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創作の授業でよく見かける上手くいかない作品例3つ
何年か創作の授業をしていると、「あ、これは途中で行き詰まるな」という作品が分かってきます。
そういった作品は途中で考え直さないと、ほとんどの場合は上手く着地できません。
今回は、生徒さんの作品でよく見かける上手くいかない例をご紹介します。
上手くいかない作品
授業は日数が限られていますので、だいたいは最初の案で最後まで進める生徒さんが多いです。
ですから、最初の案の時点で、上手くいくかいかないかは、ある程度予想がつきます。
上手くいかない作品としては、以下のようなものをよく見かけますね。
設定
ズレた設定や考えられていない設定人物
登場人物が少ない物語
ふわっとしている
それぞれ簡単に見ていきましょう。
1.設定に問題がある
1つ目は設定に問題がある作品です。
設定関連は、
ズレている設定
考えられていない設定
の2つに大きく分かれるようです。
1のズレている設定というのは、最初から設定ありきで案を出し、そこにストーリーを適用しようとしたときに起こりがちです。
以前の記事でも書きましたが、「最初のアイデアを捨てられない」問題と似た問題だと思います。
本人は「秀逸な設定」だと思っているのですが、こちらからは「その設定のせいで、やりたいことが伝わってこない」ように見えるのです。
説明するのは難しいのですが、図にするとわかりやすくなるかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1690799870315-UxYtXY6DBM.png?width=1200)
左のように、テーマ(やりたいこと、伝えたいこと)と設定がぴったり合っていると、設定を介して適切にテーマが伝わってきます。
ところが右のようにテーマと設定が離れていると、上手く伝わってきません。
設定とテーマの間にスキマがあるため、がっちりかみ合わず、空回りした印象を与えるのです。
テーマと設定がズレていると言ってもいいでしょう。
この状態になるのは、上でも書いたとおり、最初に設定を考え、そこにストーリーをやや強引に当てはめた場合が多いと思います。
ただ、ズレているとは言え、ちゃんと設定は考えてあるので、本人に説明してもなかなか理解してもらえないようです。
(問題は設定にあるのではなく、設定と伝えたいことのズレです)
ですので、だいたいはそのまま完成させてしまいます。
すると、最初から最後までずっとズレっぱなしの作品になってしまうのです。
2の考えられていない設定は、それらしい設定はしてあるものの、ツッコミが入りまくるタイプです。
整合性が取れてなかったり、理由や理屈が通っていない設定ですね。
ファンタジーっぽい話を考える生徒さんに多いです。
たとえば、「主人公たちは閉鎖された地域で生活させられているが、外の世界のことを知り、やがて旅立っていく」みたいな話だとしましょう。
話自体はいいのですが、そもそも、そういう設定が成立するにはいろいろ考えなければならないことがあります。
たとえば、以下のような疑問が浮かんでくるでしょう。
どうやって閉鎖されてるの? 物理的? 何かの魔法?
なんで主人公たちはそんな扱いを受けてるの?
主人公はそこから逃げたいというけど、いままでなんで逃げなかったの?
外から誰かがやってくるというけど、その人はなんで閉鎖地域に入れたの?
その地域を管理している組織があるの? 国家?
国家にとって、そんな地域を作る理由ってあるの?
これらを全く考えないまま話だけ進めても、読者は上のような疑問が浮かんで話に集中できません。
「なんでこうなってるの?」という疑問はあってもいいのですが、それを適宜解消してあげないと、読者は読む気をなくしてしまいます。
2.登場人物が少ない
2つ目は登場人物が少なすぎる作品です。
登場人物が2人しかいない、といった作品をたまに見かけますが、人が少ないとドラマを起こすのが難しくなります。
単純に、衝突のバリエーションが少ないからです。
すると話は停滞してしまい、展開させようとすると無理矢理感が出てくるのです。
慣れている人なら2人でも(あるいは1人でも)なんとかできるでしょうが、初心者がやるには難しすぎます。
長編ならせめて3〜5人は主要な人物がいた方がいいでしょう。
以下程度の登場人物がいれば、なんとかなります。
主人公
仲間
主人公を助けてくれる人たち
援助者
主人公を導く人
敵対者
主人公と敵対し、邪魔する人
パートナー
主人公とともに行動する人
登場人物は少なすぎても難しいですし、逆に多すぎても扱いきれません。
ちょうどいいくらいの人数を揃えておくと、問題を起こしやすく、展開にもバリエーションが作れるようになります。
3.物語がふわっとしている
3つ目は話がふわっとしている作品です。
以下のような作品がよく見受けられます。
敵が抽象的
内面の解決がゴール
1の敵が抽象的というのは、敵に実体がなく、たとえば敵が体制だったり、環境だったり、社会だったりする場合です。
「管理社会の権力構造をぶっこわす」
「学校という体制に反旗を翻す」
「疎外感を与える社会に異議を唱える」
これらは話としては分かるのですが、倒すべき敵が曖昧すぎて、物語にしにくいです。
解決方法は簡単で、それらを代表する人物を敵対者にすればいいでしょう。
たとえば「管理社会の構造をぶっこわす」話なら、管理社会の長や黒幕を敵対者にして、そいつを倒す話にすればいいです。
敵がふわっとしていると、物語全体もふわっとしてしまうものです。
2の内面の解決がゴールという話もよく見かけます。
内面を解決する話というのは、「やりたいことを見つける」とか「自分の弱さに気づく」といったことがゴールの話ですね。
これはなかなか難しいです。
内面の話は、自分自身の弱さや劣等感などが、言わば敵になる場合が多いので、上で書いた「敵が抽象的」と同じく、物語にするには工夫が必要になります。
この手の話で生徒さんがよく出してくるのは「夢」です。
夢の中で誰かに出会い、なんやかんやあって、何かに気づく、といった構造ですね。
悪くはないですし、上手く処理できればそれでもいいのですが、夢はやはり夢であり、現実より物語的な強度は弱いです。
安易に夢を使うと、話は弱くなりがちなのですね。
できれば主人公を現実の問題に直面させ、その中で痛みを伴いながら何かに気づかせたり、解決させたりするといいでしょう。
内面の解決をゴールにする場合でも、外面の解決を経由させるわけです。
その方が読者としても読み応えがあります。
今回のまとめ
「授業でよく見かける上手くいかない例」でした。
最初の案で上手くいくかいかないかがだいたい決まる
設定関連
ズレた設定
考えられていない設定
人物関連
登場人物が少なすぎる
多すぎても扱いきれない
物語関連
敵が抽象的
内面の解決がゴール
生徒さんのやりたいことを実現できるようサポートしているつもりですが、なかなか難しいです。
教えるより、書いている方が楽ですね笑。
それではまたくまー。
(2023.8.7追記)
わーい!
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