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第11回:「これが教育の未来だ」というコンセプトを手放してみてもいいのかもしれない

普通、新しい学校をつくるとしたら、
こんな特徴的な授業をします
とか、
他にはないこんな優れた教育をします
といったことをできるだけ明確にして進んでいくことが求められそうです。

今回のプロジェクトでは、
ふつうの小学校」を合言葉に、

・新留小学校の旧校舎を活かして開校すること
・学び場を軸に、地域のコミュニティと経済を再生していくこと
・「食とことば」を学びの土台にしていくこと
・全国各地の学校と地域が変容していく触媒となること

といった、大きな前提や、あり方として定めていることがあります。

一方で、より具体的な部分はまだまだ余白だらけともいえます。
これにはいくつか理由があります。



次世代や当事者とともにつくっていきたいから

基本的に教育システムは、国や自治体によってその姿を規定されているものといえます。
結果として、全国津々浦々へと一定以上の品質の教育環境を届けることを可能としてきました。

一方で、システムが大きくなるほどに、「自分たちで学びの環境をつくっていける」という当事者意識や創造性(Creative Confidence)が遠のいていく側面もあるかもしれません。

加えて、特定の層だけが集まって、
これからの教育はこうあるべきだ
これが教育の未来だ
と議論し、提供していくだけでは、これまでの構造を変えていくことは中々に難しいのではないでしょうか。

こうした前提のもと、子どもたち自身や教員、地域に暮らす人たちが、プロセスの初期段階から参加していくことを大切にしていきます。

共同代表の古川瑞樹は、中学3年生時点で参画し、現在は高校1年生。
教育を受ける側の立場として、同世代や未就学児たちと丁寧に対話しながら、小学校のあり方のアップデートに挑んでいます。

また、既存の公教育の先生たちをはじめ、国内外の各分野の先輩方とも率直に対話する場をつくっていきたいと思います。

【お願い】
もしよろしければ、「ぜひ対談してみたい」「こんな人と話をしてみるといいよ」というお話をいただけたら嬉しいです!

学校と地域の当たり前を問い続けたいから

今回の取り組みは、一条校(学校教育法第1条に定められた学校)をつくることを目指していますので、形態としてはもちろん「小学校」なのですが、同時に、狭義の小学校をこえていくものになるとも想像しています。

第2回の「「小学校」という概念を見つめ直してみる」では、

・学校は、地域や社会という大きな生態系の一部であり、ハブである
・学校は何歳になっても遊び学び続けられる場であり、関わる全ての人は共に学ぶ仲間である
・各地域の人や風土によって生まれていく実践知と共に、教育システム自体も野生的に変わり続ける

ということを提案しました。

こうした視点も一つの起点としながら、教育に関わる方々やその外側の世界もふくめて、問いかけと対話を繰り返していく過程を通じて、「ふつうの小学校」の輪郭が形づくられていくのだと考えています。

そして、関わる人たちや各地域の風土によって「ブリコラージュ(日曜大工 / あるものを寄せ集めてつくる)」されていく余白を歓迎し、草の根の実践から生まれた知を社会へ共有し続けていきます。

また、教育システムの外側で起きている新たな動き(フリースクールやホームスクーリングなど)とも連携・共生しながら、継続的に制度自体へのフィードバックを行っていくことで、一つの正解の教育の形にとらわれない「自律的に変わり続ける、野生的*な教育環境」づくりを目指します。

*文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースがブリコラージュを紹介した『野生の思考』にあやかり、様々な関係性の中で創発されていく様を「野生的」と呼んでいます。

普く通るものをつくりたいから

ふつう」=「普(あまねく=広く) 通ること」。

今回のプロジェクトでは、どんな地域でも特別なプレイヤーがいなくても、その地域の人々の手で 子どもにとっても先生にとっても学校を取り巻く地域の人にとっても心地よい学校を作り、その過程で 普遍性の高いエッセンスを言語化していくことを目的としています。

したがって、
「他にはないこんな優れた教育をします」
という差別化戦略やマーケティング戦略を定めることとは異なるアプローチが必要になってきます。

そういう意味で、一度 私立の一条校としてコンパクトに切り出した上で、スピード感を持って試行錯誤を繰り返し「何が本で、何が末か」、よい変化を連続的に生むための「起点はどこか」を探究してみるというのも今回のプロジェクトの試みの一つです。

「新留小学校」という小さな学校をつくっていく過程自体、そして絶え間ない実践から生まれる知見自体が、社会の共有資源(コモンズ)となっていったらと思うのです。

この余白をご一緒に楽しみながら進んでくださる方(個人も企業・団体も)に仲間になっていただけたら、この上なく心強いです。


クラウドファンディングで仲間を募集中です!↓


これまでの記事
第1回:「ふつうの学校」作ります。設立趣意のようなもの
第2回:「小学校」の概念を見つめ直してみる
第3回:食とことば とは
第4回:ランチルームとライブラリーの可能性
第5回:学び場を軸にした幸福度の高い地域デザイン〜保育園編〜
第6回:学び場を軸にした幸福度の高い地域デザイン〜小学校編〜
第7回:「ふつう」という言葉のこそばゆい感 〜これであなたもふつう通!〜
第8回:ご存知ですか、教育基本法?
第9回:小学校とは地域にとってどういう役割の装置か?
第10回:【インタビュー】なぜ、このドキュメンタリーを撮るのか
第11回:「これが教育の未来だ」というコンセプトを手放してみてもいいのかもしれない(今回の記事)
第12回 まちづくりは人づくりから
第13回:ことばによって世界の解像度を高めよ 〜国語の先生との対話から〜
第14回:第14回:早期外国語教育は必要か?
第15回:第15回:子どもたちの「やりたい!」を実現できる学校を、地域とともに創る
第16回:学校をめぐる地の巨人たちのお話〜イリイチ、ピアジェ、ヴィゴツキーなど
第17回:コンヴィヴィアリティ、イリイチの脱学校から
第18回:これまでのプロジェクト「森山ビレッジ」
第19回:現役中学生たちの、理想の小学校
第20回:理事紹介1・このプロジェクトにかける思い


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