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だれもが使いやすいトイレ”とは?中高生が描くアイデア

田口 元香
日建設計 新領域開拓部門 新領域ラボグループ NAD
プロジェクトデザイナー

2022年8月3日(水)、中高生向けのイベント「夏のリコチャレ2022」の一環で、“設計事務所のお仕事体験”ワークショップが日建設計竹橋オフィスにて開催されました。

私も講師の1人として参加し、中高生と一緒に“だれもが使いやすいトイレ”について考えました。
今回の記事では、そのワークショップの様子や、これからの多様性を求めたトイレのあり方について改めて考えてみます。

01 ワークショップ開催の背景

近年、人々が持つさまざまな“個性”が注目され、受け入れられる社会となってきています。
それは身体と心に関すること(たとえば、年齢・性別・国籍・障がい)や、暮らし方に関すること(たとえば、働き方や趣味、共に暮らす家族)まで、多様に存在します。
建築・都市空間はそんなたくさんの個性を柔軟に受け入れられる環境であるべきですが、そうした社会の変化には追いついていないのが現状です。

特に「トイレ」は誰もが利用する公共空間として代表的で、男性用・女性用という性別だけでの区切りや、機能面においても多くの課題が見えてきます。
今回のワークショップでは、日建設計で行っている多様な利用者ニーズに対応する空間検討のプロセスを、「トイレ」を自分なりにデザインすることで中高生にも体感してもらい、また現代社会に必要とされる多様性について考えてもらいました。

02 ワークショップの様子

ワークショップは「年齢、国籍、障がい、ジェンダーなどにとらわれず、だれもが使いやすいトイレのデザインを考える」をテーマに開催され、講師としてNADのメンバー(安藤顕祐、佐野勇太、畑島楓、私、田口元香)が参加しました。
参加者の中高生はA~Cの3つのグループに分かれ、『あなたの学校に「だれもが使いやすいトイレ」をつくるなら?』という前提で下記のワークシートに自由にアイデアを記入してもらいました。

<ワークシートの構成>
1:様々な立場から考えてみよう!
(※LGBTQ、ペット連れ、外国人、車いすの人、体調が優れない人、着替えをしたい人、学校の先生、その他、から利用者の立場を1つ選ぶ)
2:1で選んだ立場の人がトイレで困っているシーンを考えてみよう!
3:2の困っているシーンを解決するアイデアを考えてみよう!
(※スケッチや文章など…自由記述)

ワークの時間が始まると、すらすらスケッチを描き始めたり、自分の考えを文字に起こしながら考えたり、たまに隣の人と相談したり、ひとりでもくもくと集中して描いたり。
普段なかなか考えることのないであろう「トイレ」のあり方について悩みながらも、楽しんでアイデアを出す様子が見られました。

ときどき講師にヒントをもらい、色鉛筆を駆使して、みんな順調に自分のアイデアをシート上に表現していきます。

03 みんなのアイデア発表!&中高生の声

ワークショップの最後は、それぞれの思い描く「だれもが使いやすいトイレ」を各グループ内で発表してもらいました。1人3分ほどの短い発表時間の中、自分のアイデアを熱のこもった説明で披露してくれました。

どれも個性が光るものばかりで、中にはなるほどとこちらを唸らせるものも。せっかくなので一部のアイデアを抜粋し、私の感想と共にご紹介します。

①“体調が優れない人”向けのトイレアイデア

円柱型を多用したシンプルな内装が、有機的でやさしい印象があります。自然光や風など、トイレ内の快適さの維持は自然の力を利用しており、自然の環境になるべく近づけた試みがサスティナブルですてきです。周囲の環境になじみ、長時間いても快適に過ごせそうなトイレ空間です。

②“LGBTQ+の人”向けのトイレアイデア

性別に関係なく誰でも使えるようにしつつ、入室状況が分かるようにしたり、トイレまでのアプローチを蛇行させたりなど、なるべく利用者同士が接触しないようにする工夫が見られました。また、ごみ箱の機能や壁紙の色、インテリアの装飾まで考えられており、細かいこだわりのある丁寧な設計ができていると思いました。

③“閉所恐怖症の人”向けのアイデア

閉所恐怖症の人の特性を分析し、トイレの閉鎖的な印象をなくすため、まるでやさしく包まれているかのようなドーム型の空間を個室としています。建物の中心となる共同通路にトイレを設置することで、トイレを生活の中心となることを目指した試みも新しいと思いました。またスケッチとダイアグラムを多用しているところも素晴らしいと思います。

そしてワークショップ後には参加者にアンケートをお願いし、回答者21人のうち20人が「また参加したい」と答えてくれました。
ワークショップの感想もいくつかいただき、「初めて自分で設計をしてみて色々な視点から考えることの大変さを知りました。」「誰かにとっての使いやすい≠みんな使いやすい ということが分かりました。」「色々な人の意見を聞いたあと、こうすればよかった!という改善点があって、もう一回やったらよりいいものができそうで楽しかったです!」と、設計することの大変さと楽しさを体感してくれていました。
中高生の皆さんにとっても、とても良い経験になったのではないかと思います。私にとっても、新鮮なアイデアがとても勉強になり、発見の多い充実のワークショップとなりました。

04 おわりに

―――― “だれもが使いやすいトイレ”とはなんだろう?
今回のワークショップで、私自身も改めて「だれもが使いやすいトイレ」について考えるきっかけとなりました。今回の舞台は学校でしたが、では私たちの働くオフィスや商業施設のトイレはどうあるべきか?もしくは「トイレで〇〇ができたらいいな」など、既存の使われ方に捕らわれない新しい可能性があるのではないか?など、実現するためには考慮するべきことがたくさんあり、多角的な視点を持つことも重要です。
そして、この「トイレ」という比較的デリケートな空間の課題解決の道を見つける事こそが、誰もが過ごしやすい社会をつくるための大きなヒントとなるのではと私は考えます。
この記事を機に、“だれもが使いやすいトイレ”についてみなさんにも考えて頂けたら嬉しいです。

最後に、私の考えた“だれもが使いやすいトイレ”アイデアを共有させていただきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


田口 元香 
日建設計 新領域開拓部門 新領域ラボグループ NAD
プロジェクトデザイナー
2022年に日建設計入社、NAD所属。専門分野である建築設計と都市空間の両視点から分析を行い、利用者の心理に着目した空間デザインを考える。学生時代は地元秋田のまちづくりプロジェクトや設計活動に多く参画し、地域のポテンシャルを引き出す空間の利活用法を提案してきた。



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