見出し画像

【夜の舞台裏 #006】「悲劇は喜劇 / 喜劇は悲劇」

【前回】の記事はこちらから

どうもナツオです。中高時代好きだったバンド・andymoriを仕事中に聞いていたら「ケアンズの空の下」という歌詞が流れてきて、あっ次はケアンズにに行こうと思い立ちさっそく近郊のファームジョブに応募。するとすぐに返信が来て思っていたよりも好条件で採用されました。オーストラリアに来るまではケアンズなんて知らなかったなぁ。昔聴いてたものが大人になって意味が分かるようになるなんて感慨深いし、知らず知らずのうちに導かれているんじゃないかって思う。これまで出会ってきた物事が僕を作り上げている。

僕も将来的に映像作品や独自のメディアを作ったコンテンツを配信することを目標にしています。今回のインタビュー記事を読んで気に入ってもらえたら、是非フォローしてください! (instagram:@kohhbeme filmmarks:@natsuo007)


〈第6回〉 【夜の舞台裏】

「悲劇は喜劇 / 喜劇は悲劇」

~「落としもの」を題材に~

そこはむしろ一番皮肉な部分なんだよね。おかしな主人公が同じタイプの人に出会えちゃって、成功しちゃう。

今回は「落としもの」二編を扱います。


こういうやつ嫌いなんだよね


ナツオ(以下ナ)
:正義感が人一倍強く警察官を志すも採用試験に落ち続ける主人公。ある時、道に落ちていた財布を交番に届けると、その財布は記憶障害を持った女性が毎日同じ場所に落としてしまうものだと聞かされる。女性を気の毒に思った主人公だったが、次の日財布の落ちていた場所で怪しい男が財布を置くのを目撃し事件性を感じ真相を突き止めようと動く。今回扱う「落としもの」、質問をする前に率直な感想を言いたいんだけど、この主人公さ...なんていうか...
ナイトアウル(以下夜):ん?
:まったく共感できない(笑) もっと言えばめちゃ嫌いだわ。僕、こういう社会的な正しさを第一の価値として行動する人間が理解できないんだよね。社会的に当たり前な正しさを無批判に受け入れて内面化してさ、それだけならまだしもそれを押し付けたりわざわざ罰しようとする奴なんなんだ!正直、警察官を目指す発想とか僕には皆無。いや僕らの安全を守ってくれるのは本当にありがたいんだけ街中で彼らを見ると、道行く人をジャッジする視線が偉そうでムカつく。何で彼らってあんな偉そうなんだ!職質とかでタメ口使ってくるしさ!!こういうこと言うと「そんな疑われるようなことしてる、普通じゃないお前が悪いんだろ」って言ってくるバカが湧いてくるしさ!!!
:止まらないな(笑) 今作の主人公にそう思ったんだ。実はね、僕もこの主人公が嫌いなんだよ。ナツオに近い考えだと思う。あっでも僕は警察官を憎んではないよ!正義感にあふれた人々が正しい選択をしたって話じゃなくて、正義感に取り憑かれた変な人たちの変な様相を描いたんだ。だって主人公の考えは狂気じみてるし、女性の方もわざわざやることが回りくどいし手間かけすぎでおかしい。つまりこの話はコメディなんだよね

私は誰よりも正義感の強い男だ。困っている人がいたら自分の身を犠牲にしてでもその人を助けることがモットーだ。これまで何人もの人を助け彼らから感謝されてきた。私は警察官になることが夢だった。警察官になればもっと多くの人を助けることができる。警察という立場を使って今まで自力ではできなかったことも可能になる。と大きな希望を抱いていた。

ナイトアウル短編作品「落としもの」(前編)

「私、このスマホを持ち主に返したいんです。実は先日ちょうどここでスマホを拾いまして、周りに誰もいなかったため、どうにも持ち主を探し出すことができなくて、仕方なく交番に届けようと思ったのですが、最寄りの交番までここから5キロメートルもあるじゃないですか。持ち主は絶対に交番まで自分のスマホを探しに行かないだろうと思って、ならば本人が落とした場所に毎日欠かさず置いておけば、いずれ本人も落とした場所に戻ってきて気づくはずだと思ったんです。こんな人気の少ない住宅街なら誰かに盗まれる心配もないと思って」

ナイトアウル短編作品「落としもの」(後編)


これっていい話?


:僕もこれ読んだときに「これコメディだよね、皮肉だよね?」とは思っていたんだけど君がどういうつもりで書いたのか確信持てなくて、今それを聞いて正直安心したよ。もしこれをまっすぐな美談のつもりで君が書いていたらどうしようかと思っていた(笑)
:でも最初はほっこりする話を書きたいと思ってたよ。結末まで自分でもこの作品の主題に気づかなかったほど主人公の強い正義感に取り憑かれてた。だからこの作品を読んで美談って捉えるのも間違ってはないかも。
:そうだったんだ!正義感、恐るべし…
  でもそうなると改めて疑問に感じるのが最後に財布の持ち主がみつかるところ。彼らの頑張りが実を結んで、結果としていい話になってるんじゃないかって思うんだけど。

「あなたの気持ちはわかりました。でもスマホの落とし物は警察に任せて、持ち主が現れるのを待ちましょう。そして警察の人にもしっかり事情を話しましょう」
と手を差し伸べると、しばらく間を空けてから寂しげな顔つきで私にスマホを手渡した。
「わかりました。ご迷惑をおかけしてすみません」
「いいえ、こちらこそ勘違いしてしまってすみません」
私たちは立ち上がると、知らぬ間に一人のゴミ袋を持った男性が背後に立っていた。男性は困った顔つきで呟いた。
「あのー、お取り込み中すみませんが、ここいら辺で・・・」

ナイトアウル短編作品「落としもの」(後編)

:そこはむしろ一番皮肉な部分なんだよね。おかしな主人公が同じタイプの人に出会えちゃって、成功しちゃう。この体験が、自分が正しいって思う根拠になってしまうんだよね。そうなると彼は自分の変なところを見直す必要性に気づけなくなってしまう。
:歪みが治らないから、警察官の採用も落ち続けるんだろうね。
:結末をどうしようか迷ってて、彼らが持ち主の捜索に失敗することで自分たちの正義を疑うラストもありだなと思ってたんだけど、今の形に落ち着いたのは成功させた方が彼らにとって悲劇的な結末だろうなって思ったんだよね。
:悲劇は喜劇、喜劇は悲劇ってだれかも言っていたけれども、コメディってのはまさしくそうだよね。


これまでの作品とつながる部分


:今作での主人公とヒロインに対して散々悪口を言ってきたが(笑)、彼らに対する君の優しい目線というのもあるんじゃないかと思うんだ。君の作品には「何かを追い求める人間のひたむきさ」というのが共通して描かれている。今作にも彼らのひたむきな様が描かれているわけだよね。

:救いは用意したよ。最初主人公は友人が死んだのに、陰謀の探究に夢中になってちっともその死を悼もうとしないんだよね。でもこの探究を通して、最後友人の死を受け入れたんだ。だから彼はラストに涙を流すんだよ。

【夜の舞台裏 #002】「旅の果てに見つけたもの」

:この社会で正しさは見出せない、それでも自分の中に一応の答えを見つけて進もうとする。懸命に正しくあろうとする。それは対立する右と左どちらにも属さない人々も、誰もがそうなんだと思う。

【夜の舞台裏 #003】「それでも正しくあろうとするひたむきさ」

:確かに。なんかこのインタビュー企画でナツオによくそれを言われることで自分の作家性みたいなのにそれがあるなって気づかされた。これまでは何かを追い求めたけど失敗しちゃう。でもそこには人間のひたむきさがあるよねって描き方だったけれども、今作ではコメディを描こうと思って悪い意味で成功させてみた感じだね。まぁなんだろう、今作の主人公みたいな人間について僕もやっぱり好きにはなれないけど、ナツオほどは憎んでないな(笑) 警察官嫌いとかは思わないし!今作でも主人公と警察官を一緒の存在だと描いてはないじゃない?現に彼はなりたいのになれないんだし。
:左翼こじらせすぎるとこうなる(笑) でも僕、高校時代に財布落としたら交番に届けてあって助かったから人々の善意と警察官になんだかんだ感謝はしてるよ!! あと補足で言いたいんだけれ人ど、正義感も種類によっては好き。世の中の不条理や理不尽さと立ち向かう方面のそれは大好きだし、僕もそれを抱えてこれからの人生の大きなテーマの一つになっていたりもする。ただやっぱり社会にあふれてる当たり前の正しさを内面化した正義感は苦手だな(笑)
:頑なだね〜、今回のインタビューはナツオの価値観をより掘り下げられた気がするよ(笑)


〜結び〜

今回は、「正義に潜む狂気」というテーマのもと短編「落としもの」から読みれる、ナイトアウル & ナツオの正義に対する価値観ついて考察していきました。
次回のインタビュー記事も楽しみにしていてください。ではまた!


最後まで読んでいただきありがとうございます!

今後もよりおもしろい記事を投稿していきますので、スキ・コメント・フォローなどしてもらえるとうれしいです🦉🌙


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?