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話してくれるから、離せる。

私の友達が遊びにくる。ムスメには食事の時は一緒に座りなさいと言ってあるので、部屋から出てくる。並んで座ってぺちゃくちゃとしゃべるムスメとワタシの会話をおもしろそうな顔で聞きながら、向かい側の友達が言った。

「おもしろいー、かわいいー」
「表情とかしぐさとかしゃべり方とか、そっくり〜」
「お客様がきた時に、うちの子達がこんなふうに一緒に座って会話するなんて、想像できない」

ついこの前も、水泳クラブの先輩ママに似たようなことを言われたっけ。

「大人相手に物おじせずに普通に話せてるよね。いいねぇ。」

言われてみれば確かに。ムスメの友達に話しかけるとこうはいかない。愛想笑いとともに丁寧に返事はするけれど、そこから会話が続くということにはならない。ワタシの英語のせいかとうっすら思っていたけれど、そういうわけはないようだ。

うちのは二人ともよく私に話してくれる。とはいっても、なんでもかんでも話してくれているとは思ってはいない。私も母に色々話したけれど、あたり構わずなんでもというわけじゃなかったし、母親にそんなことまで話すなんて親しい友達がいないのかってことになるから、それはそれで問題だからそれでいい。

ムスコのルームメートの一人がまだ童貞で、なんとかイタリア旅行先で機会を作ってあげようと画策してるんだよって言うから、ワハハうまくいくといいねーって話してたの、と友達に言ったら、「え、そんなことまで話してくれるの?!」とかなり驚かれた。

ウチの子供たちがなんでも話してくれるのは、先生や授業への不満でも友達の悪口でも「そんなことを言うもんじゃありません」とたしなめたことがまずないからだろう。大声で言ってはいけないことだと、そんなことは子供たちはわかってる。でも言わずにはいられない。相手が親である私だから安心して話してくれているのである。どんなくだらない話でも、勉強の習慣が身についてからは「そんなこと言ってるヒマがあったら勉強しなさい」と相手にしなかったこともない。私は膝をテーブルを車のハンドルをばんばん叩いてケタケタと笑う。教科書通りの反応をしたら、これだから嫌だ、話すだけムダ、と思われて当然だろう。

ちょっと過激な発言をして、私の反応をみてどうすべきかを判断している時もある。そういう時は「それはダメ」ときっぱり言う。いいとダメの境界線をしっかりと線引きしてあげるのは親の役目だ。そして、最近は、私の発言にムスメが「ママ、それはやりすぎ」ということの方が多くなってきたからおもしろい。家の外の社会にまみれて、時代遅れになりがちな、アメリカ現代文化現象を理解しづらい私に教えてくれるようになった。

そういう時、あぁ、またもう少し手放しても大丈夫だな、と思う。

大人と対等に話ができるのは、一人の人間として自信がついてきている証拠だ。

学校や水泳クラブでよく親がボランティアで食事会やイベントの手伝いをすることがあるのだが、そういう時クルクルとよく気がついて立ち回るママたちの中で、私は何をしたらいいのかわからず、I feel useless. と感じることが多くなってきた。気がきかないタイプじゃないのになんで?

この前の水泳大会の遠征の時、食事を親が取りまとめてホテルに配達してもらい、大きなテーブルでチームが揃って食べたのだが、これでもかこれでもかというくらい他の親は気が利いて、高校生の子供たちの世話をしていた。ある朝、ムスメがホテルの外のお店から注文したソーセージがベーコンに代わっていた。「間違ったみたい」と私が言うと、注文してくれたママが「ホテルのビュッフェはまだ始まってないけど、そっと入り込めばソーセージあったはずだからもらってくればいい」と言った。「まぁいいです、気にしないで」と聞き流した。ママは私がわからないのかと思ったらしく何度か同じことを言う。別にベーコンでもいいかもしれないし、と、ムスメが来たら聞いてみればいいと放っておいたら、そのママはムスメのために5本ソーセージを皿にとって持ってきてくれたのである。

あとでムスメに話すと「他のママたち、水ボトルの蓋まで開けてあげてたよ」えっ......。「大体さビュッフェ式の食事会の時だって、なんでボランティアの親たちがよそってくれるのかわからないんだよね。自分でやった方が食べたい量も調整できるのに」.....ほんとだよ、うん、私もそう思う。「Lizzyの部屋でお昼寝したじゃん?起きたら、私の水筒にちゃんと水が補充されてた」ヒェぇぇぇ。なんで?なんでそんなことしてあげる必要があるの?16歳だよ?

もう10年以上も水泳やってて、いつなにが必要かもわかってるのに、 遠征でホテルに着いたらswim bagを忘れた子がいる。プールに着いたらレース用の水着を忘れたことに気づく子。レース前に音楽を聞いて準備するのに、Airpodsを忘れた子。高校生が、である。

「わかったんだよ。母親がなんでもやってあげてるから、連中しょっちゅう忘れ物したりモノ失くしたりするんだわ。私、そういうことないでしょう?」.....ないねぇ、Natural Consequenceで躾けてきたからねぇ。お弁当忘れても持っていってあげなかったものねぇ、ママは。

ムスメがなんでも一人でできるから、ボランティアで何をしたらいいのか私にはわからなくなってしまったということらしい。

話してくれるから、何を考えているのか何ができるのか何をしたいのかがわかる。自立の度合いが測れる。だから、手を離せる。

ご苦労様、ワタシ。






ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。