たまには執筆プロセスを見直そう〜アイデアとは「読者が欲しがる新しさ」
執筆プロセスを見直すシリーズの3回目。
前回はこちらです。
アイデアについて知る
前回は準備工程の「アイデア出し」について説明しました。
ですが、そもそも「アイデアとは何か」を理解することが難しいのでしたね。
多くの人にとって、アイデアというのはよくわからない曖昧なものです。
ですので、アイデアについての理解を深めるため、以下のように考えてみることにしました。
when:アイデアに注力するタイミング
what:そもそもアイデアとは何か
how:どうやって出すか
前回は1をやりましたので、今回は2について説明していきます。
what:そもそもアイデアとは何か
アイデアとは何かと問われて、即答できる人は少ないと思います。
多くの人にとって、アイデアというのはどうも曖昧なのですね。
結論から言うと、小説におけるアイデアとは、
新しくて
読者が欲しがる
提案のことだと考えればいいです。
1の新しさだけでも、アイデアだと言っていいでしょう。
さらに2が満たされると、「ただのアイデア」が「良いアイデア」に変わります。
それぞれ簡単に説明していきましょう。
1.新しさ
作品に新しさがあれば、アイデアのある作品です。
アイデア = 新しさ
とりあえず、新しければなんでも構いません。
新しさの作例を挙げるのは難しいのですが、たとえば、以下のような作品はひとまず新しそうに見えるので、これらはアイデアのある作品だと言っていいでしょう。
昆虫同士の恋愛ストーリー
『あの夏、蝉とカブトが出会った 〜鳴いてるばかりじゃいられない〜』釈迦が探偵のミステリ
『僧侶探偵ブッダちゃん 犯人悟っちゃったんですけど?』悪霊退治の青春ホラー
『憧れの先輩が耳なし芳一だった件 それタトゥーじゃなかったんすね』
ところで、新しさとは何でしょうか?
新しさとは、
今までなかった
という性質のことです。
当たり前ですが、過去の作品に同じものがあれば、新しくはありません。
ですから、新しさ(=アイデア)を出すには、過去にどういった試みや提案があったのかを知らなければならないのです。
ここまでを一旦まとめておきましょう。
こうなります。
アイデア = 新しさ
新しい = 今までなかった
そして、今までなかったかどうかを知るには、
過去の作品を調べる
となります。
ひとまずは難しく考えず、新しければアイデアなのだと単純に考えておけばいいです。
2.読者が欲しがる
さて、アイデアとは新しさのことでした。
新しさ = (ただの)アイデア
ここに「読者が欲しがる」という条件が加わると、
読者が欲しがる + 新しさ = 良いアイデア
となります。
新しさだけでは「ただのアイデア」です。
「読者が欲しがる」という条件を満たすことで、「ただのアイデア」が「良いアイデア」に変わるのです。
たとえば上で出した作例、
『あの夏、蝉とカブトが出会った 〜鳴いてるばかりじゃいられない〜』
には新しさはあります。
おそらく、こういった作品は過去にもあまり無いでしょう。
ですから、アイデア(新しさ)のある作品なのは間違いありません。
ですが、この作品が「読者が欲しがる」かどうかと考えると、たぶん誰も欲しがらないでしょう。
ネタ的に読みたい人はいるでしょうが、そういう人は常に少ないのです。
読書のコストとベネフィット
読者が欲しがるものとは何かを考えるため、少し遠回りして見ていきましょう。
なぜ、ネタ的な作品を読む人は少ないのでしょうか?
それは、損する可能性が高いからです。
読書とは、
時間やお金といったコストを掛け
楽しさや興奮といったベネフィット(利益)を得る
ための行為です。
投入したコストより、得られるベネフィットの方が大きそうだと予想できたとき、人は本を読みます。
読むコスト < 予想されるベネフィット → 得するので読む
反対に、利益が少なそうな作品や、まったく利益を予想できない作品に手を出すことはありません。
読むコスト > 予想されるベネフィット → 損するので読まない
ベネフィットが予想できない → 損しそうなので読まない
つまり、こういった作品は「読者が欲しがる」作品ではないのです。
単純にまとめると、
読者が欲しがる = 読むと得する
読者が欲しがらない = 読むと損する
となります。
作例を考える
では、先ほどの作品を冷静に考えてみましょう。
『あの夏、蝉とカブトが出会った 〜鳴いてるばかりじゃいられない〜』
この作品はただキャラが昆虫になっただけの、ありきたりな恋愛話です。
最初は多少面白いかもしれませんし、昆虫の知識も手に入るかもしれませんが、二匹の恋に共感することも、蝉に感情移入することも難しいでしょう。
おそらく、途中で飽きてしまいます。
ですから、ベネフィットはかなり少ないと予想されますね。
つまり、読めば損する可能性が高いのです。
当然ですが、損する可能性の高い作品に手を出す人はいません。
実際のところ、本気で、蝉とカブト虫の恋愛話を読みたい人はいないということです。
ですので、この作品『あの夏、蝉とカブトが出会った 〜鳴いてるばかりじゃいられない〜』は、予想される利益の少ない作品であり、「読者が欲しがる」という条件を満たさない、ということがわかったと思います。
ここまでをまとめておきましょう。
アイデア = 新しさ
良いアイデア = 読者が欲しがる + 新しさ
読者が欲しがるのは「読むと得する」作品です。
そして「読むと得する」作品は、
利益を予想でき、
しかも、その利益が掛けたコストより大きい
という2つの条件が満たされた作品ということになります。
小まとめ
さて、ここまでで、アイデアの正体がだいぶ明快になったのではないでしょうか。
アイデアとは「新しさ」であり、良いアイデアとは「読者が欲しがる新しさ」です。
ちょっとややこしかったかもしれませんが、これがわかると、自分の作品が上手くいかない理由がわかります。
そもそもアイデア(新しさ)がなければ、他の作品との違いがわからず、認識されません。
またアイデア(新しさ)はあっても、読者が欲しがるものでなければ、読んではもらえません。
ですから、目指すべきなのは、良いアイデア(読者が欲しがる新しさ)のある作品なのですね。
というところで、今回の「what:アイデアとは何か」は終わりです。
今回のまとめ
執筆プロセスを見直すシリーズ3回目「アイデアとは読者が欲しがる新しさ」でした。
アイデアとは
新しくて
読者が欲しがる
新しさとは「今までなかったもの」
今までなかったものを知るには既存の作品を調べる必要がある
良いアイデア = 読者が欲しがる + 新しさ
読者が欲しがるのは「読むと得する作品」
読むと得する作品は
利益を予想でき
その利益が掛けたコストより大きいもの
目指すべきは良いアイデアのある作品
これくらいわかれば、だいぶ見通しが良くなったのではないかと思います。
次回は「how:ではどうやってアイデアを出すのか」の予定です。
それではまたべあー。
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