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IWMS(Integrated Workplace Management System)|ワークプレイスのデータを統合する ファシリティマネジメント システム

光田 祐介 
日建設計 デジタルソリューションラボ
アソシエイト コンサルタント

皆さんはIntegrated Workplace Management System(以下IWMS)という言葉をご存じでしょうか。日本語に訳せば、「統合ワークプレイス管理システム」といったところでしょうか。何のことやらよくわかりませんね。
IWMSとは、企業の不動産ポートフォリオ、インフラストラクチャ、設備資産の管理など職場のリソースやサービスを組織的に利用するための統合ソフトウェアプラットフォームです。

歴史的には、1980年代に誕生したCAFM(Computer-Aided Facility Management)や2000年代初頭に誕生したCMMS(Computerized Maintenance Management System)、CREM(Corporate Real Estate Management)などのシステムを統合し、2000年代中盤にIWMSが誕生しました。そういった背景のため、現在でも統合パッケージとして提供される場合もあれば、各々の機能がモジュールなどの形で必要なものだけ選択して提供されるといったこともあります。また、日本では統合FMシステムや単にFMシステムと呼ばれることもあります。

ここまででもわかるようにIWMSには多くの機能・アプリケーションやデータベースの集合体でファシリティーマネジメント(以下FM)に関わる多くの範囲をカバーしています。

図1 一般的なIWMSの機能群

さらに具体的に説明すると、ポートフォリオ管理やテナント管理等の「不動産管理」、エネルギー管理やCO2排出量管理などの「サスティナビリティ管理」、設備台帳管理や工事管理等の「資産メンテナンス管理」、レイアウト面積管理やワークプレイス計画等の「スペース管理」、来訪者管理やリクエスト・予約管理等の「ワークプレイスサービス管理」の機能が挙げられます。IWMSの提供ベンダーによっても多少提供範囲は異なりますが、フルパッケージの場合で概ねこの範囲になります。
加えて、他システム(BIM・CADやモバイルアプリ、会計システム、グループウエア等)との連携のオプションも用意されていることが多いです。

IWMSが求められる理由

欧米を中心とした海外から普及が進んでいるIWMSですが、なぜこのようなシステムが求められるようになったのでしょうか。大きくは3つの理由が考えられます。

  1. スマートビルの普及
    BIMやIoTなどの普及によって、資産と空間のデジタル化を容易にし、建物とワークプレイスを快適に利用・効率的に管理するためのデータが入手できるようになったことが大きな変化です。

  2. 高まるサスティナビリティの基準
    発注者が持続可能なエネルギー源を使用し、CO2排出量が少ない建物を求めています。また、ステークホルダーに対しての説明責任も求められ始めており、それを支援するシステムが必要になっています。

  3. ワークプレイスの役割の変化
    ワークプレイスは単なるオフィスだけでなく、テレワークやハイブリッドワークなど様々な働き方が定着しています。それらの働き方を支援するシステムも求められています。

IWMSとBIM・CADとの連携

IWMSは単なる表やデータベースではなく、BIMやCAD(場合によってはGIS)と連携して、位置情報と紐づけられることが大きな特徴です。それにより、ユーザーやオーナーはどこに何があるか、容易に理解することができるようになります。これは資産管理やスペース管理において、とても重要です。また、BIMの3Dデータを用いたビューアは、とても分かりやすくFMに詳しい方以外にも説明しやすいです。
しかし、ユーザーにとっては良いことではありますが、その分初期のセッティングは複雑になります。また、様々なBIM・CADのフォーマット(作成方法も含め)をきれいなデータベースと統合することは容易ではありません。

図2 BIMとIWMSの連携

IWMSコンサルティングサービス

ここまでで、IWMSの特徴やメリットを概ねご理解できたと思いますが、おそらく機能がかなり多いことや初期セットアップが複雑ということで「難しそう」という印象を受けた方も多いと思います。
正直、我々もいくつかのIWMSを検証し実際に利用していますが、上記の印象は間違いではありません。
そのため、利用したいけれど、なかなか踏み切れない、社内に人材がいない、というクライアントのために我々は「IWMSコンサルティングサービス」を提供しています。
下記の3段階のフェーズに分けてサービスを提供しています。

  1. IWMSの選定・導入支援
    設計事務所という、中立的な立場を生かし、様々なベンダーのサービスの中からクライアントの要件に合わせて、最適なソリューションを比較検討した上で選定します。

  2. BIM・CADデータ連携支援
    クライアントの要件に合わせたEIR(発注者情報要件)を作成します。我々は建築設計のプロであるため、様々なフォーマットのBIM・CADデータの扱いに慣れています。

  3. IWMSの初期運用支援
    IWMSの運用を円滑に開始するため、IWMSベンダーと協力し、初期データ投入のマネジメント等を行い、サービスのローンチまで責任をもって支援します。

図3 IWMSコンサルティングメニュー

IWMSのこれから

国内において、IWMSはまだまだ普及しているとは言い難い状況です。また、FMの概念自体も受け入れられていない(維持や保全に留まる)ことも多いです。しかしながら、サスティナビリティが求められるこれからの時代は、建物を「長期間」「良い状態」で使い続けること自体が大きな価値になります。
そのためには人間が毎年、健康診断を受けて健康寿命を延ばすのと同様に、建物も健全度を見える化し、診断して対応し、快適で便利な空間やシステムを改修等により提供し続け、価値向上に努める必要があります。その手段の一つがIWMSです。また、これからの「スマートビル」が普及する時代にはIoTやAIとの連携も建物の快適性や健全度を計る上で大変重要であると考えています。そして我々の研究テーマもそちらに移りつつあります。ぜひ今後にもご期待ください。

図4 IWMSとIoTとの連携


光田 祐介 
日建設計 デジタルソリューションラボ
アソシエイト コンサルタント
 スマートビルのコンサルティング及び、ライフサイクル(BIM)コンサルティングが主な業務領域。約10年前からBIM-FMやIWMSの研究開発に取り組み業界を牽引している。

クレジット情報
TOP写真:PLANONを用いて日建設計が作成

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