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呼吸について、専門的な話をしましょう

呼吸の中枢

 自分の意思により、コントロールできるか否かは、それが大脳皮質(脳)の支配下にあるのか否かに依存します。 

 呼吸は通常、無意識化で行われます。しかし、意識的に変化させることもできます。
 呼吸中枢は、「延髄の頸動脈小体・大動脈小体・肺胞の伸展受容器」にありながら、大脳皮質の制御も受けており、怒りや悲しみ、焦りや落ち着きなどの感情により変化させることもできるということです。

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運動時の呼吸

 運動を開始すると、骨格筋が収縮します。そして、筋肉や関節が刺激されます。それにより、筋紡錘・ゴルジ腱器官などの固有受容器から脊髄や脳に指令を送ります。その指令が、呼吸中枢に届くと呼吸運動を増強するようになります。結果的に換気(呼吸)が亢進します。(力学的・機械的情報からの反応
 
 運動強度が増強すると、筋肉内で乳酸の産出が増加します。そして、血中の乳酸濃度が増加すると、乳酸は酸性物質ですので、体内のpHが低下します(乳酸性アシドーシス)。その結果、pHを元に戻す為に(体内は、pH7.4で弱塩基性で保たれている)乳酸緩衝による二酸化炭素を産出量を増加させ、換気(呼吸)が亢進します。(化学的受容器からの反応)。

運動をすると、呼吸は亢進する。それは力学的・化学的な情報からの反応である

(外)呼吸=肺でのガス交換

 呼吸は、外気と血液の間で、酸素を取り入れ二酸化炭素を放出することです。そしてそれは、肺で行われます。

 肺循環とは、全身の静脈血→右心房→右心室→肺→左心房までの間をいいます、この間の所要時間は4〜6秒です。安静時のガス交換は、肺の中央1/3の範囲でしか行われておりません。しかし、運動時には、肺循環血流量は約5倍に増加する為、ガス交換に使用される肺の範囲が拡大します。さらに、換気数(呼吸数)を増加させ、二酸化炭素を排出することで、血中のpHを一定に保とうとします。

 外気から取り込んだ酸素は、赤血球の中に存在するヘモグロビンと言うタンパク質と結合し全身を循環し、酸素を必要とする細胞があれば、ヘモグロビンから解離し、その細胞の中でATP産生に働きます。(酸化機構)
 

 ヘモグロビンは酸素分圧が高い(酸素濃度が高い)肺などでは、酸素を放出しにくく、酸素分圧の低い末梢組織では、酸素を放出しやすいという特徴があります。その関係を表したものが、酸素解離曲線です⬇️。

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 運動により、この曲線は、右側に移動します。つまり、「酸素分圧が高くても酸素を放出しやすい=酸素供給しやすい」状態となります。これをボーア効果といいます。逆を言うと、「酸素とくっつきにくい」ことを意味します。

頻脈と徐脈

 呼吸は、心臓にも影響します。呼吸数は心拍数と相関します。

心拍数の増加(頻脈)は、心臓の拡張期の短縮が生じます。
これは、左心室血流充満量の減少→一回拍出量の減少→心拍出量(一回拍出量×1分間の呼吸数)の減少
→脳の虚血や倦怠感、息切れ
→心臓の栄養血管である冠動脈の血流量減少、心筋虚血、不整脈や胸痛が生じる
これらの影響により、運動継続困難となる。

心拍数の減少(徐脈)は、全身に必要とされる量の血液を拍出できず、めまい・失神の発生リスクあります。

結論

呼吸は単純そうで複雑です。つかみどころの無いものです。まるで空気みたい。