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【日本語】大学の口頭試験で感動した話

昨日、コマを持っている大学の夏ゼメスターの期末試験だった。
(非常勤だから、「勤めている大学」という言い方に齟齬を感じて、いつも歯切れの悪い表現しかできない!)

教え始めた当初に先輩の先生に試験はどんな感じか見せてくれませんかと頼んだところ、断られた!
ので、やむなく自分でよいと思うものを作って、都度改良していっている。

私は、同じ大学なのだから同じような試験、それか同じ試験でもいいくらいだと思う!
例えば一番最初のクラスは4つもあって、4人の別々の先生が教えているけど、そこにもう少し協働があってもいいと思う。
次のクラスは2つなので、そのスタート地点が同じ方がいいと思うから。
ただ、もちろん教科書Genkiの1~4課が最初のクラスの内容なので、それを網羅していれば、学習した内容は同じだと言えるのだけど。
まあ、大学とはそういうものなのか・・・
(補習校では揃えて!とすごく言われてたから、当時は違和感があった)


ともあれ、なるべく四技能を取り入れ、日本的なバランスのよい試験を目指している。
聴解、文字/漢字、文法、読解、短文作り/記述、話すというような構成だ。

この「話す」の目的は最初は力を見るつもりで、私が全員と話していたけど、時間内に終わらないので、ペアや3人組でやらせるようになった。
私が話す分にはコントロールできるけど、「はい、どうぞ!」とするには、テーマがないと難しい。
「『週末』をテーマに自由に話す」などとしていたけど、「自由に」は人によってはすごく難しいらしく、沈黙になってしまったりした。
そこで、文型の指定をして、それを使うこととか、週末に一緒にでかけるという目的で、何をするか、どこで何時に集まるか決めるというような具体的なテーマを与えるなどしている。

初期のころは筆記が終わった順にランダムにペアを組んでいたけど、一緒にやりたい人が終わるまで待つ人が出るので、それならいっそ、事前にペアやグループを決めて練習してもいい、という方法に変えた。


これには別の効用があった。
私が力を見るというのは実力試験のようなものだが、事前に練習するというのは、確認テストだ。
入試なのか、定期テストなのか、といえば、もちろん定期テストなのだから、練習した結果を披露してくれるのでいいのだ。

上から押し付ける学習は頭に残らないけど、友だちとわいわい考えたスキットは忘れないもんだろう。
もちろんそのスキットを作る過程で、文法や語彙を確認することになる。

今のところこの方法に満足しているので、とりあえずは継続すると思うけど、娘が体験した事前に与えられたテーマの中からスピーチするというのも魅力的だなと思っている。
まあ、定期試験とは別に口頭試験(今は点数をつけるプレゼンテーションなどはしているけど)を実施してもいいかもしれない。


そして昨日、一番面白かったグループは、2つ目のクラスの方。
ごく簡単に「V原形のが好きです/上手です」(否定含む)の文型だけを指定して、自由に話してもらった。

筆記試験の邪魔にならないように他の人は端で話していたんだけど、いきなり教室の前に2-1に分かれて立つ3人。
二人が目の前の見えないドアを開けて入ると、一人が「いらっしゃいませ」。
ショートコント始まった~!!w

ここは銀行で、二人は大金を預けに来たところ。
銀行員が「どうしてそんなにお金を持っていますか」と尋ねると、「今、通りの向こうの銀行で銀行強盗をしてきました」。
すかさずもう一人が「そんなこというな、アホ!」。


すごい面白いけど、指定の文型を使ってない・・・
どうやって点をつけようかと迷っていると、話は進み、銀行員が「銀行強盗をするのが上手ですか」と聞いた。
よかった~、点があげられる!
それで、その二人が「一緒に銀行強盗をしましょうか」と誘い、翌日8時にマクドナルドの前で待ち合わせをして終わった。

去年の冬ゼメスター(10月末開講)から勉強を始めて、よくここまでできるようになった!
もちろん、丸覚えの部分がゼロではないだろうけど、これは何課でやった文法だ、これは何課で出てきた表現!と気付くところもたくさんあって、その蓄積に胸が熱くなった!


ちなみにこの2つ目のクラスはGenkiの5~8課を勉強した。
その次が9~12課で、これで1冊が終わり、CEFR(ヨーロッパ言語共通レファレンス枠組)のA1終了ぐらいだ。
日本の人にも分かりやすくいうと、英検の3級から準2級がCEFRのA1ぐらいだそう。
CEFR(セファール)はEUの取り組みの1つで、別の国、別の言語でも学習目標を一定にすることで、比べられるようになっている。

ちなみにA1のレベルは以下の通り。

★馴染みのある日常的な表現や具体的な要求を満たすための基本的な言い回しを理解し、使うことができる。
★自分や他人を紹介でき、住んでいる場所や知っている人、持っている物などといった個人的な事柄に関しての詳細を尋ねたり答えたりできる。
★相手がゆっくりわかりやすく話し、援助してくれる場合、簡単なやり取りができる。

確かに英検3級くらいだ。

つまりショートコントをした学生たちのレベルは「英検4級」くらいということ。
英検4級は中学2年修了程度、英検3級が中学3年修了程度だ。
一概に比較はできないが、日本の中学校3年間で習うような英語と、大学の3ゼメスター(1年半)で習う日本語のレベルが同じくらい!


ちなみに私が教えてるのは一般教養科目としての日本語なので、とてものんびりペースだけど、別の大学の大学院で教えている友人は1年でGenkiの1と2を終わらせるという!
Genki2はCEFRのA2くらいで、英検でいうと準2~2級相当だ。
1年で、英検2級くらいまで勉強する!
(もちろん授業時間数は多い!)


年齢的な差もあると思う。
やはり大学は高等教育機関で、学習の仕方はもう身に付いているだろう。
しかし、特に欧州にいる学生は外国語を学習することに慣れているのだと思う。
小学校3年生から第一外国語の英語が始まり、多くのギムナジウムが6、7年生から第二外国語を課している。

そして、中学終了の10年生の時点で第二外国語の力はB1レベル(英検の2~準1級)だそうだ。
日本の高校修了程度の英語力と同じだけのフランス語やスペイン語の力を中学修了(まあ1年長いけど)でつけるというのだ。

じゃあ、英語はどのくらいになるかというと、高校卒業時にB2(英検準1~1級相当)から、英語を卒業兼大学入学試験(アビトゥーア)で選択する人ならC1(英検1級相当)まで行く。

大学に入ってその言語で学ぶならC1相当の力がないとならない(留学するのに証明しないとならない)ので、ドイツの高校生はまあ英語圏の大学には留学できる程度の英語力がついているということだろう。


こういう環境で中学高校生活を送ってきた学生たちなので、語学学習に対して身構えていないのだと思う。
しかも好きで勉強している言葉だから、単純に楽しいのだろう。

応用力の高さやトライ&エラーの精神など、ドイツの学生たちに驚嘆することは多い。
昨日もいい刺激を受けた。
私もタイ語がんばろう!


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