ森駅へ向かって歩く。この辺りの線量はおおよそ毎時0.3〜1.0μSv。SNSで誰かが「富岡町はほとんどの場所で毎時0.07μSv程度」と本気なのか嘘なのか「デマ」を書き、それが「まとめサイト」にまとめられ拡散する。富岡でそんな低線量の場所は、富岡駅の周辺、数百メートルに限られている。富岡駅に降り立ち、そこで1枚写真を撮っただけの誰かの写真が拡散する。現地に行ったこともなく行く気もない人々が、己のイデオロギーのために「デマ」を拡散する。それによって、かつてそこに住んでいた人や、帰還した人、移住した人たちにどれだけの迷惑がかかるだろう。「まだ福島は復興していない」そう口にするだけで、「復興すると困る人」「福島県民を不幸にしたい人」「デマ屋」のレッテルが貼られる。現実をしっかり見つめ、「なかったこと」にすることなく声を上げていくことの何が問題なのだろうか。

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あの川の側へ行ってみたい。線量は高いかもしれないが、ここからでも透き通った水が見える。

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ふたば医療センター付属病院からドクターヘリが飛ぶ。

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(美しい山並み)

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何度か歩き、慣れてしまった道では、あれこれと想いが浮かぶ。そんな中から何か作品のヒントが浮かべばいいのだが、なかなかそううまくはいかない。美しい山並みを見ながら歩いていると、輪行と思しき自転車乗りが、スーッと横を走り抜けて行った。富岡町では何度かチャリストを見かけているが、これからはそういう人も増えるだろう。

<続く>

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