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PTAとどう向き合う?

去年から我が子の学校のPTA役員をしています。PTAについては、どの地域でも今が過渡期と言えるのではないでしょうか。コロナ禍で様々な行事が中止になっていることもそうですが、保護者が多忙でPTA業務を担う人材が不足しており、維持が難しいというのが現状だと思います。

保護者の立場と教員の立場、両方から「PTA活動」というものを眺めてみて、いろいろ思うところがあるので、今回は「PTAとどう向き合う?」というテーマで書いてみたいと思います。
(ちなみに私は、自分が教師であることをママ友やPTA役員仲間に公言しています。これは、お互いに嫌な思いをしないための配慮です。)

PTAなんて必要ないと思っていた

上の子が保育園に入ったとき、「1人の子どもにつき、1回は役員をしなければならない」というルールがありました。保育園は、当然のことながら、保護者がみんな働いています。生まれたばかりの赤ちゃんがいる家庭もあり、正直、保護者会活動なんて無ければいいのに…と思っていました。

役員の仕事を分散させるため、上の子の学年では、役員の人数を増やすという対応を取りました。すると、年長の時に役員が足りなくなり、2回目の役員をしなければならないことになりました。みんな、2回目なんてやりたくありません。自分が役員をできない理由を探したり、なんとか他の人にやってもらおうと牽制し合ったり…今思うと、何をやっていたんだろうと反省します。誰にとっても気持ちの良いものではありませんでした。

上の子の役員、結局2回目を引き受け、夏祭りの担当になりました。「夏祭りなんて大変…。年長の役員は全体を取りまとめなくてはいけないし…。」と思っていたのに、役員メンバーで地域の公民館に集まって試作したり、一緒にチケットを作成したりしているうちに、いろんな話をしてどんどん仲良くなりました。最後には、異学年の保護者も一緒に飲み会をして、たくさんの人とのつながりができました。

保護者会活動に積極的に関わる

下の子の時には、役員決めで上の子の時のような雰囲気にはしたくないと思い、すすんで役員を引き受けました。「義務だから仕方なくやる」のではなく、「せっかくやるのだから楽しもう」という気持ちで臨むことにしました。そういう気持ちになったきっかけは、会長を引き受けてくれた人の考え方です。

保護者会活動やPTA活動って大事。役員の活動をしていると、子育ての仲間が増えるし、子どもたちの通っている保育園や学校をよりよい場にするために一緒に考えることができる

私は、とても納得しました。子育てをしていると、いろいろな不安に襲われることがあります。うちの子、成長が遅いんじゃないか、いつも寝てくれない、育児と仕事の両立が大変…みんなどうしてるの?保護者同士で話すと、「なんだ、うちだけじゃないのか」と心が軽くなるから不思議です。先輩ママやパパの話もとても参考になります。

下の子の学年では、気持ちよく役員を終えて卒園することができました。今でも、子どもが保育園のころに知り合った人とは、地域の様々なところで関わり、助け合っています。

小学校のPTA活動に関わる

小学校でも、「1人の子どもにつき1回の役員」というルールがありました。私は、去年、大学院派遣研修で通常勤務よりも時間が取れそうだったので、PTA役員を終えてしまおうとメンバーに入りました。

すると、そこにいた人たちがすごい人たちでした。去年はコロナ2年目。PTA業務をどんどん効率化しようと創意工夫しているところでした。やらされているという感じは全くなく、「できることをできる人ができる範囲でやる」をモットーにしています。

PTAの業務効率化

PTAの業務効率化は、1年では決して為しえることができません。業務を把握するだけで1年かかるからです。そのため、多くの人がとにかく前年度と同じことを無難に行うことで1年を乗り切ろうとします。でも、それでは悪しき伝統が受け継がれてしまいます。

新しいことを始めようとすると、話し合いに時間がかかったり、中心的に行う人の負担が増えたりします。だから、なかなか変わっていかないのだと思います。

うちの子どもの学校では、「PTAの業務効率化をする」という目的をもって、子どもの人数とは関係なく何年も連続でPTAに入ってくれている人がいます。本当にありがたいことでした。そんな中で、行われた改革は以下のようなものです。

①LINE WORKSの活用

PTA関係の書類を紙やUSBで管理していませんか。USB紛失は大変な個人情報漏洩になります。また、ウイルスなどの心配もあります。
そこで、LINE WORKSを利用して、PTAの書類をクラウド上で管理することにしました。みんなが、いつでも閲覧できるので、チェックも簡単で負担が大幅に削減されました。USB紛失の心配もありません。
(データは、その年度のPTA役員のみ閲覧できる状態にしています。かかる費用はPTA会費で賄います。)

②Kintoneで保護者の情報を一括管理

保護者から、毎年メールアドレスを集めたり、役員の経験回数を把握するのにこれまで膨大な手間がかかっていました。(学校に問い合わせがくることもありますが、個人情報なので教えられません。電話連絡網も今は無い学校が多いですから、保護者同士の連絡が本当に取りにくくなっています。)
うちの学校では、Kintoneというサービスを利用することにして、情報管理がとても楽になりました。(Kintoneにかかる費用もPTA会費から支払います。)

③行事の精選

コロナでPTA行事が行いにくくなっている現状です。これまでの慣例を見直し、本当に必要なもの・維持できるものに厳選することにしました。保護者同士の親睦や地域活動に参加する意義もあるので、何でもやめればよいということではないと思います。学校に関わりたいと思ってくださる地域の方の気持ちも受け止めながら、負担の少ない形での実施に転換できるように話し合っています。

④組織改変

PTA活動に必要な人数を絞り込み、仕事を減らしました。一番大きなものは、クラス委員の廃止です。昔は、クラスごとに親睦会などがありましたが、現在はコロナでそういった会が開けなくなりました。また、1年の終わりに先生にプレゼントをしたり寄せ書きを渡したりという文化も消えつつあります。ということで、クラス委員をなくしましたが、特に困ったことはなく、だいぶ仕事内容がすっきりしました。

⑤プリントパックの活用(印刷の外注)

PTAの大変な仕事の1つがPTA総会です。コロナ禍で書面総会になりました。これだけでもかなりの業務軽減です。
議案書は紙で配布し、QRコードからgoogleフォームで投票します。集計もとても楽です。
議案書は、プリントパックで外注しました。これまで、役員が印刷して1枚ずつ重ね、ホッチキス止めするという作業を行ってきました。外注ならば、pdfを送るだけでこの全てを行ってくれます。

⑥過去の資料を廃棄

過去の資料を整理するのもとても大切な仕事です。何年も前の個人情報をどっかりファイルに入れて次の年の人に渡していませんか?
必要のないものをシュレッダーして捨てることも大事な仕事です。必要のないものを捨てて、どこに目を通せばよいかすぐに分かるようにするのも、業務効率化の1つだと思います。(コロナ前の資料を全部捨てると困ると思うので、それは1年分くらいは取っておくことをお勧めします。)

⑦連続で担当することを推奨

PTA役員で面倒な業務の1つが「引き継ぎ」です。2年連続で担当すると、引き継ぎが不要になるだけでなく、昨年の反省を生かした仕事ができることになります。すると、業務効率化が進みます。1年目の人が「これやめましょう」とはなかなか言えないですが、2年目なら「これはやらなくてもいい」とか「別の方法でもできる」と言いやすいです。

うちのPTAでは、「2年以上連続で同じ役職を引き受ける人に優先権を与える」というルールを作りました。子どもが2人、3人いる人の多くは「新しい仕事を覚えるのが大変だから、連続でやっちゃおう!」となります。そうすることで、PTAの仕事に慣れた人が増え、仕事がやりやすくなります。

⑧ボランティアサークル化

これまで、ベルマーク係がありましたが、「作業量の対価として見合わない」「学校のためになるとはいえ、保護者も暇ではない」という声が挙がり、廃止の方向で話が進んでいました。すると、「インクのカートリッジなどは高額商品と交換できるから、無くして欲しくない」との声が挙がりました。
どうしたらよいでしょう。これに対して、「子どもの委員会活動にすればよい」という声もありましたが、既存の委員会があるので、新しい委員会活動を立ち上げる余裕もありません。
そこで、ボランティアサークル化するという方向で話が進んでいます。時間があるから、「ベルマークの作業に貢献したい」という声があれば、その人たちにやってもらおうということです。
自分はやらないけど、誰かやってほしいという意見は通りません。当然のことです。ボランティアが集まらなければ、ベルマーク活動は無くなります。でも、それでよいと私は思います。
(ちなみに、6年生の卒業を祝うための保護者活動もサークル化しました。それで、成り立っています。)

⑨PTA運営委員会をZOOM開催や書面開催に

運営委員会の開催時間を平日の昼間にしてほしいと副校長から言われ、昨年度までは、そうしていました。でも、仕事をしている人は仕事を休んで参加しなければなりません。ZOOM開催にしたことで、参加しやすくなったことは確かですが、それでも、働いている人が多い中で難しいことに変わりはありませんでした。

しかも、気心の知れたメンバーならまだしも、初対面の人が30名くらいZoomで集まった状態では、なかなか活発な意見交換ができません。そこで、書面開催に変更しました。

議題と内容が書かれた書面データをLINE WORKSで配布し、googleフォームで回答します。こうすると、意見がたくさん入力されました。本部役員は、Zoomで集まり、これらの意見を集約します。協議→審議という流れを取るので、これで不満が出たり、問題が起きたりということは起こりませんでした。今年度は、運営委員会や活動報告集約の回数を少なくしています。また、本部役員の意見集約は、休日の午前中に行っています。

そこまでしてPTAって維持する必要があるの?

PTAの業務効率化、挙げてみたら意外とたくさんありました。私の学校の本部役員の皆さん、本当にすごい方たちばかりで頭が下がります。私が、教員をしながら役員を続けられるのも、この役員メンバーの皆さんのおかげです。

でも、そこまでしてPTAって維持する必要があるの?と思う方もいるのではないでしょうか。私は、目的をもう一度捉え直した上で、維持していくことが必要だという考えです。

昔は女性が家庭にいて、学校の教育活動に関わりたかった。子どもの余暇の楽しみも限られていて、地域の保護者が協力して子どもたちのために楽しい活動を用意してあげることに意味があった。また、教員と保護者の距離も、昔はとても近かった。一緒にスポーツで汗を流し、飲み会に出かけていきました。保護者と一緒に地域の運動会やもちつき大会に先生が参加することで、学級経営が円滑になっていて、教師側にもメリットがたくさんあったのだと思います。

でも、時代は変わりました。正直言って、教員がPTA会費を支払う意味は分からないし、休日にPTAに参加する余裕はどこにもありません。(通常業務が業務時間内にとても終わらないのですから。)

でも、子どもたちは地域で育っています。自分の子だけがいい思いをすればよいという考えで、子育てがうまくいくとは到底思えません。

中には、自分の子を育てるだけで精一杯の人がいます。以前勤務した学校で、PTA役員が決まらなくて、「担任の先生くじを引いてください」と言われました。引いたくじで当たったのは、父子家庭のお父さん。青ざめた顔で、「え、PTAなんてできないですよ。」と言います。でも仕方ない。くじだから…。私は、そのときの光景が忘れられません。

じゃあ、みんなやらないことにすればいいじゃないと、思うかもしれません。「うちはPTAに入りません。会費も払いません。代わりに、PTAから配られる記念品もいりませんから。」という人もいます。でも、PTA会費で記念品を買っているわけではないのです。地域の子どもを、自分の子どもの通う学校の保護者で一緒に見守りましょうという活動です。行き帰りの安全を守ってくれる人たち、あいさつしてくれる近所の人…たくさんの地域の人と関わって子どもたちの教育活動は成り立っています。

生活でいっぱいいっぱいの人に、「PTA1人1回必ずやること」を義務付ける必要はないと思います。今は、全員加入のPTAもいずれはその原則が維持できなくなるでしょう。でも、そうなったときに「大変だから、入らない」「メリットがないからやらない」みたいな人ばかりにならないでほしいと切に願います。

仕事を精選し、役員ができる人はやる。
役員をできない人は、PTA会費のみ払う。
あったらいいなと思う活動は、サークル化する。

このような形で良いと思います。PTA活動は、社会貢献活動です。地域のつながりが減っている今、地域の教育力や保護者同士のつながりを大切にすることは、必ず子どもたちのためになります。また、活動への参加は、自分自身の世界を広げてくれるはずです。無理のない形で、楽しんでできるPTAが広がってくれたらと思います。

おわりに

今日は、PTA活動について書いてみました。地域にあまり関わってこなかった人も、子どもが小さくてこれからが心配な人も、ぜひ前向きにPTA活動に参加してもらえたら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。