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【取材】 デュシェンヌ型筋ジストロフィー20代男性「自分のやりたいことを我慢せずにできるようになりました。」

難病患者へのICT機器導入支援に取り組んでいる、新潟県地域おこし協力隊の丸山です。

今回は、『難病患者へのICT機器導入支援』のアドバイザーである国立病院機構新潟病院から、早川竜生作業療法士(以下、早川OT)にご協力をいただき、新潟県内のご自宅にて生活されているデュシェンヌ型筋ジストロフィーを患うAさん(20代男性)と、お母様にお話を伺うことができました。

Aさんは音声で様々な機能が使える「スマートスピーカー」を日常生活の中で活用しています。

スマートスピーカー:音楽やラジオを楽しめたり、薬の時間を知らせてくれたり、スマーフォンに電話ができたり、声で家電を動かすことができる、音声認識AIアシスタント機能付きのスピーカー

この機器の導入によってAさんの生活がどのように変化したのかについて、お話を伺いました。

神経難病患者さんや、そのご家族、医療・福祉関係者、福祉政策に携わる自治体・政府関係者をはじめ、生活の質を向上させたい全ての方にとって必見の内容です。ぜひご覧ください。


概要

Aさんの身体状況

・マスク型呼吸器を終日装着
・下肢機能低下(歩行、座位移動は不能/日中の大半は車椅子乗車)
・手(指)は動かせるが、腕は自力では伸ばすことが難しい

現在使用している機器と機能

スマートスピーカー(Google Home)
・音声でテレビを操作
・家族と電話

パソコン+外付けのトラックパッド
・ゲーム
・インターネット
・YouTube
・読書

スマートスピーカー導入後の生活の変化

Aさんの変化
以前:テレビのリモコン操作が難しくなり、人がいないとチャンネルを変えたり録画番組を見るのを我慢していた。
現在:声で操作できるスマートスピーカーを利用することで、テレビの操作が容易になり、自分の好きなタイミングで番組を見ることができるようになった。

Aさんの母親(以下、母)の変化
以前:息子が自分の携帯に電話する手段がなかった。
現在:自分が外出している時でも、スマートスピーカーを通じて、本人の「お母さんにかけて」という声のみで携帯に電話をかけれたり、逆に電話を受け取ったりできるため、安心感が増した。

取材内容

早川OT同席のもと、ビデオ通話にて取材を実施

早川OT:
聞こえますでしょうか?

― はい、聞こえます。こちらの声は大丈夫そうですか?

早川OT:
はい、しっかり聞こえてます。

― ありがとうございます。Aさん、はじめまして。私は新潟県の地域おこし協力隊として、昨年の11月から神経難病の患者さんに対して、スマートスピーカーなどの身近なICT機器の無料貸出を行う支援を実施している、丸山雄也と申します。
本日はよろしくお願いいたします。

Aさん:
こちらこそ、よろしくお願いします。

― お隣にいるのがお母様でよろしいでしょうか?

母:
はい、そうです。よろしくお願いします。

― よろしくお願いいたします。取材の目的や内容の取り扱いに関しましては、事前にお送りさせていただきましたが、改めて今回の取材の目的をご説明させていただきます。
今回の取材では、スマートスピーカーの利用経験がない方、ICT機器自体に抵抗がある方に対して、その可能性を広く知っていただくことを目的に、Aさんが日常的に使用しているスマートスピーカーについて、Aさんとお母様に使用している機能や導入後の生活の変化などをお聞きします。

Aさん:
わかりました。よろしくお願いします。

― それでは、取材を始めさせていただきます。

スマートスピーカーの利用状況と始めたきっかけ

― スマートスピーカーは何の機種を使用していますか?

Aさん:
Googleのスマートスピーカーを使っています。

使用機種はGoogle Home(2017年10月に発売)
※ この記事で掲載している写真はインタビュー後にご提供いただきました



― スマートスピーカーを使い始めたきっかけは何でしたか?

Aさん:
テレビのリモコン操作が難しくなってきたので、声で操作できるか調べてみたら、スマートスピーカーが便利そうだと思って使い始めました。
自宅にあるテレビがGoogleのスマートスピーカーに対応していたので、それが導入の後押しになりました。

補足:スマートスピーカーで家電を動かす2つの方法
① スマートリモコンを併用して家電を動かす方法
「自宅にある家電を声で動かしたい!」という場合、スマートスピーカーに加えて、スマートリモコンという機器がほとんどの場合で必要になる。しかし、スマートリモコンを併用する必要がない方法がある。それが②の方法。

② スマートスピーカーのみで家電を動かす方法
スマートスピーカーの指示を直接受けることが可能なスマート家電があれば、スマートリモコンのような仲介役がなくても、音声で操作を行うことが可能。Aさんはこの方法を使用している。近年、こうした音声操作対応のスマート家電は少しずつ増えている。

スマートスピーカーの活用方法

― 現在のスマートスピーカーの活用方法について教えていただけますか?

Aさん:
声だけでテレビの操作をしています。例えば、電源のON/OFFや、録画した番組を見たりしています。

また、自宅ではパソコンも使っています。スマートフォンは操作が少し難しくなってきたので、今は外付けのトラックパッドを使って、パソコンを操作しています。

PCは手元のトラックパッドで操作し、テレビはスマートスピーカーを通じて声で操作している
Aさんが使用しているトラックパッド。PCでは主にインターネットや読書をしている。


スマートスピーカー導入前の期待と不安

― お二人に質問です。スマートスピーカーを導入する前に、何か期待や不安がありましたか?

Aさん:
自分にとっては初めて使用するものなので、少し難しいかもしれないと思っていました。でも、使っていくうちに慣れてきました。

母:
主に設定に関する不安がありました。本人が設定することになるし、使っている間に不具合が生じた時も、自分たちで対処しなければならないので。


スマートスピーカーの導入における課題と対処方法

―  スマートスピーカーでテレビの操作や電話をできるように設定したのはどなたですか?

Aさん:
設定は私が頑張りました。取扱説明書には細かいことが書かれていなかったので、Webで調べながらやらないといけず、かなり大変でしたが、なんとかできました。

― 設定以外にスマートスピーカーを導入する際に、何か困難や課題はありましたか?

Aさん:
指示する時に発音が微妙に違うと、意図しない動作をしてしまうことがあります。

― なるほど。ちなみに「意図しない動作」というのは、具体的にはどのようなものでしょうか?

Aさん:
例えば、テレビで録画番組を見ている時に「CMを飛ばして」と言ったつもりなのに、違う操作がされて見ていた録画が停止したことがありました。

― そういった予期せぬことが起きた時に、自分なりの対処方法や工夫はありますか?

Aさん:
スマートスピーカーが理解してくれるよう、焦らず指示を言い直しています。


スマートスピーカーの家族へのメリット

― 続いて、お母様に質問です。スマートスピーカーを利用することで、ご家族が感じるメリットはありますか?

母:
テレビのチャンネルを変えてほしい時などに、以前は常にそばにいなくてはならなかったのですが、スマートスピーカーを導入してからは、本人が自分の好きなチャンネルを自由に見られるようになり、常にそばにいる必要がなくなりました。

それ以外だと、私も仕事をしているため、家を空けることがありますが、スマートスピーカーがあれば本人が声で携帯に電話できるので、安心です。
以前は監視カメラを設置することも考えましたが、スマートスピーカーがあればわざわざカメラを設置しなくても、本人からも私からも電話で連絡が取れますので。

Aさんから「お母さんにかけて」とスマートスピーカーに声で指示をすると、母親につながる
また、母親のスマートフォンから自宅にあるスマートスピーカーに電話をかけることもできる


スマートスピーカー導入後の生活変化

― スマートスピーカーを導入した後、どのように生活が変化したと感じますか?

Aさん:
以前は人がいないとチャンネルを変えたり録画番組を見るのを我慢していましたが、スマートスピーカーがあれば声だけで操作できるので、自分の好きなタイミングでできるようになりました。便利だと思います。

母:
息子のやりたいことがすぐにできるようになったことが良かったです。以前は我慢しなければならないことが増えていましたが、スマートスピーカーを使って自分のやりたいことができるようになったので、前向きな気持ちになりました。


スマートスピーカーの利用経験のない方へのメッセージとアドバイス

― 最後に、こうした機器の利用経験のない方に対して、何かメッセージをいただけますでしょうか?

Aさん:
スマートスピーカーを使うことで、声で操作できる楽しさや便利さが増えます。ぜひ使ってみることをお勧めします。

母:
機器を使うことで、自分の思い通りに行動できる範囲が広がります。家族や支援者も、機器を使うことで明るい気持ちになることが多いでしょう。いざ導入してみると、良かったと感じることは多いはずです。

― ご協力いただき、ありがとうございました。取材は以上で終了となります。

和やかな雰囲気の中、取材は終了

音声操作の重要性と家族への負担軽減

取材後、国立病院機構新潟病院の早川OTより、感想をいただきました。

早川OT:
Aさんが音声操作を選んだ理由は、「自分がどんな姿勢でも使える入力手段だったから」だそうです。これはとても重要なことだと思います。本人の状況や条件にあまり縛られない入力方法が音声操作なのかなと。

また、どうしてもこういう話だと患者さんの不自由さの視点に立って支援が進みがちですが、こうしたICT機器は患者さんだけでなく、支援者側の立場である、ご家族の負担を軽減するためにも活用できるものです。
このような視点で患者さんやそのご家族、そして支援者にも広めていっていただけたらと思います。

そして、Aさんのように「実際に試してみたら良かった」と感じる人がいる一方で、「音声操作は敷居が高くて試せない」という人も多くいます。

どんなに便利な道具であっても利用することができなければその良さはわかりません。
その敷居の高さを丸山さんの活動によって下げていただくことで、患者さんとご家族それぞれにとっての「良さ」を体験してもらい、より良い生活の実現に近づけていただくことができるのではないでしょうか。


まとめ

Aさんとお母様、そして早川OT、取材にご協力いただき、ありがとうございました。

スマートスピーカーは音声操作で天気や占い、音楽、ラジオなどの娯楽を楽しんだり、調べ物をすることができます。また、薬を飲む時間になったら「〇〇さん、お薬の時間ですよ」と呼びかけてくれるように設定することもできます。

Aさんの場合は、テレビの操作や電話の機能を音声で操作することにより、本人だけでなく、ご家族にも良い影響がありました。

早川OTからの言葉にもあったように、「実際に試してみたら良かった」と感じる人がいる一方で、「音声操作は敷居が高くて試せない」という人が多くいるのが現状です。

私は現在、新潟県地域おこし協力隊として、1人でも多くの方の「生活の質(QOL)の向上」と「専門機器移行への準備性を高める」ために、身近なICT機器の貸出、設定/設置、活用レクチャーを無料で実施しています。

新潟県内の神経難病を患う方で、Aさんのように「声だけでテレビを操作したい!」「声だけで電話をかけたり、電話に出たりできるようになりたい!」という方がいれば、こちらからご連絡ください。

また、地域の力で難病患者を支えるこの活動を継続するために、機器提供やサービス提供等でご協力いただける企業様・団体様からのお問い合わせもお待ちしております。

もちろん、普段から難病患者さんへの支援を実施している支援者の皆様や、医療・福祉関係者、福祉政策に携わる自治体・政府関係者からのご質問もこちらからお待ちしております。

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難病支援の地域おこし協力隊|丸山雄也
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