自由に書かない〜小説のちょっとしたコツ
小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。
今回は「自由に書かない」です。
自由に書いても面白くならない
創作は自由なのですが、かといって、まったく自由に書いてもだいたいは上手くいきません。
簡単にいうと、面白くならないのですね。
スポーツで考えるとわかりやすいと思います。
たとえばサッカーにはルールがありますが、ルール無用の自由さがあれば面白くなるかというと、決してそうはなりません。
「手を使ってもいい」「100人出してもいい」「戦車に乗ってもいい」「爆弾は一人一個まで」などとすると、ただのカオスになってしまい、面白さは失われるでしょう。
自由さが面白さを生むのではなく、制限こそが面白さを生み出します。
もっと言えば、ルールがあることで、そのゲーム独自の面白さが生まれます。
「手を使えない」というルールがなければ、サッカー独自の面白さは生まれないことがわかるでしょう。
小説も同じです。
ルールがあるからこそ、小説の面白さが一層際立ちます。
ですから、むやみに自由に書いてはいけません。
創作者の成長プロセス
ここでちょっと補足しておくと、特に初心者の方が考えている「自由」というのは、たいていは自由ではなく「カオス」のことです。
図にするとわかりやすいでしょう。↓
何も知らないまま自由に創ると、ただのカオス(むちゃくちゃ)になります。
いわば「型なし」の状態です。
実はこれは自由ではなく、ただのむちゃくちゃです。
ですので、面白くなりようがありません。
面白くしたいなら、秩序を知る必要があるでしょう。
秩序を知ると「型にはまった」状態になります。
ここが、今回話題にしている自由を制限した状態です。
そして型を熟知すると、ようやく、本当の意味で自由に創れるようになります。
これが「型破り」の状態です。
この図は、典型的な創作者の成長プロセスだと言えるでしょう。
成長したいなら、どこかの時点で必ず秩序を知らなければなりません。
ですので、上手くいかないなら、窮屈だと思うでしょうが、一度ガチガチに型にはまった方がいいのです。
ルールや定石を守ろう
さて、補足を挟んだところで話を進めましょう。
おおまかに言うと、小説は以下の4要素に分けられますが、
文章
ストーリー
登場人物
アイデア
それぞれに従うべきルールや定石があります。
「小説がむちゃくちゃになってしまう」「面白くならない」と悩んでいるようなら、もっと自由を制限し、定石を守って書くのがオススメです。
それぞれの要素について、何を守ればいいか見ていきましょう。
1.文章
文章については、最低限、以下の2つを守るといいです。
文章作法を守る
プレーンな文章を書く
文章作法はネットで調べればいいです。
以下の記事も参考になるかもしれません。↓
プレーンな文章を書くというのは、「誰にでもわかる簡単な文章」で表現するということです。
文章表現のうまい人は、とかく文章を工夫するものです。
妙なところに読点を打ったり、語順を入れ替えたり、体言止めを多用したり、ダッシュや三点リーダーで何かを表現しようとしたり、視点を頻繁に変えたり……
それも悪くはないですが、一度そういった飾りは止めて、誰にでもわかるごくごく簡単な文章で書いてみるといいでしょう。
目標は「小学生にもわかる文章で書く」ことです。
作品の雰囲気もあるでしょうから、全文をそのように書くのは難しいでしょうが、可能な限り簡単に、簡潔に、やさしく書く努力をしてみてください。
いくら美麗な文章を書いても、読者に伝わらなければ意味がないのです。
2.ストーリー
ストーリーはぜひパターン通りに書いてください。
三幕構成を守る
三幕構成といっても、ミッドポイント(中間での盛り上がり)があっていいです。
もちろん別のパターンでもいいですが、独自に解釈したり、変形したりしないで、パターンに忠実に書きましょう。
パターンを知りたいなら、これらの本が参考になります。↓
または、以前の記事をまとめてあるので、こちらを読むのもいいかもしれません。↓
3.登場人物
登場人物については以下を守りましょう。
行動原理を決め、それを守る
登場人物のキーポイントは、動機とその理由です。
動機:〜したい
理由:なぜなら〜
この2つを合わせたものが、その人物の行動原理だと考えればいいです。
(性格などを行動原理にしてもいいです)
行動原理を決めたら、最後まで絶対に変えてはいけません。
いつでも、どんな場面でも、決めた行動原理を守らせてください。
これは死守すべき重要なポイントです。
行動原理がブレると、物語の軸がブレるので、何がなんだかわからなくなってしまいます。
4.アイデア
アイデアは自由に出してもいいと思いますが、可能ならアイデアにも制限を課してみるといいでしょう。
単純に言って、アイデアとは「新規性」のことですが、新しすぎるアイデアはただの独りよがりになります。
かといって、古すぎるアイデアは、そもそもアイデアとは言えません。
ですので、アイデアは、古さと新しさの間に位置しなければならないのです。
こんな感じで考えると目安になるでしょう。↓
10人に聞いてほぼ全員が「まあ、うん」という = 古すぎる
10人に聞いてほぼ全員が「なにそれ?」という = 新しすぎる
10人に聞いて3〜5人が「それはない」という = 丁度いい
全員反対でも、全員賛成でもなく、ある程度の人が反対するくらいの新しさが適切だと思います。
可能ならここを目指してみましょう。
中間的なアイデアを出すのはかなり難しいのですが、これを意識するのとしないのとでは結果が大幅に違ってくるはずです。
今回のまとめ
小説のちょっとしたコツ「自由に書かない」でした。
自由に書いてもほとんど上手くいかない
制限こそが面白さを生み出す
初心者が言っている「自由」は「カオス」のこと
カオス→秩序→自由、が創作者の成長プロセス
一度は秩序を知る必要がある
ルールや定石をガチガチに守ってみるのがオススメ
「ルールを守ると退屈になるのではないか?」と思うかもしれませんが、そうはなりません。
逆に、ルールを守るからこそ、そのルールの中で大胆なことができるのです。
それではまたくまー。
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