アイデアが先に出る人・ストーリーが先に出る人
たまに大学で創作の授業をしています。
生徒さんに物語の案を出してもらうと、アイデアを出してくる人と、ストーリーを出してくる人の2つに大きく分かれるようです。
今回はそれぞれの特徴などを挙げてみます。
自分自身に当てはめてみると、何か発見があるかもしれません。
アイデア型とストーリー型
大学で担当しているのは長編を作る授業なのですが、最初に「どういう作品を作りたいか」を自由に出してもらっています。
話のネタみたいなものですね。
そのネタを見せてもらうと、上で書いたとおり、アイデアから考えつく人と、ストーリーから考えつく人の2つに大きく分かれるようなのです。
この2つを、アイデア型、ストーリー型と呼ぶことにします。
ここで、2つの型について見ておきましょう。
文字通りなのですが、こんな感じです。
アイデア型
アイデアから先に考えつく
だいたいは設定を思いつく
たとえば、
突然、超能力が芽生えた
目覚めたら異性になっていた
特殊な力を持ったアイテムを拾った、など
ストーリー型
ストーリーから先に考えつく
「〜が〜する話」くらいの大まかな筋を出してくる
たとえば、
少女が魔法使いになる話
自然を守るために開発業者と戦う話
追われている少女を守る話、など
みなさんにも、どちらが思いつきやすいかという傾向があると思います。
どちらにも良い点や難しい点があるのですが、途中で行き詰まりがちなのはアイデア型の人です。
一方、ストーリー型の人はそこそこ上手く進められますが、平凡な作品になりがちです。
それぞれを比較しながら見ていきましょう。
それぞれの特徴
アイデア型の人
まずはアイデア型から。
アイデア型の人の印象はこんな感じです。
才気走った感じ
みんなをアッと言わせたい
やや子どもっぽい
男子に多い気がする
総じて子どもっぽい人でしょうか。
男子に多い印象なのは、大学生のころは、男子の成熟が女子より遅れているせいかもしれません。
ストーリー型の人
ストーリー型の人の印象はこうです。
実直な感じ
確実に点数を取りたい
大人っぽい
女子に多い気がする
アイデア型と比べて、大人な印象です。
女子が多いのは、上でも書いたとおり、大学時代は女子の方が成熟度が高いからかなと思います。
特徴の雑感
基本的に、アイデアを出せる人には稚気(子どもっぽさ)があるものです。
大人になればなるほど、成熟すればするほど、考え方は保守的になり、堅実になっていきます。
勝負に出るのがアイデア型で、計算高いのがストーリー型、または波乱を楽しむのがアイデア型で、平穏に進めるのがストーリー型とも言えそうです。
それぞれの難しい点
ではそれぞれの難しい点を見ていきましょう。
アイデア型の難しい点
アイデアから思いつく人は、途中で行き詰まりがちです。
なぜかというと、アイデア型の話を終わらせるには、最初のアイデア以上のアイデアが必要だからです。
たとえば、
ある日、人の額に数字が見える能力が芽生えた
というアイデアを出したとしましょう。
展開としては、
数字が何を意味しているのか探っていく
同じような能力者が現れる
能力者を管理する組織がある
などが考えられますね。
ですが、終わらせ方を考えるのはなかなか難しいことが分かると思います。
この場合なら、おそらく、「この数字はこういう意味なんだろうな」と読者に思わせておいて、最後に「実はこういう意味でした!」と読者をアッと言わせないと終われないでしょう。
この「実はこういう意味でした」というのが終わらせるためのアイデアです。
最初のアイデアは出せても、それをひっくり返すような「終わりのアイデア」を出すのは相当難しいです。
そして、アイデアというのは、何時間考えれば出るとか、作業することで出せるとか、そういったものではありません。
出るときは一瞬で出るし、出ないときは一生出ないのですね。
アイデア型の人は、最初のアイデアは出せますが、終わりのアイデアを出せないことが多いようです。
すると、途中で行き詰まってぐだぐだのエンディングになったり、最初から別の話を作り直す羽目になったりします。
このように、アイデア先行型の話は、終わらせる難易度が高いのが特徴です。
ストーリー型の難しい点
一方、ストーリー型の場合は、そこそこ上手く最後まで進めることができます。
何をする話なのかが明確なので、結末が見えているのがその理由でしょう。
ただストーリー型にも難しい点はあります。
こんな感じの問題をよく見かけます。
予定調和なつまらない話になりがち
途中の障害を思いつきにくい
1のつまらない話になりがちはすぐ分かると思います。
結末が決まっているのは良いことなのですが、結末にたどり着けばいいと考えてしまうため、主人公に都合の良いことばかり起こしてしまうのです。
たとえば、偶然何かが上手くいく、誰かが助けてくれるなどですね。
それどころか、これといった問題が起こらない場合さえあります。
すると、山も谷もないつまらない話になってしまい、見た感想が「まあ、話にはなってるかなあ?」といった感じになってしまうのです。
2の障害を思いつかないは、1とも関係しますが、ストーリー型の人は物語を乱したくない傾向があるように見えますね。
終わりまで平穏に進めようとするのです。
ですが、それでは物語になりません。
もっと障害を配置してダイナミックに盛り上げたり、盛り下げたりしないと、面白い話にはならないのです。
生徒さんの不安は、「大きな障害を出してしまうと、予定どおりの路線に戻せないのではないか?」といったところでしょう。
このように、終わりが決まっていることは、話を完成させるにはとても役立つのですが、面白い話を作るときには少々邪魔になるのです。
難しい点の雑感
アイデア型の人は波乱を好み、ストーリー型の人は安定を望むようです。
アイデア型の人は破壊し、ストーリー型の人は構築する、と言ってもいいでしょう。
比較してみるとよく分かりますが、実は面白い話を作るには、波乱と安定、破壊と構築の両方が必要になります。
つまり、こういう感じです。
結末の安定性 = 強固で必然的な結末
途中の不確実性 = 振れ幅の大きい途中経過
この両方が備わっているのが面白い話です。
それぞれが、ストーリー型とアイデア型に対応していることが分かるでしょう。
この両方を兼ね備えた作品が面白い作品であり、この両方を備えた人が良い作家だと言えます。
物語は安定しつつ揺れ動き、ときに破壊的なことを起こしながらも、しかるべき形に収まります。
面白い作品とは、そういった両極端の性質を併せ持っているものなのでしょうね。
今回のまとめ
「アイデアが先に出る人・ストーリーが先に出る人」でした。
アイデアを出す人とストーリーを出す人の2種類に分かれる
アイデア型は
最初にアイデアから出す
波乱、破壊を好む
ストーリー型は
最初にストーリーを出す
安定、構築を好む
それぞれの問題点
アイデア型は、終わりのアイデアを出せないと終われない
ストーリー型は、予定調和なつまらない話になりがち
面白い物語には、安定と波乱、構築と破壊の両方が必要
自分がどちらの傾向にあるのか、考えてみるといいかもしれません。
私はアイデア型からストーリー型に変わり、いまはハイブリッドを目指しているところかなと思います。
それではまたくまー。
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