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人称の基本を知ろう(2)〜話者は誰か

小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。

今回は「人称の基本を知ろう(2)」です。

前回の記事はこちら。↓


前回のおさらい

最初におさらいをしておきましょう。

小説は、どこかにあるカメラから書いていくものです。

カメラの位置や性能によって、書き方が違ってきます。

その書き方の違いを「一人称」とか「三人称」と呼んでいます。

ですから「なんとか人称」というのは、要するに「カメラの違い」だということです。

初心者の方は、以下の2つのカメラだけ知っておけばいいです。

2つのカメラ位置

人物の目にカメラがある書き方を「一人称」、人物の背後にカメラがある書き方を「三人称」といいます。


また、カメラには「位置」の他に、動かせるかどうかという「性能」の違いがあります。

2つのカメラの性能

一人称では、カメラは人物の目に固定されており、動かせません。

一方、三人称では、人物の背後を基本位置として、かなり動かしても大丈夫です。


まとめるとこうなります。↓

  • 一人称

    • カメラ位置: 人物の目

    • カメラ性能: 固定

    • 書き方  : 人物が見たもの、聞いたもの、感じたものだけ書ける

  • 三人称

    • カメラ位置: 人物の背後〜離れた位置まで

    • カメラ性能: かなり動かせる

    • 書き方  : 人物が見たものも、見ていないものも書ける


ひとまず、上のような違いがあると知っておけばいいです。

それでは今回の話をはじめましょう。


誰が書いているのか

小説を勉強し始めると、いろいろな疑問が湧いてくるものです。

なかでも、「地の文って誰が書いているんだろう?」という疑問を持つ人は多いと思います。

いったい誰が書いているのでしょうか?


図にするとわかりやすくなります。↓

一人称において地の文を書いているのは、目がカメラになっている人物本人です。

誰か別の人が記述しているのではありません。

一人称における登場人物は、自分で見ながら、聞きながら、感じながら、体験しながら、そのことを逐一文章にしているわけです。

一人称の場合

つまり、一人称では、登場人物本人が、話を語る「話者」だということになります。


一方、三人称ではこうなります。↓

三人称の場合

三人称で地の文を書いているのは、カメラを覗いている人です。

この人が誰かというと、作者とか話者ですね。

登場している人物が地の文を書いているのではありません。

三人称では、人物の言動を記述する「話者」が別にいるのです。


もちろんですが、「話者」は小説には登場しません。

話者はあくまでも、人物の言動を記述する透明な存在なのです。


以上をまとめると、こうなります。↓

  • 一人称

    • 登場人物=話者

    • 本人が見ながら、聞きながら、感じながら書いている

  • 三人称

    • 登場人物≠話者

    • 登場人物とは別の話者が観察して書いている

これは一人称と三人称の大きな違いなので、きちんと理解しておきましょう。


話者の違いによる情報の出し方の違い

さて、一人称と三人称では「話者」が違うということがわかったと思います。

話者の違いによって、情報の出し方にも違いがでてきます。

その違いは簡単に言うとこうです。↓

  • 一人称

    • 人物が知らない情報は書けない

  • 三人称

    • 人物が知らない情報も書ける


たとえば三人称ではこう書けます。↓

三人称
「この先が試練の間か……」
 タナカは装備を整えると、覚悟を決めて扉に手をかけた。
 試練の間では、高位の守護者が挑戦者を待っている。
 ランダムに召喚される守護者を倒した者だけが、聖剣を手に入れることができるのだ。

ですが、一人称だと知らない情報は書けないので、伝聞形式などで書かなければなりません。

一人称
「この先が試練の間か……」
 僕は装備を整えると、覚悟を決めて扉に手をかけた。
 試練の間では、高位の守護者が挑戦者を待っているという
 ランダムに召喚される守護者を倒した者だけが、聖剣を手に入れることができるという話だ


あるいは、こういう例の方がわかりやすいかもしれません。

三人称ではこう書けます。↓

三人称
「あなたは誰ですか?」
 そう尋ねた途端、タナカは背後から殴られ、気絶した。
 その後、その街でタナカを見た者はいない。(←おかしくない)

話者が別にいるので、登場人物の未来について(の未知の情報を)書いても違和感はありません。


これを一人称で書くとおかしくなります。↓

一人称
「あなたは誰ですか?」
 そう尋ねた途端、僕は後頭部に衝撃を感じ、目の前が真っ暗になった。
 その後、その街で僕を見た者はいない。(←どゆこと?)

こういった未知の情報を書く場合は、どうしても本人の他に話者が必要です。

ですが、一人称では人物=話者なので、未知の情報を扱うことができないのです。


この情報出しの問題は、前回例に出した「背後から殴られたことを書けるか」という問題と同じです。

一人称では背中側は見えないので「未知」ですね。

ですから、未知の情報を書けない一人称では、「背後から殴られたこと」を書けないのです。


この情報の出し方も引っかかるところなので、理解しておくといいですね。


今回のまとめ

小説のちょっとしたコツ「人称の基本を知ろう(2)」でした。

  1. 一人称では地の文は「登場人物」が書いている

  2. 三人称では登場人物とは別の「話者」が書いている

  3. 一人称では、人物=話者

  4. 三人称では、人物≠話者

  5. 一人称では未知の情報を書けない

    1. よって、情報は伝聞形式などで書く必要がある

  6. 三人称では未知の情報を書いていい

一人称と三人称の違いについて、だいぶはっきりしてきたと思います。

次回は一人称と三人称の「内面」の書き方についてです。↓

それではまたくまー。

(2023.3.20追記)
タイトルをわかりやすく修正しました。

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