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「&So Are You」完結済み 全50話

50
バラは赤い、スミレは青い、お砂糖は甘い、そうして君も……。 一九六三年ミズーリ。代々トウモロコシ農家を営むベンの住む田舎町へやって来たハンナは、初対面でズケズケものを言う嫌味な…
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#パープルハート

「&So Are You」第一話

「&So Are You」第一話

プロローグ
 照りつける太陽の光が、僕の背中をローストターキーの表面のようにこんがりと焼きつける。
 目前に広がる湖面には零れんばかりの光の粒が溢れ、宝石箱を埋め尽くしたダイヤモンドみたいに煌めいていた。

 この場所で共に長い時を過ごした僕たちは、なにひとつ色褪せることなく同じ輝きを放っているはずだ。
 すべてあの頃のままに。

 そうして君も、あの日のキラキラした笑顔のままで……。

 耳を澄

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「&So Are You」第三十一話

「&So Are You」第三十一話

パープルハート

 もうすぐ新たな年を迎えようというのに、僕たちは相変わらず雨の冷たいジャングルを徘徊し、穴を掘っては泥水の中で眠れない毎日を過ごしていた。ベトナムへやって来て四ヶ月余り、交戦を経験するたびに死への恐怖は膨れ上がる。

 最近、一部でもっぱら噂されている話がある。後方から復帰したグレッグもしきりに口にしていた。

 ――それがパープルハートだ。

 士気が下がりきった今では、ほとん

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「&So Are You」第三十二話

「&So Are You」第三十二話

非道なゲーム

 一九六五年を迎えた、まだ闇深い未明――本部から北の兵士がこちらへ移動する動きがあるとの情報が入った。僕たちは叩き起こされ、エリック・ガーナー中尉が軍曹らに指示を出す。

「この場所に地雷を設置して二〇〇ヤード下がり境界線にする。一班と二班は側面で待ち伏せ、敵が来たらここへ誘導しろ!」

 そのとき、マシンガンの銃声と砲撃音が轟き次々と悲鳴が上がった。
 
 銃声と叫び声がすぐ近く

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「&So Are You」第四十二話

「&So Are You」第四十二話



「お前も知ってるんだろ!? ここの情報はもはや敵に筒抜けだって! 上層部はそれを逆に利用したんだ。解放軍を一ヶ所に引き寄せられるだけ引き付けて、空撃で一網打尽にする作戦だ。俺たちはそのおとり役に選ばれたんだよ!」

 ――空爆!?

 知らない情報につい攻撃の手を休める。

「空からってなんだよ! 砲兵隊の援護爆破じゃないのか!?」

「死にたくなかったら手を止めるな!」デクスターは撃ち続け

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