シン・セールス理論の完全解説|ニューノーマルで選ばれる、購買体験とセールスコンテンツ
<ご挨拶>
本作品は、コロナ禍における企業の顧客開拓において、弊社の研究が少しでも役に立てば…という想いで執筆しました。大変長い作品ですので、シン・セールス理論の提唱について結論を急ぐ方は第3章以降をご覧ください。
※しっかり理解しようとすると2時間以上かかります。
最下部ではシン・セールス理論の解説ウェビナー(無料)のご案内もしていますので、是非ご活用ください!
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コロナウイルスにより、私たちをとりまくビジネスの前提は大きく変わりました。これまでの あたりまえ はニューノーマルではむしろイレギュラーで、2020年7月末段階ではまだこのパンデミックの出口は見えていません。
それは勿論、セールスと購買という視点でも同様です。
いわゆるコロナショック、不要不急という世界情勢に加え、風評や自粛により 今すぐ購買する意思決定にブレーキ がかかります。
営業においては、「対面訪問の配慮」「顧客が会社に出勤しない」等の理由で、商談機会が作れずに苦戦している企業が増えています。
いずれにせよ、購買・営業の前提は変わりました。
この新しい時代を生き抜くためには、新しいセールスモデルが必要です。
そこで本作では、ニューノーマル時代に営業成果を出すための新しいセールス理論(シン・セールス理論)をご紹介します。
なおシン・セールス理論の研究に至っては、
■ セレブリックスの自社の顧客開拓活動
■ 50案件を超える営業代行での実績と実証実験の記録
■ セールス関連のイベントを開催し対談をもとに聞いた体験や考察
■ 博報堂 買物研究所が提唱する会話経済のモデル
https://www.eigyoh.com/column/118/
上記をヒントに理論をまとめています。
シン・セールス理論では、「B2Bセールス」「新規顧客開拓」を攻略対象と定め提唱しています。予めご理解のほどお願い申し上げます。
第1章:セレブリックスと執筆者について
※既にご存知の方は2章をご覧ください
わたしはセールスエバンジェリストとして、営業に関する さまざまな調査や研究を行っています。時にはカンファレンスやイベントで講演させていただいたり、メディアやブログなどで執筆活動を行っています。
そして所属する会社、CEREBRIX(セレブリックス)では「営業代行」や「営業コンサルティング」というサービスを行っています。
この営業代行というサービスは、CEREBRIXという1つの会社にいながら、BtoB事業者の多様な業界・商品の営業活動ができる特徴があります。
有形のものを営業することもあれば、無形のサービスも扱います。売り切りの商材もあれば、SaaSやサブスクリプションモデルのプロダクトも営業します。レガシーな企業、大手、スタートアップ…支援する企業のステージや規模感も様々で、営業先も大手企業、中小企業、リテール等は変わります。
何が言いたいかというと、実験データが ‟相当” 溜まります。
こうしたデータや成功体験、失敗体験があるからこそ、営業手法や顧客に合わせた最新の営業技術を探求することができるのです。
第2章:変わるノーマル、異なるモデル
なぜ、私たちがシン・セールス理論を唱える必要があったのか。その理由はじつにシンプルです。
新しい時代の営業活動が難しすぎるからです。
営業職の市場価値を高めることに貢献したい私たちは、この非常に難易度の高い営業概況において、「できるだけ簡単に」「無駄な失敗を予防し」「うまく行かずに途方に暮れることを減らす」ことを目的に、ニューノーマルの営業メソッドを整理し、力強く 頼もしい理論を作ることにしたのです。
例えばセールステックツールを提供する、株式会社マツリカでは、コロナショック以降で「商談機会の獲得が困難」になっている調査レポートを紹介しています。
※出典元 株式会社マツリカ 「営業活動のリモートワーク調査」
このように営業活動における環境が変われば、顧客への価値の提供方法やコミュニケーションの取り方を変えなければなりません。
しかし、購買環境・営業活動の変化を正しく理解せずに、その場しのぎの対応で方針をコロコロ変えていると、営業現場は疲弊します。
そのため、まずはコロナショック以降の購買環境・営業環境でどのような変化が起こっているのか、この背景をしっかり向き合ってみませんか?
課題の特定なくして課題解決はあり得ません。
ニューノーマルの購買と営業の「今、そしてこれから」を一緒に紐解いていきましょう。
①購買編:信じられる人からモノを買う
先行き不透明な情勢が続けば消費の判断は鈍りやすくなります。
加えて、ジャンクなコンテンツの増加 ✕ 溢れる類似品 ✕ 営業の不慣れなオンライン商談により、購買者は「比較・検討するのも面倒」になっていると言われています。こうした背景から、海外を中心に会話経済(会話を通して価値ある情報を届けてくれる人からモノを買う)が購買モデルの主流になってきていると、博報堂の買い物研究所は示唆しています。
※購買モデル大研究より
※商談前のプロセスを省略して、信用している人(会社)に相談する
②購買編|「先ずは会う」から「必要な時に会う」へ
これまでの購買検討は、「営業が会いにきて提案をうける」ことが基本でした。しかし物理的に会えない環境が続けば、会わなくても判断する必要に迫られ、耐性や目利き力が備わります。これからの時代は、「商品を直接見る」「意思決定の前に一度は会っておく」といった、必要な場面で対面を希望することが増えるでしょう。
③購買編|人に求めるのは「相談相手」
AIやセールステックが発達すれば、営業パーソンの説明なく購買担当者が直に情報を調べ意思決定することが増えるでしょう。
このような環境下で、購買者が営業に求める役割は「気付かせてくれること」です。購買者の状況・理想・課題に対して正しい「問い」を与え、インサイト(欲求の裏側にある動機)に気付かせてくれる人を求めるのです。
④営業編|営業プロセスの設計が変わる
リモートでのコミュニケーションが増えるニューノーマルでは、インサイドセールスはプロセスではなく、コミュニケーションの手法・機能 と考える方が現実的です。
加えて、商談機会の獲得方法も PUSH or PULL or ソーシャル…といった、様々な販路(獲得チャネル)が存在します。顧客とのコミュニケーションやプロセスを描く際には、固定のモデルではなく流入経路と顧客の検討ステージ別に考察する必要があります。
⑤営業編|コミュニケーションの取り方が変わる
営業と顧客のコミュニケーションの取り方が多様化します。
コミュニケーションがテクノロジーで代用される場面が増え、商談ではオンラインによる非対面コミュニケーションが増えます。
ニューノーマルでは購買視点で見ると信じられる人(企業)になっていることが重要であるにも関わらず、些細な表情の変化や反応等が読み取りにくくなり、人間関係の構築が難しくなると予測できます。
⑥営業編|営業リソース(主に人材)の前提が変わる
営業活動を行う人材にも変化が見られます。リモート環境では「社員教育」の難易度が非常に高く、外部のプロ人材やフリーランスに委託することも増えるかもしれません。自社社員の場合も、働き方改革等の残業規制、副業や兼業と、働き方の環境は変わってきています。
これからの時代は、異なる属性・ 異なる働き方のエピソードを持ったチームで営業活動を行っていくケースが増えるでしょう。
⑦営業編|営業マネジメントが変わる
上記①~⑥に記載の通り、購買・営業活動の前提が変わってくれば、指揮命令やサポートの仕方も変わってきます。何よりマネージャーは自分が経験したことのないケースのマネジメントをすることになります。
加えて、リモートワークの推進により、営業メンバーと同じオフィスで働かないというケースも増えることでしょう。
このようなことから、仕事の管理的な側面以上に、人としての関りや支援という側面でのマネジメントが重要になると予測されます。
第3章:シン・セールス理論とは
第3章ではシン・セールス理論について解説します。
セレブリックスが提唱するニューノーマルの営業理論は、これまでの営業スタンスや技法に加えて下記のような点を重要視しています。
シン・セールス理論とは?
「コンテンツが主役の営業スタイル 」 のこと
シン・セールス理論の重要ポイントとは?
購買プロセスの中で 適切なセールスコンテンツを活用できれば、顧客に「この人から 今 買いたい」という購買体験を抱かせることが可能
そうです、キーワードはセールスコンテンツと購買体験です。
上記の 「④営業編|営業プロセスの設計が変わる」でも解説した通り、商談機会のつくり方は多岐に渡ります。先行き不透明の時代に、サービスを導入する重要性と緊急性を買い手に気付いていただくためには、接触チャネル毎に提供するコンテンツやコミュニケーションを変えることが必要です。
図にすると下記のような整理ができます。
では、具体的に旧来のセールスとシン・セールスではどのように変わるのか、下記のように購買者と営業活動の項目ごとに変化を表してみました。
※業界や地域属性によって差異はあります
上図はかなり細かいので、シン・セールスにおいて重要なポイントを幾つか上げるとしましょう。
■ ターゲティング
不特定多数のターゲットを対象とした新規開拓営業においても、アカウントベースドマーケティング(以下ABM)(※)を取り入れる必要性が増えます。顧客のキーパーソンが会社に出勤することが減る場合、新規のテレアポだけでは接触が困難になります。
そうした点からも、営業パーソン毎に選りすぐりのターゲットを選び、リード情報(顧客情報)を細かくメンテナンスし、電話以外でも直接コミュニケーションを取れるようにしましょう。
(※)アカウントベースドマーケティング…自社にとって価値の高い顧客を選別、顧客に合わせた最適なアプローチをするマーケティング手法、ABM(Account Based Marketing)
アカウントベースドマーケティングの取り入れ方は、過去のnoteでも紹介しております。
■商談機会の獲得
アポイントの獲得を目標にすると、新規のテレアポでも、マーケティング活動での反響でも、すぐにアポイントに直結しようと考えてしまいます。
しかしこれからの新規開拓では、ベストなタイミングでアポイントを獲得するためにも、る商談機会に繋がる情報を獲得するフェーズ(商機の収集) / リードを深耕させアポを刈り取るフェーズ(商機の獲得)に分けて、目標管理や行動管理を行いましょう。
シン・セールス理論では、「信じられる人になること」の重要性を説いています。非対面コミュニケーションで人間関係の構築が難しいのであれば、接触回数を増やし、役に立つ情報を与え続け、価値のある人(信じられる人)になることを目指します。
例えばアウトバウンドのテレアポで、キーパソンと接触したにも関わらず、アポイントが取れなかったために関係性が0になるのでは、あまりに勿体ないということを理解しましょう。
<1ポイントアドバイス>
セレブリックスの営業代行の一例では、電話を架けて繋がったらいきなりアポイントを取るのではなく、ヒアリングを行い商機の収集をします。
ヒアリングの上で獲得できたアポは、有効商談の可能性が高く、営業パーソンが集中すべき案件として準備を徹底して臨めます。
また、タイミングが「今」でないという場合、商談機会(顧客の検討機会)を把握しておくことで、「そのうち客」に対して適切なタイミングで営業が仕掛けられたり、顧客の購買動機をHOTにする適切なコンテンツ(資料やメルマガ、セミナー招待など)の提供が可能になるのです。
そして、仮にニーズがなかったとしても、一定数の「買わない理由」を集めることが出来ます。この買わない理由を集めることで、サービスの見直し、マーケティング・営業戦略、必要なコンテンツの見直しができるのです。
■事前準備~商談{アプローチ・ファクトファインディング(課題発見)}
シン・セールスでの商談は、「顧客の現状や顕在課題の下調べは商談前に、商談本番では事前情報を基に、より深い問いかけやディスカッションの場」と位置付けると良いでしょう。
そのため商談当日の場で、営業が質問しやすい動線、商談で対話が生まれやすくなる「装置」の仕掛けが大切です。
<1ポイントアドバイス>
例えば事前準備。これまでは商談の仮説構築は、営業が行うことが基本でした。(当たり前ですね)
しかしシン・セールスでの事前準備は、顧客にも手伝ってもらうという発想が当日の対話を生み出す「装置」になるのです。
例えば、商談事前アンケートと当日のアジェンダ。
商談前にヒアリング(アンケート)を行っておくことで、より密度が濃い仮説構築とヒアリング内容が準備できます。
加えて当日の議題・質問内容を共有しておくことで「顧客が喋る内容を準備させる」ことが可能になります。これにより、商談当日の事実把握の精度が増し、加えて顧客が話しやすくなるという効果があります。
■ 顧客育成(そのうち客の温度感を高めるリレーションシップ)
新規開拓営業でおざなりになりやすい、今すぐ購入に至らない顧客とのリレーションシップ(関係維持)も、限られたターゲット群からの成果あげるためには重要です。対面営業が当たり前だった頃は、いわゆる「おみやげ」と呼ばれる、購買者にとっての、耳より情報や特ダネををフックに顧客に接触し、商談機会の収集に努めていました。
関係構築が難しくなったシン・セールス時代はこの「おみやげ商機」をハックすることが求められます。リモートでも耳寄り情報が目に見えるように、セールスコンテンツとして作成したり、顧客の温度を高めるために、ユーザー訪問やウェビナーへの誘導といったように総力戦になります。
ある意味「人柄・相性」など人間性で差別化が図りにくくなるからこそ、コンテンツを拡充させ、仕組みで解決することがシン・セールス攻略のツボとなります。
<1ポイントアドバイス>
これまでの商談攻略は、営業担当とその上席で案件を前進させるという、ある意味閉鎖的な環境で進めていました。セールスコンテンツ等の「仕組み」で顧客開拓にあたるシン・セールスの世界では、顧客の温度感や状態に合わせて、「適材適所の価値訴求」を行うことが重要です。
時には第三者(ユーザーや取引先)から、サービスの魅力や使い勝手を紹介いただくのも良いでしょうし、ウェビナー等で顧客をとりまく市況やトレンドに合わせた啓蒙稼働も必要です。大切なのは「誰がするか ではなく コトを進める」ことです。それぞれの持ち味をいかすことが重要です。
第4章:営業プロセスの設計(全体)
ここからは購買体験を引き出すための営業プロセス設計について解説していきます。今回シン・セールス時代に描くジャーニーマップということで略して
#シンジャニ (シン・セールスジャーニー)
と呼ぶことにしました。皆さんもどうぞ #シンジャニ と呼んでください。
なお、営業プロセスの考え方や 顧客に抱いて欲しい購買体験は、商文化・業界・慣習・エリア・商材・ターゲットによって大きく異なります。
大切なことは、自社の商品・価値提供において、自社にフィットする #シンジャニを描くこと だと覚えてください。
今回は商談経路別の代表的な #シンジャニ をご紹介します。
■B2Bの新規開拓営業における代表的なシンジャニ
全体をまとめると上図のようになります。非常に細かいですが、後ほど商談チャネル(商談獲得経路)ごとのプロセスを細かく解説しますのでご安心ください。
まず、アポイント(商談機会)の獲得経路ごとに、描くプロセスが異なるという点に注目ください。
ご覧いただいたように、最適な購買体験を作るには、1社でひとつのシンジャニではなく、リードの獲得方法別に作成します。
細かく作れば作るほど、購買体験とコミュニケーションのマッチング精度は高まりますが、作るのに時間がかかります。
こうした取り組みは小さく始めて成功体験の輪を広げるのが最も社内浸透しやすいという側面を持ちます。そうした意味では、シンジャニ作成のトライとしては、商談獲得経路別に作成・見直す ことをおススメします。
第5章:営業プロセスの設計(アウトバウンド)
まずはアウトバウンドの商談獲得における #シンジャニ をご紹介します。
まだ接点のない企業に対して新たにリードを獲得するパターンと、既にリード(名刺や顧客情報)はあるが、フォローも何もしていないまだまだ客(まだまだ見込みの薄い客)に対して、こちらからアクションをしかけて商談機会を獲得する方法です。
第3章でもお話ししたように、商談機会の獲得は「商談機会の情報を収集」する前工程と、「商談機会を獲得」する後工程にわけて考えます。
また、新たな変化としては、リスト作成やリスト管理にテクノロジーの力を活用するケースが増える点は注目です。
例えばリスト作成。これまでの調達方法はリスト会社から購入する/自分で作成する等がありましたが、セールステックが発達した今では、優先してアプローチする企業を自動で提供してくれるツールもあります。
また、最近ではDMP(※)と呼ばれる“インターネット上に溜った様々なデータを管理するプラットフォーム”を活用することで、特定のWebサイトを見ている「今、購入を検討している」企業リストも手に入ります。
※Data Management Platform(データ マネジメント プラットフォーム)
そして商談機会を獲得するためのアタックの方法としては、最近勢いがあるのがフォームマーケティングツールです。いわゆる問合せフォームに効率的にアプローチできるセールステックなのですが、電話だけで接触ができにくいアフターコロナの営業活動では注目されています。
ただし、同じような手法でアポを取ろうとする企業が増えるという事ですので、見られにくくなったり、獲得率は下がる可能性があります。
重要ターゲットへのアタックは1to1でオリジナルメッセージを送るなど、信用される人になるためには、量と質のバランスは重要です。
また、アウトバウンドセールスでは、顧客の検討タイミングを把握することが獲得率に大きく影響しますが、営業パーソンが使えるマーケティングオートメーションやメール配信ツール、そして送付した資料の閲覧状況を可視化するセールステックツールも増えてきています。
このようなツールを活用して、ベストなタイミングで価値訴求することは、「この人から 今 買いたい」という購買体験を引き出す、とても大切な考え方となります。
ただしこのような話をすると必ず勘違いが起こってしまうのですが、決して営業電話がなくなるわけではありません。営業電話の活用の仕方が変わるのです。前提として多くの場合、PUSHの新規営業は買おうと思っていない顧客に対して、コミュニケーションを通して行動変容を促します。買おうと思っていればインバウンドが来ますし、すでに比較検討している筈です。
このように買おうと思っていない人に、新たな気付きを与えたり、購買に対する反論を覆すには直接対話ができる電話が強いのです。
テクノロジーやツールを活用するのは、購買意欲がある顧客に接触したり、顕在的なニーズを持つ企業に効率よくアタックする「確率」を上げるための取組みであり、PUSHの営業電話がなくなるという話や、コミュニケーション手法に優劣が付くという話ではありません。
第6章:営業プロセスの設計(インバウンド)
続いての商談経路別の #シンジャニ 解説はインバウンド(反響型)です。
いわゆる 「ファネル型」とも呼ばれる、SaaS・IT系・サブスクリプション型のビジネスモデルのBtoBマーケティングで良く取り入れられる手法です。
アウトバウンドとの最大の違いは、インバウンドが「購買者側がいずれかの興味・関心があって問い合わせやアクション」を行っているのに対して、アウトバウンドはアクションを行うのが営業サイドであるという点です。
しかし反響営業であれば必ずしも成約率が高いかといえば、今の時代は一概には言えません。サービス提供者は、少しでも早くニーズのある顧客、または将来的に見込みのある顧客に接触しようとし、購買検討中の企業以外の顧客情報(リード)も集めようとします。
そのため、獲得できた沢山のリードの中から「今すぐ客」「そのうち客」「まだまだこれから客」「見込み無し」「ターゲット外」といったリードの選定が重要になります。
※リード(見込み案件情報)のスコアリングの名称は企業それぞれです
まずリード獲得で重要になるのは、マーケティングコンテンツの活用です。
企業の温度感を確かめたり、検討ステージに応じた様々なコミュニケーションを仕掛けるには、顧客と接点を持つコンテンツに、それぞれ意味を持たせることが重要です。
例えば、自社(売り手側)で調査した業界動向や研究データなどの資料が閲覧されていたとします、この場合、閲覧者(買い手)に購買意欲は高くなく、単純に勉強や情報収集の可能性があります。そのような状態の人にいきなり電話をかけて「アポ下さい!」とアタックしても、顧客はゲンナリしますし、効率面で見れば良くありません。
一方で、〇〇商品の競合比較表/他社との違い というダウンロードコンテンツを閲覧されたとします。この場合、閲覧者(買い手)の購買意欲は高い可能性があり、商品の比較検討をしている可能性があります。
こうした場合は、「デモンストレーションや事例集など、比較検討の材料をお持ちしますのでより短い時間でご検討いただけます」といった形でアポイントにするのが良いでしょう。
これがコンテンツに意味を持たせるということです。
そしてインバウンド営業においても、コミュニケーションの取り方にテクノロジーミックスが浸透してくるのは間違いないでしょう。
テクノロジーでいえば、引き続き マーケティングオートメーションやコンテンツマーケティングなど顧客育成をサポートするツールと方法に注目が集まります。競合も沢山コンテンツマーケティングを仕掛ける中で、一人ひとりの顧客にとって、今、価値のあるコンテンツ( for you メッセージ )を届けられるかどうかが肝心です。
第7章:営業プロセスの設計(ソーシャルセリング)
会話経済を助長する新たな取り組みのひとつとして注目されてるのがソーシャルセリングです。いわゆる「人脈営業」のことで、ネットワークを活かした紹介営業やリレーション営業自体は古くからありました。
進化した点はSNSやオンラインサロンといったコミュニティの築き方の変化と、「まだ直接会ってない人」とも関係性をつくれる点です。
上図はソーシャルセリングによる商談機会獲得のための営業プロセスとなりますが、コミュニティづくりの方法は上記だけでは網羅しきれません。
SNSやチャットも特徴をもったツールが沢山出てきています。
自社または業界の啓蒙活動や認知促進を図る上で、ベストなプラットフォームを選択すると良いでしょう。
ただし、ソーシャルでの関係作りやセールス活動は手軽に始められる反面、プライベートでの利用者が多いため、私たちが発信する内容・コミュニケーションの取り方を間違えると悪い方に作用していきます。
特にSNSは口コミや炎上といったリスクも常に潜んでいます。
シン・セールス理論の考え方にもあるように、SNSなどを闇雲にアタックするリストとして活用するのではなく、相手が 役に立つ・意味がある・価値を感じる といった情報やコンテンツを届け、ファン作りや「信じられる人」になるためのコミュニティづくりを目的にしましょう。
< ワンポイントアドバイス >
ソーシャルセリングとしてのSNS活用、およびコミュニティを築く上で、私が大切にしている点をまとめました。
・読み手、視聴者の立場にたって想像する。配慮をする
・第三者を否定する、傷つける発信を控える
・偏った思想や価値観の押しつけはしない
・自分の正義の逆は相手の正義だということを理解する
・SNS上で議論しない
・主語を大きくしすぎない(× 営業は必ず → 〇私たちは必ず)
・誇大広告、誇大表現、虚偽、見栄、マウントをとらない
・取引先や関連会社に配慮のある投稿や発信を心がける
・商品の訴求は基本しない、価値のある情報提供を主とする
・闇雲に営業DMは送らない
※上記は一例です
ちなみに、ある程度の認知や応援してくれる方が増えていくと、ニーズがありそうな企業に「商談しませんか??」という提案をすると何故か喜ばれたりします。まさにカンバセーションエコノミー、信じられる人から買いたいとはこういう事なのかもしれません。
第8章:営業プロセスの設計(ABM・大手企業)
続いての解説はこれまでとは少し切り口が異なる、ABMやエンタープライズ(大手企業)攻略についてのプロセス設計です。
考え方として、インバウンドやアウトバウンドが接触の「手法」を切り口に分類(PUSHかPULLか)されているのに対して、大手企業の攻略等に関しては「顧客アカウント別」に割り振られていると考えましょう。
攻略対象が必ずしも新規顧客に限られなかったり、大手企業から売り込まずに反響を獲得するPULLの仕組みを作っても良いわけです。
大手企業の攻略は導入や運用に利害関係者が多くなることがポイントです。
一度に不特定多数の方が参加した商談では、ヒアリングや課題設定の精度が落ちます。これを防ぐためには顧客の利害関係者をカテゴライズして個別(最小人数)に攻略して課題設定と反論対応をしていくことです。
< 利害関係者のカテゴライズ例 >
決裁者…最終決定者や意思決定が行われる会議体
助言者…意思決定者に対して進言、助言が出来る人
推進者…導入に向けた推進や社内営業をしてくれる人
運用者…実際にサービスを利用する人に指揮命令する人
利用者…実際にサービスを利用する人
監査者…システム要件、購買チェック、法的面など導入を監査する人
※上記は推進者と助言者が同じ人のように役割が被ることもあります
※キーパーソン分類は、分かりやすさを重視して日本語にしています
いずれにしても大切なことは、利害関係者を把握することではありません。
導入したいと考えているキーパーソン(推進者)が、社内営業や調整をする際に出てくる「反論」「買わない理由」を無くすことです。
利害関係者それぞれが抱く、異なる「買わない理由」を直接的にまたはキーパーソンと協力して、個別に解消していくことが大切です。
第9章:営業プロセスの設計(商談)
ここからは、いよいよ商談プロセスです。
商談のプロセスをおおまかにデザインすると下図のようになります。
大切な点を解説いたします。
第3章でも解説した通り シン・セールスでの商談は、「顧客の現状や顕在課題の下調べは商談前に、商談本番では事前情報を基に、より深い問いかけやディスカッションの場」と位置付ける必要があります。
そのため、商談前に事前にアンケートや資料を共有し、当日ディスカッションする内容を決めておく…という手段は有効です。
そして、再三登場していますが、商談のコミュニケーションが「会うことが前提」から「必要な時に会う」に変わっていきます。
例えば、
■ 初回商談は非対面(オンライン)で、具体的な提案時に訪問する
こちらは、企画した内容に対して意見交換やディスカッションをする際に有効なプロセスの設計だと言えるでしょう。
また、ターゲット顧客の購買スタイルにおいて、社内において意思決定者が会うことにこだわりをもっていたり、高額な商品を扱う際にも取り入れたい考え方です。
■すべてオンラインで商談する
電話やオンラインなどの非対面で営業活動を行うスタイルがこちらです。CTI、オンライン商談システム、動画といったセールステックツールの活用でリモートで働く営業パーソンのスキル統一やオペレーションを最適化することが重要です。
■初回商談は対面商談で、具体的な提案時は非対面(オンライン)する
この営業プロセスは、顧客にニーズがまだ定まっておらず、深いヒアリング(ファクトファインディング)による課題発見が必要な商談や、顧客のニーズに合わせて多種多様のソリューションを提案できる商談に向いています。
難易度の高い課題発見はフェイストゥーフェイスで実行し、企画内容が決まったプレゼンテーションはオンラインで実施するというパターンです。
■全て対面で商談を実施する
勿論対面商談がなくなるという極論ではありません。
ただ説明はあえて必要ないと思いますので、割愛させていただきます。
そして、具体的なオンライン商談の勝ちパターンのつくり方と、セールスコンテンツの解説については、第10章、11章で説明させていただきます。
第10章:オンライン商談の勝ちパターンを作る
この章ではオンライン商談における、買い手の購買体験を高める 具体的な価値訴求のパターンをご紹介します。この価値訴求のパターンは大きくわけて4象限に分類できます。
縦軸が提供するサービスモデルです。商品形態と言ってもいでしょう。
決まった商品を売っているのか、提案内容は自由に決められるのかというモノサシです。一方、横軸が顧客のニーズの確度です。つまり予め顧客が買うつもりでいるか、そうでないかです。
この場合、上段は顧客によって提案商品は変わりません。
勿論、導入する理由は企業によって異なると言えますが、解決するために活用する商品・サービスは同じになります。
一方で下段は、
当然ですが提案内容は異なります。広告代理店のようにWEBでもTVCMでもなんでも提案できるというサービスがイメージしやすいかもしれません。
この場合、解決する手段やサービスを考えるのも営業の仕事です。
問題の理由が企業によって異なるため、解決方法や提案も多種様々です。
続いて横軸です。
顧客のニーズの切り方でも営業における訴求内容と顧客が知りたいこと(体験すること)は異なります。ニーズが明確であればある程、購買者が知りたいのは他者との比較や、商品の特長や強みです。購買者が感じる課題とのフィット感と言っても良いでしょう。
では、ニーズが顕在化していない場合はどうでしょうか?
まだ購買検討の必要を感じていない顧客への営業活動で大切なのは、商談にによって相手の気付いていない課題を見つけることです。
適切な問い、あるべき姿への主導、問題提起といったコミュニケーションにより、顧客が課題を認め、顧客にとってその課題の解決が重要であることに合意してもらうプロセスが必要なのです。
このようにターゲットセグメントを分類していくと、異なる営業活動を推進していく必要があるのがわかります。
では、具体的に商談においてどのような場面でコミュニケーションが変わってくるのか解説します。
最も違いが生まれるのが課題発見のための「ヒアリング」の目的と役割です。
4象限のヒアリングの役割を解説すると下記のようになります。
左上:ヒアリングは顧客のもつ課題の答え合わせ(認識合わせ)程度
左下:競争力を発揮する提案内容を固めるための素材集め
右上:ヒアリングで課題を導き、自社のプロダクトの活用とマッチさせる
右下:ヒアリングで課題を導き、解決策を考えるための情報を得る
価値訴求のパターンがいかにして変わってくるのかが、きっとお分かりいただけたと思います。しかし多くの企業や営業組織でヒアリングや提案のプロセスを一色淡で考えているのが事実です。
価値訴求パターン毎の商談プロセスの設計方法については別の機会にご紹介します。
第11章:セールスコンテンツのつくり方
コンテンツが重要になるという考え方については別のnoteでも解説していますのでお時間ある時にご覧ください。
セールスコンテンツとは、「目の前にいる顧客を購買に促す」コンテンツであり、購買しようと思っていないお客様の心と行動を促す引き金です。
セールスコンテンツの作成と聞くと、難しそうな印象を抱きますが、コンテンツの素材は日常に溢れます。むしろ日常のヒントをどのように2次利用するのかが肝なのです。
セールスパーソンが営業活動を行う中で、2つの着眼点とフィードバックを行うだけで、商談を有利に働かせるセールスコンテンツのアイディアが生まれます。それが「顧客の買わない理由」と「兆し」の着眼です。
セールスコンテンツに期待する役割はシンプルに4つです。
■ 会話や意見交換が生まれるキッカケ(引き金)になる
■ 買い手の現状や目標に ”問い” が生まれ、行動変容のキッカケになる
■ 買い手の反論やネガティブに対抗(切り替え)する手段となる
■ どんな営業パーソンが活用しても同等の成果や効果が得られる
上記のように考えられます。
加えて、顧客が最高の購買体験の中で意思決定をするためには、顧客の検討状況に合わせて、購買を前進させるベストなコンテンツを用意しなければ効果は期待できません。つまり1つひとつのコンテンツに意味を持たせる、登場シーンを決めてあげる必要があるのです。
商品のもつ価値に興味を持ってもらうコンテンツと、導入に前向きな企業が社内を説得するのに必要なコンテンツは異なります。では各場面でどのようなコンテンツを作成すればよいのか、その一例をご紹介します。
例えば事例集。
事例も意味の持たせ方によって、購買体験に与える影響は異なります。
既に顧客が課題認識をしており、解決にむけて動き出している場合に事例に期待するのは「本当に商品を導入したら期待通りの効果がでるか」という安心材料や根拠です。その場合は、企業の具体的な運用や活用の事例をお見せして、「うちでもやれそうだ」と再現性を訴求することが大切です。
続いてケイパビリティシートの存在を説明します。
ケイパビリティシートとは競争優位の発揮を目的とした資料です。
つまり勝負に勝つ確率を高めるための、買い手から見て「信用できる企業としてのポジションを獲得するためのコンテンツ」と言えます。
このコンテンツの活用で目指すのは、
①そもそもコンペにならず提案を独占するための関係作り
②ライバルと比較された時に、選ばれる理由が明確である状態
となります。
ただしこれらのセールスコンテンツを営業パーソン1人ひとりが忙しい合間を縫って作成しようとすると、手を抜いたり既存のもので済またりしようします。資料の作成スキルに応じても、効率やクリエイティブの差が付きやすい領域ですので、組織的にみると無視できない問題です。
そうした場合は、セールスコンテンツプランナーという専任を置いてしまうのも一つの手です。例えばセレブリックスではセールスコンテンツプランナーを専任で用意し、事例であれば業界やニーズ別で80を超える切り口の事例集が用意しています。
買い手側が「限りなくジブンごと」と捉えて共通認識を抱いていただくことが、意思決定のハードルを下げるとわかっているからです。これらは日々、コンテンツプランナーが営業の要望に応える&コンテンツを活用した受注率などをモニタリングしながら、アップデートや増強を図っています。
第12章:まとめ
購買モデルが変化し、先行き不透明なこの時代。いかに信用・信頼される人になるか?という会話経済の関心が高まりつつあります。
しかし非対面でのコミュニケーションの割合が増える、ハイブリッドなセールスノーマルでは、顧客の欲求の真のツボを捉えるのは難しく、「価値のある人」としてのポジション獲得が難しくなっていきます。
このような環境下で「この人(企業)から 今 買いたい」という購買体験をつくる、これからの営業で目指す姿を再定義する必要がありました。ゆえにシン・セールス理論の発明です。
購買体験の感じ方はお客様によって異なります。購買者1社1社のニーズに寄り添う、「あたかかく いのちのかおるコンテンツ」を作成し、御社のシンジャニを開発していただければ幸いです。
取材・執筆の依頼
株式会社セレブリックス
営業企画本部 本部長 (セールスエバンジェリスト)
今井晶也
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