【読書記録】文系の壁
おすすめ度 ★★★☆☆
ド文系の私をなかなかに煽ってくるタイトルやないかい、と思ったら結構面白かった。ちょっと悔しい。
科学やテクノロジーかと思えば、倫理や哲学と広く深いテーマになっているけど、対談なので読みやすい。
「文系にはこの壁が限界でしょ」というよりは「文系理系の壁を超えて語ろう」という意味なのかもしれない。
テーマが広いので、気になったところを備忘録。
文系の方がデジタル
なーんか遠回しに「文系の人は論理で考えられませんよね」と小馬鹿にされている気がするが、プログラマーと話しているときの感覚は割とこれに近い。
私は「言葉」で割り切りたいのに、相手は(私にとっては)些細なことにこだわってお客さんと揉めてたりする。
仲裁に入って事なきを得るのだが、後々そのこだわり部分が重要だったと気づくことがある。など。
豊かな社会にならないと多様性は許されない
なるほど、確かにここ1年ほど私はいろんな本を読んで、自分の知らなかった多様な人々について知った。
知れば知るほど、混乱するし解決策のないぐしゃぐしゃな気持ちになる。
でも、それでも多様性を重視しようという社会になっているということは、豊かさの象徴なのかも知れない。
藤井さんは、ダンボールとスマホでできるVRゴーグル「ハコスコ」の開発者で創業者。統合失調症や認知症の人の見える世界をVRで体験するなど興味深い社会実験的なこともしているそう。
複雑系科学と仏教哲学の共通性
スマートニュース創業者の鈴木健さんとの対談。複雑系科学という分野も初めて聞いたが、政治や社会などテーマが幅広すぎてついていくのが精一杯だった。著書「なめらかな社会とその敵」も読んでみたいけど、いかにも難しそう…
何が近いかというと、こういうことらしい。
養老さんが脳科学の人だし、脳や細胞の話が多いのだけど、確かにこの前読んだ仏教の思想にも近いものがあった。こうして知識が繋がるのは面白い。
実験結果は人間次第で変わる
STAP細胞の捏造事件を追ってきた科学記者、須田桃子さんとの対談も、細胞がテーマになっている。2015年の本なので、STAP細胞がホットな話題だったようだ。
実験で再現できなかったこと、報道の仕方や研究者のバイアスの問題などいろいろと語られる。
養老さんは一貫して「生物はすべて違うのだから、生物学実験で再現性が確保できるはずがない」という主張をしていて、実際の生き物で起きていることが、シャーレの中の細胞で起きていることと同じかどうかはわからないという話。
さっきの仏教哲学や、私の好きな福岡伸一さんとも通じる。
生物の神秘が人間に分解・理解できるものなのかとか、世界はわけてもわからない、とか。
生物科学はあまり数学的でない(私の知る限り)からか、文章で読んでいても興味深く読める。生命とはなにか?という根源的な問題と向き合っているからかも知れない。
クセつよい養老さん
全編で養老さんは割と言いたい放題言っていて、対談相手も困ってるんじゃないかと思うときがある。
全部に同意できるわけではないし、たまにイラっとするほど上から目線なこともある。
解剖学者で生き物オタクのめちゃ賢いおじいちゃんという超クセの強い思想だ。
ただ何冊か読んでみて思うのは、「意見が合わなくても思想は一貫している人の話は面白い」ということだ。
そういう考え方もあるのか、と面白がりながら読むのがおすすめ。
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