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あらすじを分析する〜受賞する小説のつくり方(3)

崖っぷち作家のニジマルカです。

「受賞する小説のつくり方」3回目です。

2回目はこちら。↓


前回のおさらい

前回は、売れた作品の調べ方を説明しました。

オリコンを見て、データを集めるのが基本です。

これはほとんどの作家志望者がやっていないと思うので、これをやるだけで新人賞の勝率を格段に上げることができるでしょう。

売れた作品というのは「受け入れられた作品」のことです。

つまり図で言うと、色の濃い辺りの作品群ですね。↓

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まずはここに位置する作品を知り、受け入れられる作品がどういう構造になっているかを知ることが重要です。

では、今回はこれらの作品のあらすじを分析してみましょう。


売れた作品の実例データ

実例がないとわかりにくいと思うので、以下のような条件でデータを調べてみました。

ジャンル:ライト文芸
レーベル:富士見L文庫
出版年 :2020〜2022年
※新シリーズのみ

目指しているジャンルがライト文芸で、該当するレーベルの新人賞に出しているという想定です。

今回は富士見L文庫を調べてみました。

こういった作品が売れているようです。↓

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どれも売れているのですが、『白豚〜』と『龍に〜』が特に売れています。


あらすじの構造を見る

では、作品のあらすじを読んで、その構造を見ていきましょう。

やり方は簡単です。

1.あらすじを5W1Hで整理する
2.あらすじを抽象化する
3.構造を図にする
(可能なら)
4.他の作品も調べ、共通の構造を見つける

順番にやっていきましょう。


1.あらすじを5W1Hで整理する

あらすじはこれを使わせてもらいます。↓
(最近の作品なので、あらすじは画像にしておきます)

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では5W1Hで整理してみましょう。

誰が   :腕利きの女用心棒が
いつ   :王朝時代?
どこで  :花街から後宮に行き
なぜ   :大貴族に誘われたため
どのように:用心棒としての腕で
何をして :妃を守り
どうなる話:大貴族や妃に認められ、己の過去と向き合う話

主人公は過去に宮廷と関係があり、どうやらやんごとなき身の上のようです。

「どうなる話」というのは、結果として主人公にどういう良いことが起こるかです。

簡単に言うと、主人公が得る利益ですね。

だいたいにおいて、主人公の利益が読者の利益(読者が欲しいもの)になるので、これも見ておくといいです。

ただ、あらすじからは読み取れないこともあるので、余裕があれば実際に本を読んでみるといいでしょう。


2.あらすじを抽象化する

次にあらすじを抽象化します。

抽象化とは、細かいところをぼやけさせ、おおまかな形として捉えることです。

情報量を下げると言ってもいいですね。

実際に例を見ればわかると思います。

上で出した要素をそれぞれ抽象化してみましょう。

腕利きの女用心棒が  → 技能を持った主人公が
王朝時代?      → ある時代に
花街から後宮に行き  → 下の場所から上の場所に行き
大貴族に誘われたため → 上の者に誘われたため
用心棒としての腕で  → 自分の技能を活かして
妃を守り       → 働き
大貴族や妃に認められ → 上の者たちに認められ
己の過去と向き合う話 → 過去(実は上位者)に向き合う

これらをつなげると、抽象化したあらすじはこんな感じになります。↓

【抽象化したあらすじ】
過去に高い身分だったが今は技能で仕事をしている主人公が、上の者に誘われて下の場所から上の場所に行き、そこで働いて上の者に認められ、己の過去に向き合う


3.構造を図にする

可能なら、抽象化したあらすじを図にしてみるといいです。

図にすると構造がわかりやすくなります。

上のあらすじはこんな感じでしょう。↓

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上下は身分の差、舞台の差です。

左右は過去→物語が始まる前→現在という時間軸です。

要するにこの話は

過去 :元々上位者の主人公に何かが起こり、
少し前:下位の場所で働いて技能を身につけ、
現在 :偶然、上位の場所に戻って活躍する

という構造だとわかるでしょう。


4.他の作品も調べ、共通の構造を見つける

続いて、同じように他の作品も調べていくわけですが、ざっと見たところ、上と似たような構造の作品がありました。

『白豚〜』は、

過去 :後宮から冤罪で追い出された主人公が
少し前:ひどい場所を転々として生きる術を身につけ
現在 :偶然、女官として後宮に戻って活躍してしまう

という構造になっています。

上の作品で見た構造とほぼ同じですね。

他の3作はちょっと違うのですが、この2作には共通した構造があるようです。

売れている作品に共通する構造があるのですから、おそらく、この構造が読者が好きな物語構造の一つではないかと推測できるわけです。


読者が好きな構造を使う

このようにあらすじを抽象化していき、多くの作品に使われている共通の構造を見つけられれば、それが「読者が好きな物語構造」の可能性が高いです。

ですから、自分の作品にその構造を使えばいいのですね。

一度、抽象化するのは、具体的な要素に惑わされないためです。

具体的な要素を真似すると、ただのパクリになってしまいます。

ですので、ふんわりと形だけ真似するのです。

以下の要素を変更すると、かなり違った作品にできます。

・ジャンル
・時代
・場所

たとえば、今回抽出した物語構造を現代でやろうとすれば、それだけでまったく異なる作品にできるでしょう。
(上手くいくかどうかは別として)


今回のまとめ

受賞する小説のつくり方3回目「あらすじを分析する」でした。

1.手順に従って、あらすじから構造を抽出する
2.多くの作品に共通する構造があれば、それが読者が好きな物語構造
3.具体的な要素を真似するのではなく、物語の構造を真似する
4.要素を変更すれば、全く別の作品にできる

あらすじを抽象化して構造を抽出するにはかなりの慣れが必要です。

何度も試して、ぜひコツを掴んでください。

次回は「中間まとめ」です。↓

それではまたくまー。

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