[ 季節の色を見つけたよ ]:シロクマ文芸部(冬の色)
↑↑コチラのお題に参加しました。
なんだか、書いてたらこんな物語が出来上がりました。
私──、きっと、疲れているのだと思います😊
[ 季節の色を見つけたよ ]
「冬の色は白だよね」
と、彼女は言った。
世の中は灰色だとずっと思っていた僕にとって、それは初めての違う色との出会いだった。
春は、ピンクから始まり緑に包まれる。
夏は、海の青、空の青。
秋は、赤と黄色とオレンジ。
彼女は季節ごとに、色があることを僕に教えてくれた。
彼女といる時だけ、この世界に色があった。
とても楽しかった。
ウキウキした。
そして、幸せだった。
生まれて初めて「生きてる」って感じられた日々だった。
そして、
ずっと一緒にいたい。
そう思った。
だから───、僕は今日、
彼女と結婚する。
新郎新婦の控室。
目の前には、真っ白なウエディングドレス姿の彼女が立っている。
僕は言う。
「冬の色になったね」
「うん、好きな季節の色だからね」
「そっか、冬が好きだったね」
「うん、小さな頃からずっとね……、でもね、大人になってから、よけいに好きになったんだよ」
そうなんだ、なにかいいことあったの? と、僕が尋ねると、彼女はそれまでと変わらない自然な口調で言った。
「うん、あなたに出会えた季節だから」
「えっ、」
不意を突かれて、戸惑った。
「えへへへ」
と、彼女は笑ったあと、
「実はね、」
照れくさいのを隠すかのように、視線を逸らしてから話を始めた。
「あなたと出会うまで、私の世界は真っ白だったの」
えっ、
「色なんて無くて、何もかもが全て白く見える世界だった」
それは聴いたことのない話だった。
彼女は続ける。
「それがね、あなたに出会ってから、この世界には、いろんな色があるんだ、って気づけたの。
春は、ピンクから始まり緑に包まれて。
夏は、海と空の青がキレイで。
秋は、赤や黄色やオレンジの景色が広がって。
季節ごとに色があるんだって、気づけたんだよ。
あなたと出会う度に、いろんな色が増えていって、それが溢れだして、今、私の世界はいろんな色でキラキラ輝いてる」
───そんな……。
「私の世界を、こんなに”色とりどり”にしてくれて、本当に、ありがとう」
話を終えた彼女は、いつの間にか、僕をしっかりと見つめていた。
僕は……、涙が溢れ出てきた。
霞んで彼女の顔をおぼろげにしか確認できない。
「なに、泣いてんだよ」
と、彼女に突っ込まれる。
僕は、少しおどけて見せながら、頭の中でつぶやいた。
(そっか、彼女も同じ気持ちだったんだ)
そして僕は、声を口に出して彼女に言った。
「これからも、いろんな色を見つけに行こう」
「うん、たくさん見つけようね、一緒に」
僕が差し出した手を、彼女はしっかりと握り返してくれた。
そして僕たちは並んで歩き出し、ふたりで控室の扉を開けた。
おしまい。
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今日の物語のふたりの門出に、なんとなくこの一曲を😊
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