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第13回:ことばによって世界の解像度を高めよ 〜国語の先生との対話から〜

今年も、秋田・五城目の小さな集落で、茅葺屋根の葺き替えがはじまりました。

舞台は、530年前に五城目朝市の発祥した町村集落にある、築140年超の茅葺古民家シェアビレッジ町村」。
(町村という名前の「町」=「市」の意味があり、「市の開かれる村」というのが集落名の由来)

執筆:丑田俊輔(私立新留小学校設立準備財団 共同代表)


茅葺古民家のこと

里山の木材を切り出し、集落で共同管理する茅場で屋根用のススキを育て、半径数キロ圏内の資源で住まいが完成する。
建てる時も、メンテナンスする時も、個人の所有にとじておらず、集落のコミュニティの共助が関わってくる。
この“愉快に生き延びる”ための営みの結実として生まれてきた里山の原風景の美しさ

葺き替えの様子

そんなあり方を教えてくださったのは、この茅葺古民家の当時70代の前オーナーでした。

もともとはまちの高校の国語の先生(専門は日本文学)で、この生まれ育った古民家のこと、里山や庭の草木のことを次の世代にも五感で味わってほしいと、退職後もずっと大切に手入れされてきた方です。

2015年に僕ら(シェアビレッジ)が受け継がせていただいてからも、時たま遊びに来ては、その季節の草木を少しだけ摘んでお花を生けてくださったりと、生き方も語りもその全てから学ばされることばかりでした。

秋の七草のこと

つい先日、久しぶりにゆっくりお話した時のこと。

春の七草は知ってると思うけど、最近の若い人たち、秋の七草を知ってる人少ないんだよなぁ」

とぽろり。

茅刈りの様子

茅にも使うススキは入ってたはずだけどあとなんだろう・・・と脳をフル回転しつつ、
「挙げてみて」と言われそうでドキドキでしたが、なんとか免れつつ(笑)

秋の七草は、「万葉集」に収められている山上憶良の2首の歌が元となっているのだとか。

「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」
「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」

『万葉集』

秋の野山に咲く色とりどりの草花を楽しんだり、薬草として漢方や生薬に使ったりと、
疲れの出やすい秋に、目や口から取り込んで癒してきたのだといいます。

確実に今年の秋の自分は、散歩しながら七草を血眼になって探しているに違いありません(笑)

草木の名前、秋の七草という概念、和歌のような表現など、
「ことば」を知ることで世界の解像度があがったり、さらに楽しくなったりするのだなぁ、と実感する時間でした。

それと、例えば学校の授業でこうした知識だけを教えられたとしたら、一瞬で忘れてしまう自信あり!
暮らしや身体感覚に紐づいた形で学び取ることができると、学ぶ楽しさと共に、もっともっと探究してみたい!となるのかもなぁとも思いました。

だからこそ、維持管理に手間もお金もかかる茅葺古民家というアナログの極みのような存在を、とても大事にされてきたのだと感じます。

山と桜のこと

さて、秋田では山間の雪も溶け、本格的に春がやってきました。

ふきのとうがニョキニョキ生え、山桜が点々と咲き、一日経つごとにあたりが新緑に包まれていく様を見ていると、冬を越えた喜びとともに、季語でいう「山笑う」ということばを心から実感します

「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠にして滴るが如く、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として眠るが如く」

『臥遊録』

ところで、「さくら」の語源は、大和言葉で「さ」=稲の精霊、「くら」=稲の精霊が降臨する場所、といわれています。
冬のあいだ山に帰っていた稲の精霊が、春になると里へ降りてきて、桜をはじめとした草木を芽吹かせていく。
人々は桜の木の下でお花見をしながら感謝し、稲に精霊が宿ったのを受けて、田植えをはじめていきます。

この田植えの季節、一面の水田に水が張られて湖のようになる風景も、またため息の出るほどに美しいのです。

ふつうのこと

江戸時代の哲学者、三浦梅園のことばで筆を置きたいと思います。

「枯れ木に花咲くを驚くより、生木に花咲くを驚け」

『多賀墨卿君にこたふる書』三浦梅園

枯れ木に花が咲いたら奇跡として誰もが驚くが、むしろ、生きている木に花が咲くことこそ驚くべきだ
という問いかけです。

前オーナーが近くの里山から持ってきた九輪草(写真:なんも大学)

生きている木に花が咲くなんて、そんなん普通じゃん!
と思うかもしれません。

けれど。
毎年春になると山菜が芽吹くことも、桜が咲くことも、おいしい米が実ることも、人が生まれることも、いま呼吸して生きていることも。
そんな「ふつう」なことこそが、奇跡的であり、感動的であるのだと思わされます。


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第2回:「小学校」の概念を見つめ直してみる
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第4回:ランチルームとライブラリーの可能性
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