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自作小説

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自作小説です。
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#人間関係の悩み

隣のネズミ-7

隣のネズミ-7

拙作短編「隣のネズミ」はこの回で終了です。
イイネで応援してくださった方、読んでくださった方、誠にありがとうございます。

創作を「晒す」のは、レスポンスをいただける可能性とを天秤にかければ安いものと考えつつも、けっこう恥ずかしいものなので、ほんのちょっとのお気持ちが全て励みになっています。

昭和産まれの人間より、今の人達の心が弱く幼いのは、どうしょうもない事なんだろうか。



 高瀬さんが

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隣のネズミ-6

隣のネズミ-6

 水島さんの隣人は、一体何を考えているのか?
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 隣に越してきた水島さんを初めて見たとき、地味な人だと思った。前髪をセンターで分けて、髪を一つに縛っている。小学生低学年くらいの男の子がいて、「大変だから」で、オシャレの優先順位が低いらしい。そういう人を見ると、子供好きながら自分の選択肢は正解だと再認識せざるを得ない。オシャレする間もなく、見た目から疲れてい

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隣のネズミ-5

隣のネズミ-5

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創作 小説 5話です
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それで二週間ほど、あの坂田さんに子どもを任せてみることにした。もしかしたら息子のことを、ある事ない事つぶやきに書かれるかもとは思ったけれど、自己イメージが大事らしい彼女は、クレーマー気質では無かった。その自己イメージの中に、「子供好き」というのがあって、多少のことがあっても息子に目くじらを立てることは無いだろう、と、甘く見ていた。

 知

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隣のネズミ-4

隣のネズミ-4

 私には、ある光景が脳裏にこびりついている。直観的にネズミを可哀想だと思ってしまう。祖父母の農家で、ネズミが殺されるところを見たことがあるのだ。トラウマというほど大したものではないが、寡黙な祖父が、上がり框にうろついていたネズミを叩き殺し、ささくれ立った無骨な手に、ハンカチ一枚だけを乗せ、お腹が破れて赤黒い内臓がはみ出ている死体をつまみ上げ、ぽいっとゴミ箱に捨てていたのだった。

 その頃、豚やウ

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隣のネズミ-3

隣のネズミ-3

7月、旦那の担当する巨額の融資がうまくいき、賞与とは別の報奨金が出たというので、ご馳走でも食べに行こうか、ということになった。あれ以来私は坂田さんを出来るだけ避けるようになった。けれど、意識とは別に、坂田さんと何らかの波長もとい生活リズムが合うらしく、近所のスーパーやマンションの度々出先でバッタリ会った。その頃はようやく新型ウイルスの流行による自粛ムードも収まりつつあり、せっかく満を持して久しぶり

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隣のネズミ-2

隣のネズミ-2

全7回の短編小説です。
隣人が嫌いで苦悩する主婦の話

もう少し、「坂田さん回顧」を続けてみることにした。



「へえ、なるほど」

と、夫は言った。

「だからね、いつからキライになったか、そういえばよく思い出せないなって」

「そういうこと、あるよね」

「・・・」

 夫は穏やかな性格で、私の話の腰を折ることはなく静かに聞いているが、どうも相槌が無難過ぎて、夫との会話それ自体が虚しく感じ

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隣のネズミ-1

隣のネズミ-1

(全7回短編小説、隣人に悩まされる女性の話 背景として現在の社会状況が一部反映されています)





 私の物語を、何もこんな冴えないところから始めなくても良いのではないか、とも思う。私と夫、それから発達障害の息子と三人の慎ましやかな生活。

 夫や小学生の息子の関心は、必ずしも家庭には向いていない。夫はそこそこ優しいが、やはり仕事が第一で、息子も不器用ながら学校生活を楽しんでいる。

 

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小説「隣のネズミ」

小説「隣のネズミ」

小説「隣のネズミ」

 私の物語を、何もこんな冴えないところから始めなくても良いのではないか、とも思う。私と夫、それから発達障害の息子と三人の慎ましやかな生活。

 夫や小学生の息子の関心は、必ずしも家庭には向いていない。夫はそこそこ優しいが、やはり仕事が第一で、息子も不器用ながら学校生活を楽しんでいる。

 つまるところ、私・水島翠(みずしま みどり)の今の生活を一言で表せば、サポートなのだ。仕

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