16ヶ月連続の倒産件数急増 〜最多倒産の飲食店経営の厳しい現状と戦略〜
ゼロゼロ融資の返済難含め、倒産が増えています。
こうした倒産増で気になるのは、「業種別」で、最多は飲食業です。
飲食業倒産の85.8%は中小企業です。
「廃業」をデータに含めば、飲食業界は、現在でも大逆風です。
飲食業界の1年以内の廃業·倒産は、40%にもなります。
この記事に「コロナ禍での来店客の減少に加え、食材や光熱費高騰の負担も重い飲食業」
とありますが、間違っています。
「来店客の減少」について、こうしたデータがあります。
つまり、ニューヨークやシンガポールに比べて、日本は飲食店の数が4.7倍です。
簡単に言うと、飲食店が多すぎます。
当然、倒産件数も多くなります。
当方は、飲食店の発展は、日本固有の世界に類を見ない食文化として否定しているのではありません。
しかしながら、日本人の収入は、30年間増えていないのですから、エンゲル係数(食費)から言うと、飲食店数が多いことは、異常な競争状態なのです。
ニューヨークやシンガポールの平均年収は、日本より3倍以上高い。
そして、これらの大都市では、資産家が多く、リッチ層もずば抜けて多い。
そうすると、ますます日本の7店(人口1,000人当たり)は、過剰だと理解出来ます。
だからこそ、こうした一般的な記事のように、単純に「コロナ禍による客数減」とすべきではありません。
「食材や光熱費高騰の負担」についても、全ての飲食店に共通の問題であり、個別の倒産の原因とするのも無理があります。
一般に言われているような、こうした分析(記事)は、飲食店経営の役には立たないのです。
当方の飲食店経営の専門のコンサルティング実績から言うと、全く観察・分析・判断が違ってきます。
今回は、重要な2つの視点に絞って、少し論評します。
1つ目、「飲食店の数が多すぎる」件。
どんな事業であっても、事業を始めるときに、競争の少ない分野を狙うことは、基本の戦略でしょう。
飲食店という大きな括りとしては、参入障壁が高いことは事実です。
そうすると、飲食店の中で、①市場としては魅力があり、②競争の厳しく無い業態、を選ぶことが大切です。
そこが間違っていると、3年以内の倒産や廃業となります。
たとえば、これから自動車メーカーや鉄鋼業を創業する人はいないはずです。
その理由は明快で、すでに成熟している産業だからです。
産業の成熟化というのは、当該産業で数社しか生き残らないことを意味します。
飲食店というのは、脱サラも多く、「包丁が上手く使える」という理由での起業も多い。
あるいは、他の産業で成功しているので、会社としての副業でやるというのもよく見かけます。
これは、何を意味しているかというと、「誰でも出来そう」な商売ということに過ぎません。
「誰でも出来る」(=参入障壁が低い)ことは、事業としての成功確率は、低くなるに決まっています。
一般的に、新規の事業戦略として、「誰にも出来ない」「誰も真似できない」ことに参入することは大切な要件です。
これを差別化戦略と言います。
世界の大都市の7倍も飲食店数が多いのですから、日本での飲食店の起業で、差別化は必須と言えるのです。
しかし、市場としての見込みのない分野・業態では、差別化しても成功確率は下がります。
2つ目に、「人員確保困難」の件。
人員確保は、労働環境と給与の問題です。
一言でいえと言われれば、「生産性の向上」です。
1人当たりの利益・売上を増やすことです。
それしか、処遇(環境と給与)を向上させる手段はありません。
食材や燃料費高騰の物価高騰ならば、尚更、重要となる対策です。
当方のコンサルティング経験からいうと、真に生産性向上を目標としている企業は限られています。
「いや、ウチは稼働計画を切り詰めています」といったところで、生産性は上がりません。
むしろ、売り上げが下がり続けて、生産性は上がらないという悪循環になります。
小さな飲食店は、人件費がタダの家族経営が多く見かけられます。
あるべき給与を支払うという前提でなければ、結局は長続きは出来ません。
激烈な飲食業界で生き残り、勝ち続けるとはそういうことです。
以上、この2つの視点が、現代の倒産激増の真因です。
ここからは、今後の予測に過ぎませんが。
今年冬から来年にかけて、「金融危機」の可能性(80%か)が高まっています。
現在の倒産増は、始まりに過ぎません。
借換保証制度もスタートしますが、どこまで有効かは不透明です。
給与も上がらない、増税(現在62.5%)する経済は疲弊すれば、外食比率は更に下がり続けます。
尚且つ、1929年の恐慌並みの失業率ならば、(米国・英国などと同様に)25%になることも完全には否定は出来ません。
そうすると、脱サラ・解雇による飲食店経営も増えるでしょう。
大不況での起業は、さらに厳しい参入障壁となることは明らかです。
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