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【読んだ】15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ

おすすめ度 ★★★★☆

アスペルガー症候群の著者が、15歳で焙煎士となってコーヒー屋さんを開く自伝的なお話。
語り口がとても優しく、読んでいて心が温まる。
とにかく著者の響くんがいい子で、ご両親もいい人というのが、文章にも滲み出ている。
(2017年当時15歳だったので、今はもう20歳を超えていて、コーヒー屋さんは閉店しているみたい。焙煎士として活動しているらしいけど、ネットにもほとんど情報はなかった。)

発達障害や知的障害感覚過敏などをもつ人の成功譚はこれまでも何冊か読んできた。
子ども時代の周りの不理解や、発達障害と診断されるまでの両親の苦悩などは何となく知っていたつもりでいた。

でも、父親が語るのは初めて読んだ。

そういえばなんで他の本ではでてこなかったんだろう、疑問にも思わなかったけど、共感というより「そうだったんだ」と目からウロコだった。

男親のレガシーな価値観からくる葛藤、夫婦での考え方の違いが両方の視点で書かれているので、とても説得力がある。
どちらも響くんの幸せを考えているのに、すれ違ってしまうのが凄くリアル。どんな家庭でも共感できると思う。

両親が色んな葛藤を経て、たどり着いた考え方が素敵だった。
発達障害とか抜きにしても、すべての子育てに通じる素敵な考え方だと思う。私もそうありたい…難しいけど。

これがお母さんの言葉。

生活は色々変化したし、わたしたち夫婦の考え方も変わってきたけど、響は本当に変わっていません。
(中略)
響は何も変わってないし、実は変わる必要もなかったんです。
それを、私の価値観で、私の主観で育てようとしちゃうから、上手くいかなくて悩んでいたのだと今ならわかります。

これがお父さんの言葉。

結婚する前までの僕は、障害のある人についてほとんど知識もなく、理解もしていませんでした。むしろ、遠ざけようにしていました。
(中略)
響のことを理解することで、こんな考え方しかできないという自分の限界が見えることがあります。それまでの自分に足りなかったものが見えてくるのです。

この本には描ききれないくらい、もっと色んなことがあったんだろうし、本を出してからも色々あったのかもしれない。
今、全然ネットに発信していないのをみても、「15歳の焙煎士」というのがメディアキャッチーだったから、色々嫌なこと言う人もいたのかも…と邪推してしまう。

どんな形であれこの優しい素敵なご家族が、幸せであってほしいな。

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