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「守護の契約。」/ショートストーリー

私のことを「Mio」とMariは呼ぶ。ほんとうのところ、私を超簡単に説明するとエネルギー体なので、名前などないし必要もないはずだけど。いわゆる、便宜上というヤツ。Mariの前では実体化する必要性があるから、名前がないとMariも困るのだろう。

私はふだん、エネルギーとしてある空間に存在している。その空間に、薄くひろくひろがってただ漂っている。そのままでいれば、やがて源に帰還する。私は、早く源に帰還したいと思っている。でも。

でも、いつもたぶんあともう少しのところで邪魔される。Mariとの約束、つまり契約システムが発動されてしまうのだ。よく物語で設定されている、命をたすけてもらう、またはたすけてもらった対価として何かをするというあれだ。

確かにMariに危ないところを助けてもらったので、私としては1回だけのつもりで守護の約束をしたのに。Mariときたら、契約の時にわざと回数を曖昧にして、私をまんまと守護者にしてしまった。

私はMariの霊獣でも、護り手にもなったつもりはないけど、Mariはどう思っているのだろう。

遠い昔と違って、今Mariが存在する世界は治安が良いほうだから、私がMioとして実体化することは少なくなってきている。以前は、いろんなエネルギーが混在して光のものも闇のものも、あちらこちらにみられたのだけど。今は、とても希薄なのだ。まあ、希薄に感じられるだけで実は偏っているだけなのかもしれないけれど。

私とMariの契約は、Mariが死なないと終わることはないのだが。Mariが死ぬってあるのだろうか。だって、私が。この私が守護しているのに。ありえない。そこがいつも悩ましいのだ。


こんなことを考えている私のエネルギーが凝縮し始めている。契約のシステムが発動されて実体化するのだ。実体化が始まると、私は色々と考える。エネルギーの私には思考そのものがないのだから。

革張りのソファがみえる。あのソファにジャンプしよう。






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