見出し画像

【読んだ】想像力のスイッチを入れよう

おすすめ度 ★★★☆☆

息子が国語で習って、面白かったと言っていたので借りてみた。
教科書では「メディアに対する想像力」がメインだったけど、本書のテーマはこの3つだ。

  • 他者に対する想像力

  • 情報に対する想像力←これが教科書の内容に近いかな

  • 未来に対する想像力

想像散歩、おもしろそう。

最初の「他者に対する想像力」では、小学生との「想像散歩」をする。

散歩しながら、バスから降りてくる人の人生を想像したり、看板を見てどんな人がどんな気持ちでお店を出したのか考える。
最初は発言しなかった子たちも段々楽しくなって、自由に発想を広げるようになる。

何の意味があるの?と思うようなことだけど、街を一巡りする頃にはみえる風景が違ってみえるそう。

例えば、セカセカ歩いてる人がいてぶつかっちゃったら、イラッとする。
でも「この人は恋人が事故にあって慌てて病院に向かっている」と想像したら優しい気持ちになれるかもしれない。

全く知らない人でも、想像することで扱いが変わってくる。
大雑把にカテゴライズして「最近の若者は」「老人は」「フェミニストは」「〇〇人は」ではなく「この人」という一人の人間として捉えることができるんじゃないか。

見えない窓を広げて考える

情報に対する想像力は、以前別の記事でも取り上げたが、小学生に伝えるには結構難しい話だと思う。

著者は、高知の四万十川で、こんな実験をする。

まず、一枚の紙の真ん中をビリビリちぎって小さい穴を開ける。

下村(著者)「はい、じゃあ、この窓が、外の情報をみんなに届けてくれるメディアだと思ってください。この紙を両ひじを伸ばして持とう。(中略)
今、みんなの周りに見えている景色のことは一旦忘れて、それぞれの小窓から見えている景色だけに注目して、テレビリポーターみたいに「自分は今どういう場所にいまーす」っていうのを言葉にしてみよう。」

この結果が面白い。美しい四万十川の川べりにいるのに、小窓からみえる景色だけだと「田んぼが見える場所」「高くて柵がある橋がかかっている川」「駐車してある3台の車の前」など、ぜんぜん違うイメージの言葉になるのだ。

誰も嘘をついてないし、悪気もないのに、事実と異なる情報が伝わることがある。正確に伝える難しさを体感させてくれる。

といって「本当かな?」と何でも疑えばいいわけではない。

想像力のスイッチを入れるのだ。
【他の見え方もできないかな?】と【隠れているものはないかな?】と考える。

見え方を変えるというのは、立場や順序、重要度を変えてみるということ。

喧嘩をした時に「あいつも悪かったけど、俺も悪かった」と「俺も悪かったけど、あいつも悪かった」では受け取るイメージが全く違う。
順序が違うだけなのに。

隠れているものはないか、は想像力が試される。
報道されないところに何があるのか、なぜそれは報じられないのか考える。

未来に対する想像力は、良くも悪くも

最後は未来に対する想像力。
この授業は福島第一原発事故で避難区域になった富岡町の小学生達に行われた。

20年後の未来に行ったつもりで同窓会をするという授業だ。ともすると現実離れした空想になりそうなところを、著者がうまくファシリテートして想像させていく。

その中に「望んだ通りにならなかった未来を想像する」という話が面白い。

人生は上り坂を登って行くようなものだから(中略)
その時にね、みんなで考えてる<いい想像力>は前の方にあるんだ。「ああ、こんな風になったらいいなぁ」って、グーッとみんなを坂の上から前の方に引っ張ってくれる。
で、もうひとつ「こうなっちゃったらいやだな」という<悪い想像力>があるよね。例えば「また大地震がおきたときに備えて、防災対策をどうしよう」と考える。(中略)
こんなふうにして、悪い想像力はよくないことがおきた時の対策や心の準備をぼくたちにうながしてくれるんだ。(後略)

ビジョンは持たない

将来のビジョンはありますか?ときかれることがちょいちょいある。
が、私は数年前からビジョンをあえて持たないようにしている。

人生は何が起きるかわからない。

ずっと一つの会社で働くと思っていたのに、海外で専業主婦になり、パートになり、派遣になり、フリーランスになった。

ビジョンを固めてもそのとおりにはならないし、こんなはずでは…と落ち込むのも時間のムダだ。
人はその時どきで最善と思われる選択をするしかない。
いつ何が起きても、できるだけ選択肢を多く持てるように、自分の能力を高め、資源を蓄えておけばよい。

一方で、想像することに意味がないとは思わない。
こうなっていなきゃダメだ!とは思いたくないけど、こうだったらいいな、と想像するのは楽しいし、自分を前向きにさせてくれる。

10年後、20年後。
私や家族は、どんな未来を生きてるんだろう。
そう考えることが、未来を作っていくのかもしれない。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,937件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?