【読んだ】戦争が終わっても、奪われ続ける
おすすめ度 ★★★☆☆
戦争の後も人生は続く
報道カメラマン高橋邦典さんのノンフィクション。
リベリア内戦中に出会った子ども3人の10年間を追った物語だ。
本が書かれた2013年は内戦が終わってちょうど10年だったらしい。
今は2023年、さらに10年が経っている。
今のリベリアはどうなっているんだろう、彼らはどうしているんだろう。
ニュースでもほとんど見ない国だし、日本語で検索しても新しい情報は全然見つけられない。
当たり前だけど、報道する人がいないと何が起きているか知る術がない。
※英語で[liberia poverty]と検索して見つけられたけれた情報をみるかぎり、根本的な解決は未だにされていなさそう。
必要な成長機会を奪われる怖さ
最初に出てくる元少年兵のモモは、内戦が終わって10年経っても希望が見いだせない生活を送っている。
教育も受けられず、酒や薬に溺れさせられ、暴力がすべての世界で生きてきた彼は、兵士をやめた後もずっと日雇いの仕事で食いつないでいる。
もうひとりの少年兵ファヤは、学校の授業中に軍にクラスごと誘拐されて少年兵にされた。
一見明るくみんなにも慕われる青年だけれど、やはり不満を口にする。
「誰かが助けてくれればいいのに」「政府が何もしてくれない」といいながらも、支援してもらっても十分に活かせず結局無駄にしてしまったりする。
戦争が終わったんだから、自分の状況を見つめてこれからのことを考えてほしい、なんて思うのは浅はかで傲慢だった。
それは、私が学校に行って、家族や友達と人間関係を築いて生活してきたからできる考え方だ。
私の物差しで彼らを判断することはとてもできない。
そして戦争が終わった今も、彼らはチャンスを奪われ続けている。
支援することの難しさ
もうひとりの少女ムスは、少し別のことを教えてくれる。
ムスは、6歳の時に砲弾で右腕が千切れてしまったところを著者にたまたま見つけられて病院に運ばれた。
そこから付き合いが始まり、アメリカの有名雑誌に特集が載ったことで反響を呼ぶ。
ムスはアメリカに来て、テレビ番組に出演し、多くの寄付を集め、義手を作ってもらう。
しかし、義手を使いこなすために1ヶ月家族でアメリカに住んだあたりから思いもよらない変化が生まれる。
先進国での生活を知り、高額な寄付を毎月もらうことで、金銭感覚が狂い始める家族。さらに、ムスは11歳の時に援助者からアメリカ留学することを提案される。
学校に行けず苦労した両親は、先進国で教育を受けさせられるチャンスに大喜びし、ムスも期待に応えたいと留学を決断する。
ところが、結果は期待通りにはならなかった。
まだ11歳のムスは、ホストファミリーとうまくいかず徐々に心を閉ざしていく。同学年の授業にはついていけず、学年を落として通うも成績は下がり続けやる気を失っていく。
結局ムスは予定より早く留学を終えて、帰国した。
その後のムスの話は、他の2人と比べると希望に満ちているのだが、考えさせられるのは「支援の難しさ」だ。
ムスはたまたまジャーナリストである著者に助けられたために、アメリカで注目されて沢山の支援を得る。
しかし、急激な変化に気持ちがついていけず、金銭感覚が狂ってしまう。
また、高額な寄付を募って作った義手は、結局ほとんど使われることはなかった。
使い勝手も見た目もわるかったので、子どものムスにとっては「かっこ悪い、恥ずかしいもの」だったらしい。
寄付について、これまで色々と考え過去に記事も書いてきたけれど、この言葉は心に刺さった。
アメリカの支援者の多くも、善意から彼女のためを思って寄付や支援をしたはずだ。
だけどそれがどういう結果を招いたかまで、気にする人はどれだけいたのだろうか。
結果まで気にする責任があるというのは重すぎるかもしれない。
だけど…私は考えたい。
こうして「その後」の暮らしを知る機会を得たのだから、できる限り「その後」のことまで考えて、本当に意味のある支援をしていきたいと思う。
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