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外国語学習/日本語教育

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海外で継承語教育、ドイツ人に日本語教育をしていることから考える外国語学習についてあれこれ。
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#日本語

「バナナでりんご」なドイツ語のund(and)

昨日の大学の授業で、複数の形容詞が重なるとき、1つ目の形容詞は「-て/で」になることを教えた。 い形容詞(学校文法の形容詞)は、「おいしくて、安い」、な形容詞(同形容動詞)は、「きれいで、元気」のように。 名詞もな形容詞と同じく、「-で」でつなぐ。 以前、動詞の重複も「勉強して、寝ます」のように、1つ目が「-て」になることは学習済。 そもそも第1課で助詞「と」が出てくるときから、口を酸っぱくして「と」は「名詞と名詞」にしか使えません!と言っている。 なぜなら、ドイツ語のu

小5「言葉の意味が分かること」

5年生の説明文読解単元「言葉の意味がわかること」(今井むつみ著)は、私の好きな単元の1つ。 改訂前の「生物は円柱形」もよかったなあ! だから、変わってしまって残念だったけど、補習校のように在外にいる子にとっては、「ことば」という切り口での話は面白いだろうと思う。 著者は、「言葉の意味が分かる」というのは、点でなく「面」でとらえるべき事項だとして、いくつか例をあげている。 例えば「コップ」。 どんなものを見せれば、「コップ」の説明にふさわしいか。 取ってのあるものかないものか

「ですます」体とDu(あんた)の矛盾

補習校で教え始めて、しばらくして、子どもたちの日本語のインプット絶対量がかなり少ないと気付いた。 日本にいれば自然に耳に入るような言葉が、外地では意図して親が話さなければ、子どもが覚えることはない。 簡単な例でいえば「ですます」体。 国際家庭の子女であれば、片親だけが日本語母語話者で、その人としか日本語で話をしないのだから、「ですます」体なんて耳にしないのだ。 まあ、もちろん絵本を読み聞かせるなどで、ゼロではないのだけど。 低学年のときは、取り立てて何も思わなかったけど、

外国語視点での「あげます・もらいます」

大学の海外メンバーの会を通じて、お声がけをし、文型の勉強会をしました。 教育実習のご予定が近い方がいたので、教科書「みんなの日本語」7課の「あげます」「もらいます」をとりあげました。 ドイツ語 ・「あげます」と「くれます」が同じなので、「私にあげて」などの誤用 ・「先生にあげます」(渡します)などの誤用 ・ドイツでよく使用する「geben」(give)「bekommen」(get)は一時的な受け渡しで、所有権の譲渡がなくても使えてしまう。 ・「宿題をもらう」などの誤用

ぷさんはBusan? アルファベット、ひらがなの表記の限界

前ゼメスターに引き続き、今年も韓国ルーツの学生さんが初級にいます。 留学生じゃなくて、両親韓国人、ドイツ育ちの学生さんです。 (国籍がどこかは分からない) 冬学期の学生もKimさんで、今学期もKimさん。 韓国は代表的な5つの苗字で人口の半数を占めるそうですが、またKimさんだ!と面白かったです。 あとベトナムはTranさんが多いです!(グエンさんが多いかと思ってた) 冬学期のKimさんは、カタカナ学習で自分の名前を書くとき、「ギム」がいいと言いました。 発音はそちらの方が

最近面白かった日本語/出来事

①文法「あります」「います」の練習 私「動物園に何がいますか。」 生徒「くまと、ライオンと、フェニックスがいます。」 私「えっ!? フェニックス(不死鳥)?! 鳥の???」 生徒「いいえ、犬?猫? 小さい・・・Feneck」 私「ああ! フェネックですね。ファンタジー動物園かと思いました。」 ②文法「Nがほしい/ほしかったです」の練習 私「子どものころ、何がほしかったですか。」 生徒「Stofftierは日本語で何ですか。」 私「ぬいぐるみ、です。」 生徒「ぬいぐるみが

【今日の授業】飲んで、飲んで、飲まれて、飲んで・・・

ドイツは5月とも思えない寒い日が続いています。 ようやくけしの花が見ごろになりました。 車から撮ったので、ブレブレだけど。 昨日が祝日だったので、振り替えが2つあったんだけど、うち一つは朝のうちに体調不良でキャンセルになった。 私も昨日休みモードで、大学のレポートにかまけて(っていうか、そっちも大事なんだけど)いたので、準備が終わってなかったから、正直ありがたかった! 午前1つ目のLさんとは引き続きN5の名詞から、今日はテーマは趣味と乗り物に関したものを説明してもらうとい

【授業報告】N5対策的な応用会話「ドイツはビールがおいしくて、きれいな国です」

対面でプライベート授業をしている9年生女子は日本への留学を希望中。 斡旋団体に登録し、オンラインでテストを今年度中(夏休み終了まで)に受けるように言われている。 私も推薦状を書き、とりあえずここのとろろはそのテスト対策。 テストはN5かN4レベルを選べるということなので、とりあえずN5対策。 語彙はクイズレットで単語帳を作成し、自分で勉強するように伝え、問題文の理解、N5文法を復習し、漢字もジャンルごとに勉強中。 金曜日の授業では、漢字のテーマを「人」にし、人父母子男友

「カラダにピース」の意味とは

日本から持ち帰ったカルピス原液を娘たちが割って飲んでいたところ、ドイツ人の夫が、 「これは何て読むの?」 と話しかけていた。長女が、 「『カラダにピース』だよ。体に平和を、体の調子を整えるという意味だよ。」 と説明するのを聞いて、 「えっ!? 平和???」 と思った。 私はもっと単純に「ピース✌」ってことだと思っていた! だから、体がいぇーい!って言って、喜ぶ、みたいな、簡単なことだと思っていて、そんな深い意味だと思っていなかった。 そう話すと、長女が、 「でも、ピースっ

「人/物は<何/どこ>が---」の学習と差別社会教育

明日のにほんごクラブの準備中。 ここのとろろ形容詞を取り上げていたので、春休み前の来週に「好きなキャラ(でも実在の人でも)紹介」でもしようかと、欠かせない「人/物は<何/どこ>が---」の文型を用意しつつ、これってでもきっとよくないんだろうなあともやもや。 大学で使っている教科書Genkiにも、この人が太っている/やせているという描写が出てきて、これ現代(ヨーロッパ)ともうすでに合わないなあと思った。 見た目を云々するということが、ほとんどタブーのようになっている。 私が

外国語学習で重要なアクセント

アクセントとは何か~方言と訛り まずは、日本語の中だけでいうと、アクセントは強弱で、イントネーションは高低という感じがする。 文の中で強く言う部分に、アクセントがあるともいえる。 一方、イントネーションは「訛り」だ。 いわゆる「方言」は地方の言い方で、ごはんを「よそう」を「つける」「つぐ」など、別の語彙のことをいう。 でも、訛りというのは、「ピアノ」と「ピアノ」のようなイントネーションの違い。 だから、標準語を話してる中の一音が違えば、 「今、訛ったよね?!」「イントネ

文法の教え方-直接教授法じゃなければ

今日は、朝から5コマ。 まあ長い人も多いので、気楽で楽しいメンバーです。 うち、仕事でこちらに来ている日本人の彼氏のために日本語を習っている人がいるだけど、年に1度は彼と日本に行き、英語の話せない家族ともコミュニケーションをとっているので、中級と言える人がいる。 本は使わずに、都度テーマを設けて取り組んでいるんだけど、今日は助詞を取り上げてみました。 終助詞や間投助詞は、ドイツにないのでそのグループ分けでいいんだけど、格助詞は、ドイツ語にこそ「格」があるんだよね。 欧州系

【今日のセミナー】トランスランゲージングとスキャフォールディングなど。カタカナがいやな件

今日のセミナーは継承語系で、テーマは「トランスランゲージング」でした。 トランスランゲージングとはなんぞや ごく簡単にいうと、要はバイリンガルの子とかがごくふつーにやってる言葉のまぜこぜ。 例えば、今朝の我が家の姉妹の会話。 妹「Gestern hatten wir ein 国語テスト」(昨日Kokugotesutoがあったんだ) 姉「Und? War es 難しかった?」(で? それはMuzukashikatta?) 私が教えていた補習校では、校内でドイツ語(外国語

バイリンガル教育をするなら、まず根を育てよ

先週のセミナーで出てきた「カミンズの氷山説」を記録に残しておきたい。 従来、バイリンガルは頭の中に2つの風船がある状態だと思われていた。 1つが増大すれば、自ずともう1つは圧迫され、縮小されてしまうという考え方。 その後、カナダ人教育心理学者ジム・カミンズが新たに「氷山説」を唱えた。 実際に私も、日常生活には困らない程度にドイツ語が話せて、ドイツ語日本語のバイリンガルの子どもを育てているが、氷山説に納得。 決して風船ではない。 言語を均等に育てていけるならいいんだけど