見出し画像

女子高校生。“Taylor’s Version”で殺意満載。

ムスメはTaylor Swiftのファン("Swiftie")である。高校生大学生の年齢層は「信仰的」なファンと「まぁ聴くね」程度に分かれるらしいが、ムスメ曰く「Breakup song(別れた時の歌)」といえば、Taylor Swift、なのだそうだ。彼女はカントリーソングも好きなので、これまでに車の中でいろんなのを聴かされてきたけれど、カントリーソングのプレイリストも聞き飽きたある日、

”Mom, what do you want to listen?"
"Hmmmmm.....maybe Taylor Swift?"
"You LIKE Taylor Swift?!" 

いや「大好き」って言うほどじゃないけれど、今ちょと聴いてもいいかな、と答えたら、ぱぁっと表情が明るくなり、その日からTaylor Swiftをしょっちゅう聴くようになった。

Taylor Swiftが、昔のアルバムを全て今リメイクしている。20代に歌った曲を30代に入った彼女が全て歌い直す。声が成熟しているのがわかり、見事な素晴らしい企画だと思う。そして、当時レコードプロデューサーが承知しなかったことを、今は歌の「著作権」が彼女に戻ったので、Taylor's Versionとして彼女が歌いたかったように歌っている。

その焦点が、"All Too Well"という一曲。

2012年のアルバム"Red"に収録されているオリジナルは5分。これも"Red (Taylor's Version)"の中で歌い直しているが、それとは別に10分のバージョンが発表された。もともと、この"All Too Well"は、当事者本人は公に認めてはいないが、当時Taylorが3ヶ月ほど付き合っていたJake Gyllenhaalとの別れを歌ったものというのが、世の中の理解。この10分バージョンで、二人の別れに至る過程がさらに説明された。

彼女が彼の妹の家に招待された時にしていったスカーフ。別れた後、彼女の所持品は送り返されてきたというのに、スカーフだけは戻ってこない。ググると、彼がその同じスカーフをしている写真が出てくる。20歳のTaylorが29歳のJakeと付き合い、彼と同じ年齢層の彼の友達との会話についていけない。10年後の今も、彼はあの時の私と同じ年の子と付き合っている..........。

ムスメの解釈によれば、Taylorが初めて体の関係を持ったのがJakeで、その「記念」にスカーフを盗んで返さないのだ、という。それじゃまるで殺人鬼が、殺した相手の所持品を記念品としてキープするのと同じ?!

そして、彼女の21歳の誕生日パーティにJakeはこない。彼が現れるのを待って、入り口に視線を送り続けるTaylor。「何かあったの?」と声をかける一人の女優。バスルームで泣くTaylor.....。

女子高校生大学生をはじめとする若い娘たちは激怒、憤怒。ボーイフレンドに聴かせ事情背景を説明し、反応次第では彼もその場で捨てられるか、その場で婚約発表という緊張感がTikTokで連発。コメント欄も爆発。「スカーフを返せ!」と連呼。

この10分バージョンとともに、Taylor自身が監督した短い映画まで発表された。3.5M Likes, 0 Dislike.......1日で100,000 Likes増加。YouTubeでDislikeがゼロなんて見たことない....。

歌のシーンが、映像になってるわけだから、若い娘たちの怒りはさらに倍増する。Jake Gyllenhaalへの殺意満載である。

「でもさ、ママがこういうこと言うと、アンタいっつも怒るけど、これってTaylorの言い分だけだよね」
彼女にしてはめずらしく、うなづいた。
「でも、彼が返せる言葉なんてないでしょう?」
「ま、そりゃそうだ」

水泳仲間は皆Taylorのファン。アルバムが発表されて以来、話題はこれで持ちきりである。「....もう10年前のことなんだろう?いい加減にしろよ〜」と一人の男子が漏らしたら、女子軍がきぃっと反応する前にコーチがなだめた。

「おい、そんなこというと、着替えとか隠されて捨てられて、お前、素っ裸で帰るハメになるぞ!Taylor Swiftファン、多いぞ〜。」

我が家から練習先のプールまで車で10分。行きと帰りにムスメが運転するときに"All Too Well"を聴きながら、ムスメは、Taylorへの愛とJakeへの憎しみを込めて、酔いしれたように歌う。

"Mom, you have to start sing along, too!!"

私も歌えってか?......。英語の歌詞覚えるの苦手なんですけど。今日、この記事を書くので、歌詞を検索。なんで私はこんなにマジメなんだろう。

そしたら、今度は"Sad Girl Autumn"バージョンも出たという。

"Mom!! We will listen to it when driving to swim today!!"

あい。


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。