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アイデア出し〜出版までの行程を見てみよう(1)

崖っぷち作家のニジマルカです。

本を出すまでにはかなりの行程があります。

今回から何回かに渡って、作家目線で出版までの行程を紹介していきます。


出版までの行程

本を出版するまでの行程は、ざっくりとこんな感じです。

1.アイデア出し
2.企画書づくり
3.企画会議
4.執筆
5.推敲・改稿
6.校正
7.デザイン
8.印刷
9.告知・宣伝
10.発売

それぞれ見ていきますが、今回は1の紹介で終わりそうです。


1.アイデア出し

新人賞受賞者のデビュー作はもちろん受賞作です。

ですが、受賞作を出したら、次からは編集部に企画を出さなければなりません。

企画書を出して、企画会議を通過すれば、次の作品を書くことができます。

もちろん、会議に通らなければ、ずっと書くことができません。

さて、出版社やジャンル、また担当編集者によってやり方は違うと思いますが、だいたいの企画書づくりは、2,3行のアイデアを担当さんに投げるところから始まります。


最初のアイデア

最初の数行のアイデアとは、

仮タイトル
〇〇が△△して□□する話

といった簡単なものです。

ですが、このアイデアの段階で却下される場合も多いです。

編集者さんを4層程度のフィルターだと考えると、理解しやすいでしょう。

フィルターに引っかかれば、企画書の段階まで進めないイメージです。

そのフィルターがどういうものかというと、こんな感じです。

(1)新しさやウリがあるか
(2)出版社やレーベルに合っているか
(3)市場での実績があるか
(4)担当さんの好き嫌い

それぞれ見ていきましょう。


(1)新しさやウリがあるか

まず最初に新規性ウリを求められます。

これがないと、その時点で却下されます。

「新規性」とは簡単にいうと「新しいワード」のことです。

新規性をワードの形に落とし込むということですね。
(ワードではなく、フレーズやセンテンスでもいいです)

タイトルに新しいワードを入れられるのが一番いいです。

ただし、この場合の「新しい」とは珍しいという意味ではありません。
(珍しいワードや、新しいだけのワードならいくらでも出せます)

「新しいワード」とは、「読者が求める新しい欲望を端的に表現したワード、フレーズ、センテンス」という意味です。


自分がいるエンタメジャンルはもうかなり飽和していますので、「新しい面白さがありそう」「いままでなかった気持ちよさがあるかも」と思われなければ、手を出してもらえません。

本当に新しくなくてもいいですが(新しいものなどそうそうありません)、新しそうに見える工夫は必要です。


続いて「ウリ」です。

「ウリ」とは、読者がその本を手に取る理由だと考えればいいでしょう。

読者は本を買って得しようと思っています。

「得する」とは「感動する」「わくわくする」「面白い」「興奮する」「気分が上がる」「落ち着く」……などですね。

それらの得を導く内容が「ウリ」です。

たとえば、「高貴な人たちの愛憎劇を見てハラハラどきどきしたい」という読者の得のために、「後宮での后を巻き込んだドロドロの恋愛模様」がウリになる、といった具合です。

「新しさ」がなくても「ウリ」があれば、受けつけてくれる場合もあります。
(売れるかどうかはさておき)


(2)出版社やレーベルに合っているか

出版社やレーベルには、それぞれにその出版社らしさやレーベルらしさがあるものです。

雰囲気といってもいいですね。

レーベルの場合、その「らしさ」のことを、レーベルカラーといいます。

出版社は出す本をコントロールして、だいたいのカラーを決めています。

ですから、そのカラーから逸脱した本は、そもそも出しません。

たとえば、高校生の初恋みたいな話が多いレーベルなら、略奪愛とか浮気、不倫などがテーマの小説は出さないですよね。

ですので、レーベルカラーと違うアイデアを出しても、だいたいは却下されます。


(3)市場での実績があるか

市場での実績とは、過去に同じような本が売れたことがあるかどうかです。

過去にまったく売れなかったテーマの本は、当然、出したがりません。

ジャンルによっては、必ず失敗する地雷のようなテーマがあったりします。

例外はあるにせよ、そのジャンルではほぼうまくいかないテーマや要素があるのですね。

何が地雷なのかは、毎月出版される本の売上を追いかけていれば、自然にわかってきます。
(売れないので)

マンガやアニメ、映画ではうまくいくアイデアでも、小説ではうまくいかないことがあります。

その逆もありますね。

ですので、別ジャンルの売れた作品からアイデアを持ってきても、うまくいかない場合も多いです。

そういうわけで、過去にまったく売れなかったテーマや、ジャンルの地雷を踏んでいるアイデアを出しても、だいたいは却下されます。


(4)担当さんの好き嫌い

担当編集者さんも人間なので、好き嫌いがあります。

これは仕方がないです。

ただ、編集者さんはプロですから、好き嫌いが理由で却下されることは、ほぼない印象です。

ただ、新人作家さんほど、アイデアが却下されたとき、「担当さんが好き嫌いで判断している!」と考えてしまうものです。

これは本当に気をつけた方がいいです。

こう考えてしまうと、どんどん担当さんへの疑念が膨らんでしまうのですね。


出しても出して却下されると、次第に不満がつのってきます。

だいたい引っかかっているのは(1)の「新しさやウリがあるか」です。

ですが、「担当さんが好みで決めている」と考えてしまうと、理不尽なことをされているような気になってくるのですね。


それが高じると、最終的には担当さんと敵対することになります。

こうなったら最悪です。

担当さんと不仲になったせいで、レーベルからいなくなったり、書かなくなってしまった作家さんはけっこういます。

もし、読んでいる人の中に新人作家さんがいたら、却下の理由は、ほぼ「新しさやウリがない」ことだと、肝に銘じておいた方がいいです。

どの作家の担当になるかは立候補が多いようですから、担当さんというのは基本的に「あなたの作品が好きな人」です。

つまり、あなたの味方なのですね。

うまくいかないと担当さんに八つ当たりしたくなりますが、「担当さんは味方だ」ということを忘れないようにするといいと思います。

アイデア出しの段階で却下され続けると、次第に心が荒んできます。

でも却下の理由は単純です。

アイデアが悪いのです。

そのことを認めて、また考え直しましょう。


今回のまとめ

出版までの行程を見る1回目「アイデア出し」でした。

1.企画書づくりの最初はアイデア出し
2.担当編集者さんをフィルターと捉えると理解しやすい
3.却下の理由はほぼ「新しさやウリがないから」
4.担当さんは味方だということを忘れない

次回は「企画書づくり」です。↓

それではまたくまー。

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