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久米島紀行⑤球美の島、畳石でたたずむ時

久米島から帰る日は決まって畳石で1時間ほどたたずむ。

畳石は久米島と橋で繋がっている奥武島(おうじま)にある。一つひとつが亀の甲羅のような六角形や八角形の形をしている岩が敷きつめられている世界的に有名な妙石群で、干潮の時にしか現れない。
沖縄県の指定天然記念物である。約1200万年前に噴火した溶岩が固まり、長い年月をかけて波に侵食されて出来た、まさに自然が作り上げた六角形、八角形である。
この畳石、見事な角張り具合で目を疑う。
だれかが夜な夜な紙ヤスリで角を磨き上げているのではないかと思うほどの角ばかりが、ジグソーパズルを思わせるきれいな組み合わせで並ぶ。

時期にもよるが、タイミングが悪いと満潮で畳石が海に埋もれてしまい、その姿を十二分に楽しめないので、訪れる際には潮見表の確認は必須である。

畳石の素晴らしさはもちろん不自然な石の整列であるが、注目すべきは畳石から見る海の色である。
私はここから見る海の色が久米島一美しいと思ってやまない。
真っ青な青ではない。海は白や緑、シルバーやゴールドが溶けた複雑な青の集合体である。
水平線に小指の爪ほどに小さく見える三角形はトンバラ岩だ。
春から秋にかけてダイビング目的で訪れることが多かった私にとって、冬のダイビングポイントであるトンバラは数回しか潜ったことしかない未開の地と言ってもよい場所だ。
だから余計に神々しく見える。

畳石で思う事は大半はもうすぐ家に帰らなければならない寂しさと、楽しかった海の中のことだが、時間の経過とともに、事故なくダイビングが楽しめたこと、久米島に住んでいる素敵な人たち会え、皆元気だったことへの喜びに気づく。

久米島の見どころは余多ある。
その中でも畳石でたたずむ時間は久米島最大級の魅力なのだ。

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